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快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

愛と笑いの夜でした~松尾スズキ・天久聖一の『不倫探偵』を見ました

 今日はサンケイホールブリーゼで、日本総合悲劇協会による舞台『不倫探偵』を見てきた。日本総合悲劇協会略してニッソーヒとは、大人計画松尾スズキによるユニットであり、今回は松尾さんに加え、天久聖一が作家・演出家として参加している。

 こんなに笑ったの久しぶりだと思った。

 もう少し若い頃は、もうちょっと頻繫に演劇を見に行ったりしていたのだけど、正直なところ、いまいち話にピンとこない(私の理解力の問題かもしれないが)舞台も多く、見ているときはわかっていたつもりでも、終わってしばらくすると、どんな話だっけ??となることも多いので、ここ数年は舞台から足が遠ざかっていたけれど、この春、宮沢りえ蒼井優や、堤真一といた豪華キャストに魅かれて『三人姉妹』を見に行き、そこでこのチケットも売っていたので、そのまま購入してしまったのでした。

 で、さっきも書きましたが、小ネタやギャグがいたるところに仕掛けられており、そして、大ネタのひとつである、某有名歌手の物真似で某有名俳優をテーマにした歌を歌いあげる松尾さんのステージショーのところでは、笑いをこらいきれないってこういうことかと実感しつつ、思わず声を出して笑ってしまった。

 といっても、ギャグばかりではなく、ニッソーヒは名前からもわかるように、ダークなテーマをとりあげ、大人計画よりシリアスな舞台をすることを目的にしているので(たぶん)、今回もハードボイルドの骨太な探偵劇でした。松尾さんが探偵役なのですが、フィリップ・マーロウに見えた。いや、ほんとこないだテレビでやってた浅野忠信よりマーロウだった。(あくまで個人の感想ですが)松尾さん、ヅラもかぶって顔もぬっていたから、若い頃みたいでした。

 ストーリーはというと、松尾さん演じる私立探偵、罪十郎のもとに、平岩紙ちゃん演じる若い人妻が、夫が浮気しているようなので調べてほしいと依頼に来る。「あなたの夫が浮気しています」という怪文書が届き、それに罪十郎の連絡先が明記されていたとのこと。魅力的な人妻の依頼者とすぐにいい雰囲気になった罪十郎だったが、隣の部屋から死体が発見される。その死体はなんとその人妻の夫であった……

 と、はじまり、罪十郎は昔なじみの刑事レッドと協力して調査にのりだすのですが、そのレッドが片桐はいりで、やはり存在感が半端なかった。昔、やはりニッソーヒの『ドライブインカリフォルニア』を見たときも思ったけど、立っているだけでもじゅうぶんインパクトがあるのに、動きのキレもすごい。

 大人計画メンバーはもちろん安定のうまさで(しかしその中でもやはり、伊勢志摩さんは、はいりさんに匹敵する存在感だった。前に書いた映画『紙の月』でもチョイ役なのですが印象に残った)、二階堂ふみちゃんが謎のホテトル嬢役なのですが、映画ではめちゃくちゃ可愛いけど、舞台でこのメンバーに囲まれると、正直見劣りするのではなかろうか……と最初は危惧したけれど、かつてのブリジッド・バルドーのようなのびやかな肉体美を武器に、すっかり観客を魅了していました。

 単なる行きずりの殺人かと思われた事件は、それぞれの登場人物の暗い過去と密接に結びつき……という、まさにいま流行りのイヤミス的展開になるのですが、考えたら、ニッソーヒや大人計画はもともと、レイプや近親相姦などといったイヤミス的なテーマを多く題材にしていましたね。
 でも後味の悪い終わり方ではなく、さわやかな(大人計画の舞台にあまり似合わない言葉ですが)エンディングだったので、観客みんな、笑いとあいまったカタルシスを得られたのではないでしょうか。

 だからか、三回もカーテンコールがあり、三回目には多くの観客がスタンディングオベーションをしていました。
 愛と笑いの夜、ってこういうことかなと帰り道にふと思った。こんな夜が何回も続いたらいいのに。