快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

園子温監督の『ラブ&ピース』の試写会に行きました

   試写会に当ったので、園子温監督の『ラブ&ピース』を見に行ってきました。

  

    多くの人と同じく、私も『冷たい熱帯魚』で、はじめて園子温作品を見て衝撃を受け

そこから『恋の罪』『地獄でなぜ悪い』や『紀子の食卓』を見たりしているのですが、

今回の作品は、いままでのどれともぜんぜん違って、あまりに奇想天外で、

見ている間ずっと、なんじゃこの話??と呆然としていたのですが、

ラストでは、自分でも意外なことに感動して涙が出てしまった。

 

   どういう話かというと、

長谷川博己演じる、会社でもバカにされるさえないサラリーマンである良一が

カメを飼いはじめることによって、それまで夢みていたことが次々にかないはじめる……

 

という話なのですが、これまでのディズニー映画や怪獣映画で描かれてきた

ファンタジー要素をめいっぱい過剰なまでにつめこんでいて

いままでの園子温作品でおなじみの、エロ・グロ・血しぶきがまったくなく

だれひとりとして死なないし、長谷川博己とヒロインである麻生久美子

キスもしないし手もつながない(たぶんそうだったと思う)。

   そのかわりに、いきいきと活躍するのは捨てられた動物やぬいぐるみたち。

   そんな話なのに、最後の怒涛の展開でねじふせられるように感動し、

やっぱりこの監督、ただものじゃないなーとつくづく思った。

 

   あと、役者の上手さも印象深かった。

謎の老人を演じる西田敏行は言うまでもないし、

長谷川博己も、最初のイケてない良一がすごくはまっていて、

イケメンからキモメンまで自然に演じられるってすごいなと感じた。

    イケメン俳優でもさえない役を演じることはよくあるけれど

だいたいは“男前がわざとさえなく演じている”のがどうしても見えてしまうが

(妻夫木くんや岡田准一くんですらもそうですね)

この映画では、正真正銘のキモメンに見えるのに感心した。

地獄でなぜ悪い』では、主役でありつつ、狂言回しみたいな役だったけれど

この映画では歯止めなく爆発していますね。

 

    と言いつつ、園子温監督のほかの映画と同様、

万人におすすめできるかというと、破天荒すぎてなんともいえないのですが

いや、破天荒というか、プロット自体は

ファンタジー映画の定型のような気もするのですが

ファンタジーなのに、過剰で俗っぽくてやり過ぎてて、

やはり園子温映画だなーという感想に終わりました。