読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

成長するってことーー 『結婚失格』(枡野浩一) そしてサニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』

 私もすこしは大人になったのかなと、あらためて『結婚失格』を読んで感じた。 

結婚失格 (講談社文庫)

結婚失格 (講談社文庫)

 

  というのも、この本は、速水という男を主人公とした小説の形をとっているものの、作者自身の離婚が赤裸々に描かれており、当時元奥さんのマンガをよく読んでいた私は、正直なところ、ほんとしつこくて気持ち悪い男やな……という感想しか抱けなかった。そして文庫化され、そんな読者の気持ちを代弁するかのように、町山智浩さんがあとがきですぱっと作者を断罪して喝采をあびた。

『結婚失格』の速水も、自分を結婚失格だとは思っていない。それどころか自分は「落ち度のない」人間で、なぜ突然離婚されたのかまるで理解できないと言う。
だが、読者には理解できる。
速水が自分の正しさを強く主張すればするほど、妻がなぜ彼から逃げ、話し合いすら拒絶したのかが、よく理解できてしまう。だから速水の言動に失笑してしまう。

なにしろ速水は妻に「愛していた人を嫌いになることの理不尽さ」を作品に描けと言うのだ。つまり自分を捨てた理由をちゃんと説明しろと。自分が愛されなくなった原因を考えるべきは速水自身なのに。 

  ほんとまさにその通りだといまも思う。でも、当時はただただ気持ち悪くてたまらなかったけれど(スミマセン)、自分が納得できるまで説明を求めてしまう気持ちも理解できるようになった。それほど執着したくなってしまうときもあるかもしれない、と思えるようになった。たぶん、誰にだってこんな気持ちになってしまうときはあるんじゃないだろうか。

 けど、私も含めて多くの人は、プライドや体裁にこだわり、そういったみっともない感情を押し殺し、なんでもないような顔をして生きている。この文庫に「特別寄稿」した穂村弘は、まさに

僕が君ならそんなことはしない。

と書いており、これもいま読むと、作者の行為に対する単なる否定ではなく、こういったことすべて含んだ一文だったのだとわかる。

 町山さんの解説も、作者を非難してるわけではなく、愛のある言葉だなとつくづく感じる。

速水には妻の声なき声がとうとう聞こえなかった。彼はせっかくのチャンスを逃した。
何のチャンス? 元妻を理解するチャンスを。自分を変えるチャンスを。成長するチャンスを。  

彼は自分を捨てなければ、妻を理解できない。人間がわからない。自分で自分を捨てられないなら、自分の居場所を捨て、自己を否定される旅に出るのはどうだろう。 

すぐに家出したまえ。
自分が正しいと思ううちは戻ってきてはいけない。 

  こうやって考えると、歳をとるのも興味深い経験だなとほんと思う。

  そしていま、昔好きだったサニーデイ・サービスの新譜『DANCE TO YOU』が好きでよく聞いているのだけど、2000年にいったん解散してそこから16年たって、また素敵なアルバムを届けてくれるなんて、まるで予想してなかった贈り物みたいだ。 

DANCE TO YOU

DANCE TO YOU

 

   少し前までは、えんえんと同じアーティストを聞き続けるのって、映画『ヤング≒アダルト』で象徴されていたとおり、成長のない証のようで、なんだか後ろめたい気すらしていたのだけど、いまは自信をもって、好きなアーティストも、そして自分も、進化し続けているのだと感じる。(が、いま結局、晴茂くんはどうなっているのでしょうか? 体調不良でお休みなの?)