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快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

女子パワーみなぎるぶっ飛んだブックガイド 『読み出したら止まらない! 女子ミステリー マストリード100』 大矢 博子

 

  少し前に出た、杉江松恋さんによる『読み出したら止まらない! 海外ミステリーマストリード100』の続編のような体裁のこの本。

 

  しかし、杉江さんの本は、私のようなミステリー初心者向けに、エラリイ・クイーンにアガサ・クリスティー、そしてダシール・ハメットにチャンドラーと、ごく基本的な翻訳ミステリーの必読書を教える正統派のブックガイドでしたが、
こちらの本は、「本ガイドの目的は『越境』にあります」と前書きで宣言しているとおり、日本も海外もごちゃ混ぜで、どう考えてもミステリー作家ではない作家による作品も多く紹介されており、かなりぶっ飛んだブックガイドになっています。


 なんといっても、最初がジェイン・オースティンの『ノーサンガー・アビー』で、そこから『あしながおじさん』も加わり(たしかに、言われてみれば「あしながおじさんとは誰か?」というのはミステリーかもしれない)、クリスチアナ・ブランドやアガサ・クリスティーといった、まぎれもないミステリー作家が入っているかと思いきや、橋本治の『桃尻娘』が取り上げられ(いったいどこがミステリーかという点については、苦しいものを感じたが)、
そしてなんと、コバルト文庫を愛読していた私世代の女子なら、懐かしさで感涙する氷室冴子『シンデレラ迷宮』が紹介され、はては姫野カオルコの『終業式』にまで至っている。

 氷室冴子といえば、一般的には『なんて素敵にジャパネスク』の印象が強いだろうけど、『クララ白書』『アグネス白書』から他の少女小説とは一線を画していたし、『恋する女たち』は話のおもしろさに加えて、当時めちゃくちゃかわいかった斉藤由貴の表紙も印象的で、そうそう、『なぎさボーイ』『多恵子ガール』も超名作だった……と思い出が怒涛のようによみがえってきた。

 また、ここでもよく取りあげているミネット・ウォルターズでは『女彫刻家』が選ばれていて、たしかに、私もウォルターズ作品に順位をつけるとしたら、この作品を1位か2位にすると思う。日本のウォルターズと言ってもいい、桐野夏生作品では、案の定『グロテスク』が選ばれている。嫌な女子ミスとしては王道の選択でしょう。

 また、カズオ・イシグロの『日の名残り』も取りあげられていて、私もすごく好きな作品なので納得した。一般的に“ミステリー”と言えるのかどうかはわからないけど、“信頼できない語り手”によって語られる内容の奥にある、語られていない事柄を感知しながら読む作品なので、ある意味謎解き小説と言っていいのだと思う。

 で、こういうブックガイドを読む一番の楽しみは、まだ読んでいない作品やよく知らない作家について教えてもらうことですが、まずはメアリ・エリザベス・ブラッドンによる『レイディ・オードリーの秘密』が気になった。
 この小説は「十九世紀ヴィクトリア朝期に流行したセンセーション小説の代表格」であり、「センセーション小説とは扇情的な犯罪やショッキングな秘密の暴露を扱った小説のこと」であり、ヒロインの造詣が「あらまほしき女性像から離れた反社会的なもの」であったことから、出版当時少なくない批判をうけた……とのことで、この紹介文だけでも、気になる要素がめいっぱいつまっている。

 あとはまだ読んでいなくても、前から読まないとと思っている本が多く、よく知らない作家・作品はあまりなかったけれど、『スパイラル・エイジ』が取りあげられていた新津きよみは、どういう本を書いているのかまったく知らなかった。
 「ドロドロしたサイコサスペンスの印象が強いかもしれないが」「前向きな、中年女性を応援するような物語を書かせても驚くほど上手い」とのことで、どちらもぜひ読んでみたい。『和菓子のアン』が紹介されている坂木司も読んでみたいと前から思っているけど、いまだに読めていない……
 と考えだすと、ほんと会社に行って仕事してるヒマなんてないって思ってしまいますが、まあ仕事しないと本を買うこともままならなくなるので、働きます。。。