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快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

『持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』 pha

ノンフィクション 和書

 

  前回に続いて、What Should I Do with My Life? と考えていたら、ちょうど発売されたばかりのこの本のことを知った。

作者のpha(ファ)さんは、ご存知の方も多いでしょうが、就職していた会社を28歳で辞めていらい、いわゆる“定職”にはつかずに、ギークハウスというシェアハウスの主宰をしたり、『ニートの歩き方』という本を出版している。
 この本では、「なんでこんなにみんなしんどそうなんだろうか?」「今の日本は物質的にも豊かで文化も充実していて治安もいいのに、こんなに生きるのがつらそうな人が多いのはちょっと変ではないだろうか」と問題提起して、そしてphaさんのこれまでの経験に基づいて、こうしたら/こう考えたら、もう少し楽に生きられるよと提案している。

 その提案は、サブタイトル通り、「1:働きたくない」「2:家族を作らない」「3:お金に縛られない」であり、この3つの提案を実行するために必要なのが、「4:居場所の作り方」、つまり仲間とつながることのできる場所を持つことである。
 まず、「2:家族を作らない」のところでは、「理想の家族」や「家族の絆」というような古くさい家族観に疑問を呈し、それが従来の家族観に従って生きる人たちにも、そこから外れて生きる人たち――未婚者やシングルマザー、同性愛の人たち――にとっても、窮屈で抑圧的なものになっていると指摘し、さらに家族という閉じた空間の息苦しさや危険性を指摘している。そのうえで、当然ながらだれでも一人では生きられないので、家族のかわりに、シェアハウスなどの共同生活を営むことを提案している。ちなみに私自身は、このphaさんの考えには全面的に賛成ですが、共同生活はあまり気が進まず、できたら一人暮らしを死守したい方なのですが、でも、家族以外の結びつきの重要性はもっともっと認知されていってほしいと思う。これまでの日本は、家族教と言ってもいいくらい、家族信仰が異様に強かったように感じる。(まあ、日本だけではないかもしれませんが)

  で、仲間とつながるためには、そういう「場」があった方がいいので、「4:居場所の作り方」になり、仲間や居場所さえあれば、もしお金がなくともなんとかなる――という本書の主張なのですが、冷静に考えたらすぐにわかるように、これはこれでかなり難易度の高い生き方だ。Phaさんのようにシェアハウスという場を主催したり、仲間と田舎に安い一軒家を借りて、都会と田舎を往復するプロジェクトを進める……などよりは、とりあえず毎日会社に行く方が楽だ、という人も多いでしょう。正直私もそう思う。でもこの本は、まったく押しつけがましくなく、読者をやたら煽るような「意識高い系」の語り口でもなく、こういう生き方や考え方もあるよ、と新たな選択肢(まさにオルタネイティヴな生き方ですね)をやんわりと提示しているので、すんなりと納得できる。

 こういうライフスタイルを実行することは難しくても、世間体や多数派の価値観――ひとなみの幸せというようなもの――にふりまわされず、自分はどういうものが好きで、何をしていたら楽しいのかということを、常に心にとめておこうとあらためて思いました。