快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

またまた犬と猫 『レイン 雨を抱きしめて』(アン・マーティン 西本かおる訳)『キラーキャットのホラーな一週間』(アン・ファイン 灰島かり訳)

夜、寝るときには、レインはわたしの毛布にもぐりこんでくる。夜中に目がさめると、レインがわたしにのしかかっていて、レインの顔がわたしの首の上にある。レインの息はドッグフードみたいなにおいがする。 犬猫シリーズにまた新たな一冊が加わった。 レイ…

純愛ノワールとクリスマス・ストーリーの融合 『その雪と血を』(ジョー・ネスポ著 鈴木恵訳)

問題はおれがすぐに女に惚れてしまい、商売を商売として見られなくなるということだ。 去年の翻訳ミステリー大賞および読者賞を受賞した『その雪と血を』。 その雪と血を (ハヤカワ・ミステリ) 作者: ジョーネスボ 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2016/1…

子どもにとっても、おとなにとっても、”ふつう”じゃないワンダーなブックガイド『外国の本っておもしろい!』

自由にのびのびと文章を書きたい、そう思ったことのある人は多いのではないでしょうか? 思ったことや感じたことを、素直に綴りたい。あるいは、そんな文章を読んで、自分の心にも素直な感動をよみがえらせたい、と。 この『外国の本っておもしろい!』を読…

納豆は日本にしかないって? なわきゃない 『謎のアジア納豆 そして帰ってきた〈日本納豆〉』(高野秀行著)

さて、前回の『旅はワン連れ』では、片野家(高野家)の犬連れタイ旅行が描かれていましたが、”お父さん”である高野秀行さんは、納豆のルーツを探るという取材も兼ねていたようです。 謎のアジア納豆: そして帰ってきた〈日本納豆〉 作者: 高野秀行 出版社/…

旅する犬の物語② ビビリ犬マドのタイ旅行記『旅はワン連れ』(片野ゆか)

さて、前回から気を取り直すために(?)、続けて読んだ犬本は、片野ゆか『旅はワン連れ』。 旅はワン連れ 作者: 片野ゆか 出版社/メーカー: ポプラ社 発売日: 2014/10/20 メディア: 単行本 この商品を含むブログを見る タイトルのとおり、ワンコを連れて旅…

旅する犬の物語① 『ティモレオン センチメンタル・ジャーニー』(ダン・ローズ著 金原瑞人訳)

ティモレオン・ヴィエッタは犬のなかで最高の種、雑種犬だ。 さらに、ティモレオン・ヴィエッタには際立った特徴があった。普通の犬には見られない特徴、たまたま親切な家庭に迷いこんできただけの野良犬とは一線を画する特徴が。ティモレオン・ヴィエッタは…

空飛ぶ少女のゆくえ――『メアリと魔女の花』(メアリ―・スチュアート著 越前敏弥訳)

ナウシカ、ラピュタ、トトロで自分の中のジブリ映画が止まってしまっているし(紅の豚も魔女の宅急便も見たはずだけど、あまり覚えていない)、『君の名は』など最近のアニメも見ていないため、、ジブリやアニメについて語る資格はないのですが、この『メア…

ハードボイルドな金髪の悪魔――『マルタの鷹』(ダシール・ハメット著 小鷹信光訳)

サミュエル・スペードの角張った長い顎の先端は尖ったV字をつくっている。…… 見てくれのいい金髪の悪魔といったところだ。 さて、今更ながらですが、ハードボイルドの金字塔『マルタの鷹』を読んでみました。 マルタの鷹〔改訳決定版〕 (ハヤカワ・ミステリ…

存在するルールは自分がつくるルールだけだ――『アメリカン・ブラッド』(ベン・サンダース著 黒原敏行訳)

マーシャルの件を頼める相手はほかにもいますが、確実にやってもらいたいですから。マーシャルには生きていてもらいたくない。これは大事な問題です。 なんだか前回の続きのようですが、また黒原さんの訳書『アメリカン・ブラッド』を読みました。 アメリカ…

やっぱり新訳! 『BOOKMARK』の最新号(08号) 『すばらしい新世界』『まるで天使のような』など

さて、前回書いたように、今号の『MONKEY』が翻訳特集でしたが、フリーペーパー『BOOKMARK』の最新号も「やっぱり新訳!」と、翻訳のなかでも新訳に絞った特集でした。 「翻訳は新しい方がいい」というのは、すべての新訳に言えるのかどうかはわからないです…

本当の翻訳の話をしよう(村上春樹・柴田元幸)――『MONKEY vol. 12 翻訳は嫌い?』

"You in love with him?""I thought I was in love with you.""It was a cry in the night," I said. 村上訳「彼に恋しているのか?」「私はあなたに恋していたつもりだったんだけど」「そいつは夜の求めの声だったのさ」と私は言った。 柴田訳「あいつに恋…

これが私の生きる道??? 『れんげ荘』(群ようこ)

前回の続きですが、これからの女子が生きるにはどうしたらよいか?? というと、なんだかオーバーですが、多少なりのヒントを求めて、群ようこ『れんげ荘』を読んでみました。 れんげ荘 (ハルキ文庫 む 2-3) 作者: 群ようこ 出版社/メーカー: 角川春樹事務所…

エリート女性を取り囲むグロテスクな状況 『高学歴女子の貧困』~『グロテスク』(桐野夏生)

それにしても、恐ろしいですね、あの豊田議員の怒声。いや、精神衛生に悪そうなんであの怒声は聞いていないのですが、記事を読むだけでめちゃ恐ろしいのはわかる。 それにしても「桜蔭中・桜蔭高、東大法学部を経て、97年、厚生省入省。ハーバード大大学院…

続・最強のブックガイド 「私が」選ぶ岩波文庫の三冊 『対訳 ディキンソン詩集』『マイケル・K』『冥途・旅順入場式』

前回は、岩波書店のPR誌『図書』の臨時増刊「岩波文庫創刊90年記念 私の三冊」で、さまざまな人が選んだ「私の三冊」を紹介しましたが、となると、「『私の』三冊」も選んでみたくなるのが人情。で、私が選んだ三冊はというと―― まず思い浮かんだのが『対訳 …

最強のブックガイド 岩波書店のPR誌『図書』「岩波文庫創刊90年記念 私の三冊」

たまたま書店でもらった、岩波書店のPR誌『図書』の臨時増刊「岩波文庫創刊90年記念 私の三冊」が結構おもしろかった。 タイトル通り、さまざまな人が岩波文庫から三冊取りあげ、その理由や簡単な紹介を書いているだけなのだけど、なんといっても岩波文庫の…

はかない夢、嘘と幻滅、そして友情――『狩りの風よ吹け』(スティーヴ・ハミルトン 越前敏弥)

わたしにとって、春が別の意味を持っている時期があった。マイナー・リーグでキャッチャーをしていた四年間。気が遠くなるほど昔だ。当時のことについては、いまはもう深く考えない。あれから多くのときが流れ、多くの出来事が起こった。デトロイトで警察官…

400年前のキリシタン弾圧と私たちとのつながり 『みんな彗星を見ていた 私的キリシタン探訪記』(星野博美)

ノンフィクションにとくに詳しいわけではないけれど、高野秀行さんと星野博美さんの作品は新作が出るとつい読んでしまう。このふたりの作品に共通していることは、最初はごくごく個人的な興味からはじまり、そしてそれをどこまでも追求し、海外や辺境地まで…

身近な他者が一番恐ろしい――『なんでもない一日』(シャーリー・ジャクスン 市田泉訳)

東京では、先日村上春樹の講演が行われたようですね。 ddnavi.com しかし「龍じゃないほうの村上です」と登場したって、W村上と言われていたのは遠い昔なので、少々古い気も。(龍氏の方にも好きな小説はあるので、最近影が薄くなったように思えるのは残念…

「死ねばいいのに」という思いのはてに――『ずっとお城で暮らしてる』(シャーリー・ジャクスン 市田泉訳)

あたしはメアリ・キャサリン・ブラックウッド。十八歳。姉さんのコンスタンスと暮らしている。運さえよければオオカミ女に生まれていたかもしれないと、何度も考えたことがある。なぜってどちらの手を見ても、中指と薬指が同じ長さをしているんだもの。だけ…

中心のない機械になれ 『村に火をつけ、白痴になれ――伊藤野枝伝』栗原康

まわりから、女はこうあるべきだ、おとなしくしろとかいわれていると、ほんとうはちがうとおもっていても、ついついそうふるまってしまう。しかも、それができてほめられると、なんだかうれしくなってやっぱりまたしたがってしまう。 まわりにほめられるよう…

黒人社会の厳しい現実と甘いラブ・ストーリーの融合 映画『ムーンライト』

アカデミー賞で話題になった映画『ムーンライト』を見てきました。 moonlight-movie.jp トランプ政権への映画界からのアンチテーゼとも評されたように、黒人社会の厳しい現実を描いた映画……と思っていたら、それはたしかにそうなんだけど、それ以上に、まぎ…

女が強くなるとき――『ナオミとカナコ』(奥田英朗)

「あなたの親は、とうして離婚しないのですか?」朱美が不思議そうに聞く。「さあ……」直美は首を傾げつつ、「たぶん、母に一人で生きて行く自信がないからだと思います」と答えた。「日本の女の人、みんなやさし過ぎるのことですね。前にも言いましたが、上…

人生も半ばを過ぎて――『いつか春の日のどっかの町へ』(『FOK46』改題)大槻ケンヂ

高野秀行さんがツイッターでオススメしていたので、私もひさびさに大槻ケンヂことオーケンのエッセイを読んでみた。 いつか春の日のどっかの町へ (角川文庫) 作者: 大槻ケンヂ 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店 発売日: 2017/02/25 メディア: Kindle版 …

春の夜はなんだか怖い? BOOKMARK 7号と『真昼なのに昏い部屋』(江國香織)

さて、今回のBOOKMARKは「眠れない夜へ、ようこそ」。ホラー特集。といっても、ホラーというと四谷怪談くらいしか思いつかなかったので、いったいどんな本が取り上げられるのか想像つかなかったが、ホラー仕立てのミステリーなどおもしろそうな作品がいっぱ…

女と女は化かしあい? それとも――『荊の城』(サラ・ウォーターズ 中村有希訳)/ 映画『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)

モードは何よりも華奢だった。母ちゃんとは違う。母ちゃんとは全然違う。子供のようだ。まだ少し震えているモードがまばたきすると、睫毛が羽のようにあたしの咽喉をなでる。しばらくすると、震えは止まり、もう一度、睫毛が咽喉をこすって、静かになった。…

大人になるっていうこと 『ペーパーボーイ』(ヴィンス・ウォーター著 原田勝訳)

そういえば、前回の 『MONKEY』の「あの時はあぶなかったなあ」ですが、砂田麻美さんの飼い犬、柴犬のポン吉の話もおもしろかった。手羽先がそんなに犬にとって危険だったとは、、、しかし、「所詮、犬は畜生やよ」ってなんだか深い。 ところでこの砂田麻美…

「ともだちがいない!」 『MONKEY vol. 11』(柴田元幸ほか)

盛りあがってますね。小沢健二くんの『流動体について』。 流動体について アーティスト: 小沢健二 出版社/メーカー: Universal Music =music= 発売日: 2017/02/22 メディア: CD この商品を含むブログ (2件) を見る 私ももちろんMステ見ました。去年のツア…

ただの「ええ話」ではなかったO・ヘンリー 『最後のひと葉』(小川高義訳)『1ドルの価値/賢者の贈り物』(芹澤恵訳)

さて、先日の『月と六ペンス』に続いて、今度はO・ヘンリーの『最後の一葉(ひと葉)』をまた複数の訳で読んでみた。 最後のひと葉―O・ヘンリー傑作選II―(新潮文庫) 作者: O・ヘンリー 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2016/04/29 メディア: Kindle版 …

神は雑多に宿る――『村上春樹 雑文集』

アマゾンで『騎士団長殺し』を検索したら、いま超話題の『夫の……が入らない』が出てきておどろいた。いや、『騎士団長殺し』を買っている人は、その商品も「ご覧になっている」そうです。 で、ひさしぶりに『雑文集』を読み返してみた。 村上春樹 雑文集 (新…

もうすぐ日本翻訳大賞しめきり 再度『月と六ペンス』を読んでみた

さて、ミュージカル『キャバレー』を見に行ったりしているうちに、日本翻訳大賞の応募締め切りが近づいていました。(ちなみに、『キャバレー』はなんの予備知識もないまま行ったので、こういう話だったのか!とおどろいた。(いまさらかもしれませんが) こ…