快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

2015-01-01から1年間の記事一覧

鴨居玲展「踊り候え」、そして鴨居羊子『女は下着でつくられる』

さて、23日は↓で書いた「恋人たち」を見たあと、梅田から伊丹市立美術館に行き、鴨居玲展「踊り候え」を見てきました。 もともとは、下着デザイナーとしてチュニックを創業した鴨居羊子の『女は下着でつくられる』 女は下着でつくられる (鴨居羊子コレクショ…

どうしようもない日常を生きるには 映画「恋人たち」

祝日の23日は水曜だったので、映画「恋人たち」を見てきました。 橋口亮輔監督の作品は、「ぐるりのこと」も気になりつつまだ見ていないので、今回がはじめてです。 ストーリーは、妻を通り魔に殺された男、雅子さまファンで、夫と姑と共に郊外で暮らす主婦…

『星の王子さま』(『ちいさな王子』)の故郷から、「世界は愛を求めてる」まで

テレビの話が続きますが、土曜日にNHKの「SONGS」で、ユーミンがサン=テグジュペリの故郷であるリヨンを訪れるというのをやっていて、ちょうど『星の王子さま』をあらためて読んでいたので見てみました。 ところで、『星の王子さま』については、長年にわた…

Tomorrow is another day ーー 「あさが来た」と『風と共に去りぬ』の共通点

先日、ウーマンリブ(舞台)のところでも書いたけれど、最近は朝7時45分からBSで「こころ旅」を見て(2015年秋の旅は終わりましたが)、そのあと8時から「あさが来た」を見て、そして「あさイチ」で有働さんとイノッチのウケをチェックして、会社に向かう毎…

フィッツジェラルドの『グレート・ギャツビー』(『グレート・ギャッツビー』)を読みくらべてみた

先日、カフカの『変身』が、訳によってがらりと雰囲気が変わると書いたけれど、村上春樹訳で読んだ『グレート・ギャツビー』を小川高義訳で読んでみたら、また印象が変わっておどろいた。(ちなみに小川高義訳の光文社古典新訳の方は『グレート・ギャッツビ…

笑いに定年はあるのか? ウーマンリブ 「七年ぶりの恋人」

クドカン率いるウーマンリブの「七人シリーズ」(というのか知らんけど)の最新作、「七年ぶりの恋人」を見てきました。 って、こう書くと、知らない人にとっては、なにがなんやらっていう、暗号のような文章だと思いますが。ウーマンリブといっても、フェミ…

「修正」は可能なのか? 『コレクションズ』 ジョナサン・フランゼン 

老化とパーキンソン病で身体が不自由になりつつある夫、アルフレッドと二人で暮らすイーニッドの一番の楽しみは、巣立っていった三人の子供と孫たちでクリスマスを過ごすことだった…… コレクションズ (上) (ハヤカワepi文庫) 作者: ジョナサンフランゼン,J…

馬糞虫? ウンチ虫? フンコロガシ? カフカを読んでみた② 『変身』 池内紀訳

前回、「女の屁をテーマにしたzine『PU』」ってなに?と書きましたが、こないだツイッターを見ていたら、天久聖一が「来年ブレイクしそうなもの。ポメラニアンと女性の屁」と書いていて、知らん間に世間ではすでにブームになっていたの??とおどろいた。来…

地図をやぶって歩き続けろーー女性がはたらいて生きるということ 『仕事文脈』  

ときどき手にとってしまう雑誌、「仕事文脈」の最新号の特集が「家と仕事」で、なかなかおもしろそうだったので購入しました。 仕事文脈 vol.7 作者: 仕事文脈編集部,makomo 出版社/メーカー: タバブックス 発売日: 2015/11/25 メディア: 単行本(ソフトカバ…

海外文学で世界一周できるかな? 『SPUR』 2016年1月号

今月号のSPUR買いました。UAとムラジュンの子供、村上虹郎くん、もう18歳か……って、いや、ぱっと開いて目についたのはそれですが、もちろん「海外文学で、世界一周」の企画を読みたくて買いました。 コンパクト版SPUR2016年1月号 (SPUR増刊) 出版社/メーカー…

世界文学とはなにか? 『やっぱり世界は文学でできている』 沼野充義編著

前回、カフカの『変身』について、『世界は文学でできている』を引用しましたが、続編にあたる『やっぱり世界は文学でできている』もあわせて読んでいます。 やっぱり世界は文学でできている: 対話で学ぶ〈世界文学〉連続講義2 作者: 沼野充義 出版社/メーカ…

ウンゲツィーファーって? カフカを読んでみた① 『変身(かわりみ)』 多和田葉子訳

先日刊行された、集英社のポケットマスターピースから、多和田葉子訳による、カフカ『変身(かわりみ)』を読んでみた。 カフカ ポケットマスターピース 01 (集英社文庫ヘリテージシリーズ) 作者: フランツカフカ,多和田葉子,Franz Kafka 出版社/メーカー: …

ニキ・ド・サンファル展とオノ・ヨーコ展 (そしてハリー・マシューズの『シガレット』)

週末、東京に遊びに行ったので、国立新美術館と東京都現代美術館をまわってきました。 まずは、国立新美術館の「ニキ・ド・サンファル」展から。 フランスで生まれ、そしてアメリカで裕福な少女時代を過ごし、19歳の若さで結婚したニキ。二人の子供にも恵ま…

ほんとうに冷笑されるべきはだれか? 『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』 渋谷直角

先日紹介した『奥田民生になりたいボーイ 出会う男すべて狂わせるガール』がおもしろかったので、ちらっと立ち読みしていた『カフェでよくかかっているJ-POPのボサノヴァカバーを歌う女の一生』を、ちゃんと買って読みました。 カフェでよくかかっているJ-PO…

奇面組のような変人揃いのクラブを舞台にした悲喜劇 『ミランダ殺し』 マーガレット・ミラー

それにしても、こんな奇妙キテレツな有閑倶楽部があったもんだと、このマーガレット・ミラーの『ミランダ殺し』を読んで思った。 ミランダ殺し (創元推理文庫) 作者: マーガレットミラー,Margaret Millar,柿沼瑛子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 1992…

ほんとうの「悪」とは、「罪」とは何なのか 『深い疵』 ネレ・ノイハウス

先日の『ゲルマニア』でも書きましたが、ドイツミステリの世界に耽溺すべく、前から話題になっていた、ノイハウスの『深い疵』も読みました。 深い疵 (創元推理文庫) 作者: ネレ・ノイハウス,酒寄進一 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2012/06/21 メデ…

なぜか女子大生とコラボレートしている 『ケチャップ・シンドローム』 アナベル・ピッチャー

前々回紹介した、BOOKMARK、第二号の本と映画特集(映画化された本)のラインナップを見ると、『ぼくと1ルピーの神様』(『スラムドッグ・ミリオネア』)や、『トレインスポッティング』『悪童日記』『ザ・ロード』など、めちゃめちゃ豪華な作品が特集され…

ナチスドイツ下の社会を克明に描いたミステリー 『ゲルマニア』 ハラルト・ギルバース

この『ゲルマニア』は、1944年のドイツを舞台にしており――そう、戦争末期のナチスドイツ時代を描いている。 ゲルマニア (集英社文庫) 作者: ハラルトギルバース,Harald Gilbers,酒寄進一 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2015/06/25 メディア: 文庫 この商…

ハズレなしの「いま最強の」翻訳本が紹介されています BOOKMARK

先日ようやく、BOOKMARKを手に入れることができました。 BOOKMARKとは、ヤングアダルトの翻訳の第一人者である金原瑞人さんが、翻訳・書評家である三辺律子さんとともに個人で創刊した、ぜひ読んでもらいたい翻訳本を紹介している小冊子です。 こちらが公式…

ストレートに “友情・努力・勝利” を描いた映画 大根仁監督『バクマン。』

さて、話題の『バクマン。』を見てきました。 ご存知の方も多いでしょうが、佐藤健と神木隆之介演じる高校生二人が、プロの漫画家となって、あの「少年ジャンプ」で連載を持ち(ちなみに、この二人はどちらも絵を描く藤子不二雄スタイルではなく、原作と作画…

『ゴーン・ガール』の裏(表?)バージョンか 『サンドリーヌ裁判』 トマス・H・クック

トマス・H・クックの本は、『緋色の記憶』などを数点読んだだけで、とくに詳しいわけではないけれど、どの本も読者を最後まであきさせず手堅く読ませる印象が強い。 だいたいどれも、現在の話と過去の回想が交互に語られ、過去に起こった事件の真相があきら…

辺境とはなにも世界の僻地にかぎらない 『腰痛探検家』など 高野秀行

前回、『恋するソマリア』について書いたけれど、高野さんの本の魅力をまだ伝えきれていないような気がする。 いや、『恋するソマリア』の概要は紹介したつもりだが、高野さんのモットーである、「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを…

せつない片思いのゆくえ 『恋するソマリア』 高野秀行

ソマリアって、みなさん、どんなイメージを持っているでしょうか? 内戦が絶えない国? 海賊がうようよしている国? というか、そもそもどこにあるのかわからない? たしかに、私もアフリカの国だとは知っていても、正確な位置については、エジプトと南アフ…

わたしは幸せなフェミニスト 『We should All Be Feminists 』 Chimamanda Ngozi Adichie (チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ)

「まれ」は、最初の数回でちゃんと見る気を失ってしまったのですが、「あさが来た」は、今のところおもしろく見ています。 なんといっても、柄本佑演じるヘビ男の曲者感が気になる。キツいおかあちゃんの尻にしかれた、ただのネクラ(死語ですが)なボンボン…

アフリカ人自らが描く現代のアフリカ 『明日は遠すぎて』 チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ

チママンダ・ンゴズィ・アディーチェは、ナイジェリア生まれのアフリカの女性作家で(ユッスー・ンドゥールとか、“ン”からはじまる名前って、アフリカ感強いですね)、この短編集におさめられた作品はどれも、日本での最初の短編集『アメリカにいる、きみ』…

スペンサーは自立したタフな男でした 『初秋』 ロバート・B・パーカー

読書会の課題本だったので、ロバート・B・パーカーの『初秋』を読みました。 初秋 (ハヤカワ・ミステリ文庫―スペンサー・シリーズ) 作者: ロバート・B.パーカー,菊池光 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 1988/04 メディア: 文庫 購入: 8人 クリック: 200回…

イノセンスの行く末 『ブライヅヘッドふたたび』 イーヴリン・ウォー

前に書いた『街角の書店』に続いて、イーヴリン・ウォーを読もうと思い、ついに代表作『ブライヅヘッドふたたび』を読みました。 想像していたよりすごく読みやすい話でさくさく進み、読了後、まずはざっくりと下記のような感想を抱きました。(物語の結末ま…

雷の音に耳をすまして 『赤い山から銀貨が出てくる』 小沢健二 (『MONKEY vol.6』より)

前回書いたあと、たまたまテレビをつけたら、松尾スズキと田口トモロヲが対談していた。 松尾さんも、カート・ヴォネガットから大きな影響を受けたと常々語っている。ペンネームを魚の名前にしたところも、キルゴア・トラウトからきているのかもしれない。 …

人生に影響を与えた一冊 『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』 カート・ヴォネガット・ジュニア

「ぼくは、この見捨てられたアメリカ人たちを愛していきたい――たとえ彼らが、役立たずで、なんの魅力もなくてもね、それがぼくの芸術ってわけさ」“I’m going to love these discarded Americans, even though they’re useless and unattractive. That is goi…

完璧に清潔で安全で心優しきセカイへの戦い 『ハーモニー』 伊藤 計劃

そう、ミアハの言うとおりだ。だからこそ、わたしたちは死ななければならない、と感じていた。命が大事にされすぎているから。互いに互いを思いやりすぎているから。 ハーモニー (ハヤカワ文庫JA) 作者: 伊藤計劃 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2010/12…