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快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

文科系女子のイタさを直視した『映画系女子がゆく!』 真魚八重子

今週のお題「最近おもしろかった本」ということで、

 

映画系女子がゆく!

映画系女子がゆく!

 

 NHK朝ドラの「まれ」で、大泉洋が甲斐性のないダメ父親の役を演じさせられているのを見て、この本の『グッモーエビアン!』という映画についての評を思い出した。

 この映画で(って、私は映画自体を見ていないので、どうこう言う資格はないのですが)麻生久美子演じる母親は、高校時代に娘を出産したシングルマザーで、娘が中卒で働くという選択をしたため、諭しにきた学校の先生相手に「あーあ、高学歴はそんなに偉いんですか!」とまくしたて、そして彼女の家に転がりこんでいる大泉洋も「猛烈に頭が悪」く、働かないかわりにひたすら面白くない冗談を言っている役を演じているらしいが、筆者は

 「この映画を見たとき、本当に日本は終わり始めているなと思った」

 ときっぱりと書き、「日本のイディオクラシー化が期せずして現れている」と続け(最近流行りの言葉で言うと、“反知性主義”でしょうか)、信頼できる書き手だな、と思った。
 この映画にしても、「まれ」にしても、無知だとか怠惰ということを、純粋とか正直とすりかえるような価値観があるんでしょうね。「まれ」は、地方の少女が上京して夢を追って……と、どう見てもあまちゃん路線なのだけど、やはりクドカンは鋭くて賢かったんだな、とあらためて感じてしまう。

 って、いや、「まれ」の話はどうでもよくて、この本なのですが、『ゴースト・ワールド』『ブラック・スワン』『プラダを着た悪魔』『(500日)のサマー』……と、文科系女子を語るうえで欠かせない映画をほぼ網羅し、しかし、雑誌の映画紹介記事のように、「女子にオススメ!」みたいな次元に留まっておらず、女子のイタさから決して目をそらすことなく鋭く指摘して、そのうえでイタい女子たちをあたたかく見守っていて、読んでいてなんだか励まされる。

 とくに、イタい女子の映画の定番中の定番である『ヤング≒アダルト』について、「我が身のことのようにつらく感じ」、「あまりに深い孤独や不安定な精神状態のときに、過去の栄光や過去に愛した人、いま自分に優しくしてくれる異性に、依存しようとしたことのない人だけが、メイビスに石を投げる権利がある」というのは、涙が出るほど深く頷いてしまう人も多いのではないだろうか。

 また、『浮雲』や『隣の女』など、恋愛によって破滅していく女を描いた映画については、「恋愛で傷つく心を知っている女性は美しい。でも、沖に行くほど浜辺に戻るのは難しくなるから、それ以上自分を見失わないために」と声をかけているのも、筆者の優しさが伝わってくる。映画に出てくる女子、そして、そんな映画を見る女子たちに、筆者が本心からよりそって書いているから、読者も素直に共感できて、メッセージを受け取ることができるのだと思う。

 あと、この本に出てくる、見たことのない映画のなかでは、『害虫』がとくに気になった。関わった男を次々不幸にする中学一年生の少女サチ子。
 なんと、このサチ子は宮崎あおいちゃんが演じていて、彼女によって人生を踏み外したと思われる小学校時代の担任を田辺誠一が演じているらしい。キテレツな絵を描いたり、ほのぼのキャラのイメージが強い田辺っちですが、こんな仕事もやっていたのか。
 サチ子と、石川浩司演じるキュウゾウが、ナンバーガールの轟音をバックに火炎瓶を投げるシーンはぜひ見てみたい。やはり、この場面の音楽はたまではないようだ。