快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

音楽が聞こえる本ブックガイド BOOKMARK11号 村上春樹による『バット・ビューティフル』紹介文もあり

 前回、次は山本文緒の『なぎさ』の感想を書くといいましたが、BOOKMARK 11号 "Listen to Books" を読んだところ、勝手に便乗して、音楽が聞こえる本を選びたくなりました。 
 
 そう、なんといっても村上春樹が巻頭エッセイを書いていることが話題になっている、今回のBOOKMARKですが、村上春樹が訳したジェフ・ダイヤーの『バット・ビューティフル』は、BOOKMARKを編集している金原さんも『サリンジャーに、マティーニを教わった』のなかで紹介しています。 

バット・ビューティフル

バット・ビューティフル

 

 

サリンジャーに、マティーニを教わった

サリンジャーに、マティーニを教わった

 

 デューク・エリントンセロニアス・モンクといった、伝説的なジャズ・ミュージシャンについて、「客観的(歴史的)事実から、自分の想像をまじえた『物語』」を紡いだ、「ドキュメンタリーでもない、かといって純粋な小説でもない」本(by 村上春樹)とのことで、正直、ジャズはほとんど聞いたことのない私も読んでみたくなった。おふたりがこれだけオススメしているのだから、まちがいなくおもしろいのでしょう。
 
 で、音楽が聞こえる本として、私が思いついたのは、ニック・ホーンビィの『アバウト・ア・ボーイ』。 

アバウト・ア・ボーイ (新潮文庫)

アバウト・ア・ボーイ (新潮文庫)

 

  映画もヒットしたので、あらすじをご存じの方も多いでしょうが、父の印税でお気楽に暮らす男が、シングル・マザーをひっかけようと下心を抱いたことがきっかけで、12歳の男の子と出会う物語。
 
 なのですが、小説の後半部分では、ニルヴァーナカート・コバーンが重要な存在となっている。映画ではこのくだりはなかったような記憶があるけれど、そのかわり、ヒュー・グラントが例のごとく無責任男にめちゃくちゃはまっていて、映画は映画でよかった。
 ニック・ホーンビィといえば、レコード屋で働くさえない男を主人公にした『ハイ・フィディリティ』も、小説と映画のどちらもおもしろかった。最近の作品も読んでみようかな。
 
 ボストン・テランの『その犬の歩むところ』にも音楽が印象的なシーンがあるのですが、それについてはこないだ書いたので省略。
 あと、同じく少し前に紹介した、ミック・ヘロンの『放たれた虎』では、シャーリーがマーカスの車のなかで、アーケイド・ファイア海賊版のCDを発見し、マーカスにしては気のきいたCDを持ってるじゃないか、どうせ子どものものだろうと、さくっとパクるが、そのCDがあとで意外にも役にたったりする。いや、CD盤としてであり、「音楽を聞く」わけではないですが。
 
 あと、少し前に洋書で読んだ、Eve Chaseの『The Wildling Sisters』は、ケイト・モートンの推薦文や、『レベッカ』を想起させるなどの評からうかがえるように、イギリスの田舎のお屋敷に住む妻を主人公とし、過去と現在の語りが交錯するミステリーだった。 

The Wildling Sisters

The Wildling Sisters

 

  で、その妻が、亡くなった前妻の思い出から逃れるため(このあたりが『レベッカ』要素)、ロンドンから田舎に移住することを提案するのだが、引っ越しのときに、夫がブラーの「Country Life」を聞いて、前妻との思い出にひたっているのを見てショックを受けるというシーンがあるのだが、ブラーもすっかり懐メロ扱いか……と、こちらもしみじみしてしまった。
 
 いや、私が学生時代に流行っていたので、当然懐メロなのですが。ブラーのライブは見たことないけど、オアシスは大阪城ホールに見に行ったな、、、リアムが途中で帰らないか心配だった。(と、懐メロにひたる)あ、上記の春樹氏は、ブラーのデーモンがやっているゴリラズが好きだと、以前エッセイで書かれてましたね。

 というか、春樹氏は、世界中がご存じのとおり、翻訳書やエッセイだけでなく、小説にもいっぱい音楽が出てくる。『ノルウェイの森』や多崎つくるなどもありますが、やはり印象深いのは、『海辺のカフカ』でしょうか。プリンスとレイディオヘッドを愛する少年。 

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

海辺のカフカ (上) (新潮文庫)

 

  カフカくん同様、私も当時レディオヘッド(どうしてもこう書いてしまう)が大好きで、大阪市立中央体育館に来たときは二日間とも見に行ったりしたので感慨深い。
 しかし、いまちらっと読み直すと、レイディオヘッドという表記より、それを聞くのがMDウォークマンというところに、懐かしさを感じる。カセットは意外にまだ生き残っているけれど、MDは絶滅したな……(でもまだMDコンポ持ってるけど)
 
 あと、音楽が聞こえる本で外せないのは、松浦理英子の『ナチュラル・ウーマン』。 

ナチュラル・ウーマン (河出文庫)

ナチュラル・ウーマン (河出文庫)

 

  もちろんタイトルどおりの曲ですが、この本ではアレサ・フランクリンが歌っているけれど、私の頭のなかでは、キャロル・キングの歌になってしまう。
 ほかにも、松浦理英子の小説ではブラック・ミュージックが頻繁に使われており、『裏ヴァージョン』では、かつての同級生が集まってカラオケに行き、Shirellsの「Will You Love Me Tomorrow」を歌いあげるシーンも印象的だった。

 また、最新作の『最愛の子ども』では、高校生が文化祭でキーシャ・コールとパフ・ディディの「ラストナイト」を歌ったり、女性ロックバンドのランナウェイズによってある事実があかされたりする。
 

 
 日本の作家というと、こないだ夏フェス情報を見ていたら、福島のオハラ☆ブレイクというフェスに伊坂幸太郎が出演するとなっていた。

oharabreak.com

 いったいなにをするのだろう? たしか、伊坂幸太郎は以前にも斉藤和義とコラボレーションしていたので、せっちゃんも出演するのかな。ミュージシャンもめちゃ豪華なので(私の好みから)、関西ならぜひ行きたかった。
 そういえば、今年のフジロックは、ノーベル文学賞ボブ・ディランが来るらしい。人生で一度は行きたいフジロック(←川柳風)ですが、やはり関西から遠い……
 
 読書もいいけど、音楽もいい、なので、それが融合されたら(だいたいの場合)もっといい、って当たり前過ぎる結論が導かれつつありますが、BOOKMARK11号のエッセイで、金原さんがカート・ヴォネガット『国のない男』から引用している言葉が、すべてをあらわしていると思います。 

彼にとって、神が存在することの証明は音楽ひとつで十分であった。