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快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

あたらしい年に向けて、あたらしい働きかた――『わたしらしく働く!』 (服部みれい)

 さて、なんだかんだしているうちに、すっかり年末。『シン・ゴジラ』も『君の名は。』も『この世界の片隅に』も、そして、”逃げ恥”の最終回も録画しているものの、まだ見ておらず、2016年の人気作にまったくついていけませんが、とりあえず今年印象に残った本を紹介していきたいと思います。
 
 といっても、おもしろかった本はだいたいこちらに書いているのですが、どう紹介していいかわからず、のばしのばしになっていたのが、この『わたしらしく働く!』。 

わたしらしく働く!

わたしらしく働く!

 

  なぜどう紹介していいかわからなかったかのかというと、小説なら、あらすじや心に残った点をまとめて伝えたらいいけれど、これは「働く」ことをテーマにした本なので、働くということをなかなかうまく整理できず、どう書いたらいいのかもわからなかった。


 この作者の服部みれいさんは、もしかしたら知らない人もいるかもしれないけれど、一部(といっても、そんなに狭い一部ではない)では、カリスマ的な人気を誇るライター&エディターであり、雑誌『マーマーマガジン』(現在は『まぁまぁマガジン』)の発行人である。彼女の文章のみならず、「冷え取り」や「ホ・オポノポノ」などを取り入れたライフスタイルも、強い影響力を持っている。

 ……と書くと、スピリチュアル系??そんなエセ科学ダメ、ゼッタイ、という人も少なくないと思うが、私もスピ系をそんなに信用できないタイプの人間だけど、彼女の書き方は、原理主義的な押しつけがましさもなく、生真面目過ぎでもなく、要はなんか「コワイ感じ」がないので、そんなに抵抗なく読める。しかも、この『わたしらしく働く!』は、スピ系はほとんど顔を出さないので、そういうのに拒否反応がある人でも問題ないと思う。
 
 この本は、自己啓発本のように、ああしろこうしろ(前向きになれ、とか)とつらつら書かれているわけではなく、作者の仕事ヒストリーがメインとなっている。はじめて就職した編集部での過酷な日々、心身ともに限界を感じて退職し、フリーになって再出発して、ライターとしての地位を確立する。そしてそこから雑誌作りを手掛けるようになり……といった具合なのだけど、ほんとうに地道に、一歩一歩進んでいるさまを包み隠さず書いているのにすごく共感した。
 
 いや、90年代の渋谷系の時代のイメージのせいか、人気雑誌の編集部に出入りしていた、ついこないだまで一読者だったみたいな人が、気がついたら人気ライターを名乗ったりするような業界かと思っていたので(いや、完全に私の偏見というか、妄想ですが)。フリーになったばかりのときは、K塾のチューターとのかけもちをしていたというのも印象深かった。実は私も高校のとき、K塾に通っていたが、このチューターってなに?って思っていたので。(けど、大学院生ばっかだったような印象があるが、社会人の人もいたんですね)

 あと、お金のこともはっきりと書いているのも信用できる。フリーライターとしての月収の目標は、月100万だったとか。たしかに、月100万って多いように思えるが、でも、東京で、ボーナスもなく社会保険や経費も自分持ちのフリーで働くならば、目標額としては妥当なところなのかもしれない。
 
 はじめて創刊に参加した雑誌への情熱、そして失敗の顛末も、生々しいくらいにはっきりと綴っていて、痛々しい思いが強く伝わる一方、逆にはげまされる気になる。そのあとの『マーマーマガジン』創刊のいきさつも、自分で企画書を書いて、アパレルメーカーにプレゼンして……というのも、考えたら当然なのだけど、おどろいてしまった。というのは、アパレルメーカーが宣伝の一環として冊子を作ろうとして、売れっ子ライターの作者に編集をお願いした……というようなストーリーを漠然と想像していたからだ。
 そう、そんな都合のいい話があるわけない。自分から動かないとはじまらないのだ。

 また、どうして出版社でなく、アパレルメーカーにプレゼンしたのかというと、「とにかく自信がなかった」から、というのにもまたおどろいた。いくら自信がなくても、やりたいことが明確にあれば行動をおこすことができるし、成功につながるのだとつくづく感じた。あ、『マーマーマガジン』の「マーマー」がREMの曲からとったというのも、そうか!と思った。意外ではなく、そうだよな、って感じで。
 
 ちなみに、その後の『マーマーマガジン』は、この本にも書かれているが、編集部が岐阜に移り、いったん休刊して『まぁまぁマガジン』と様変わりした。これまで「冷え取り」とかオーガニックなコンテンツがメインだったが、なんと「詩」が中心となり、これまでは「薄くて読み切れる」ものだったのが、かなりぶ厚くなった。

 前回このブログで取りあげた、エミリー・ディキンソンや谷川俊太郎から、前野健太ガケ書房の人(詩人でもあったとは知らなかった)、そしてみれいさん……詩はどれもおもしろかった。とくに、ルーシー・タパホンソの詩にひかれ、だれかと思って調べると、ネイティヴ・アメリカン詩人だった。やなせたかしの『詩とメルヘン』のように素敵な雑誌。 

ネイティヴ・アメリカン詩集 (新・世界現代詩文庫)

ネイティヴ・アメリカン詩集 (新・世界現代詩文庫)

 

  『わたしらしく働く!』に戻ると、最後に「実践編」として、仕事に対しての具体的な心構えが書かれていて、そこは一見自己啓発本のようだけど、内容はこれまで作者が伝えてきたメッセージが凝縮されている。 

わたしたちは「できるか/できないか」ではなく、「やるか/やらないか」の世界に住んでいるみたい。  

でもネ、なんだかんだいって、本当に大切なのはストレートに「やさしい気持ち」。誰かを喜ばせたい、たのしませたいという。やさしさや思いやりが、真のオリジナルを生むと思っています。

どちらを選択したらいいか迷った場合、「自然かどうか」と質問してみてください。結局不自然なことって続きません。 

大切なのは、まず、自分が幸福になることを自分が許可すること。

  ほんとうにそうだと心から思う。2017年は「自然に」生きて、自分が幸福になることを許可して、自分らしく幸せになります。