翻訳本
It wasn’t any of my business. So I pushed them open and looked in. 私には何の関わり合いもないことだ。なのに私はその扉を押し開け、中をのぞき込んだ。そういう性分なのだ。 レイモンド・チャンドラーによるフィリップ・マーロウシリーズの二作目、『…
さて、1月26日に梅田蔦屋書店で行われた「はじめての海外文学」に参加しました。 翻訳者の方たちが全力でオススメの海外文学を紹介する、この「はじめての海外文学」。東京では去年の10月に開催される予定でしたが、大型台風の襲来によって中止となり、今回…
「私たちが生きるこの時代において、画家の大いなるキャンヴァスとはなんでしょう? そう、それはアメリカそのものです。私たちがともに描き出そうとしているこの国の絵。それこそ大いなるこの国家の将来を決定するものです」 この『ひとり旅立つ少年よ』は…
If you really want to hear about it, the first thing you’ll probably want to know is where I was born, and what my lousy childhood was like, and how my parents were occupied and all before they had me, and all that David Copperfield kind o…
アンソロジーって何だろう? 一般的には、さまざまな物語(おもに短編)を集めて一冊にしたものという印象だろうか。スーパー大辞林では、「一定の主題・形式などによる、作品の選集。また、抜粋集。佳句集。詞華集。」と定義されている。goo辞書では「いろ…
文体については、あくまでも単純に、率直に、そして、しゃちこ張らせぬようなるべく砕いて欲しい。ある特殊な場合を除く外は、余り美しい詩的な文句を用いたり、あくどい技巧を弄したり廻り遠い形容詞を冠せたりすることを、出来るだけ避けて欲しい。 前回の…
すべての問いはわたし自身の問いであり、わたしの問いはあなたの問いではないからです。そして人間には、他人の問いを解くことはついにはできないからです。 なんとなく上野千鶴子の『情報生産者になる』を手に取り――なんとなく、というのは、私は研究者でも…
ブルンヒルデ・ポムゼルは政治に興味はなかった。彼女にとって重要なのは仕事であり、物質的な安定であり、上司への義務を果たすことであり、何かに所属することだった。彼女は自身のキャリアの変遷について非常に鮮明に、詳細に語った。だが、ナチ体制の犯…
花の咲きほこる庭や銘板のついたベンチから五、六メートルほど先で、すべてががらりと変わってしまう。そこには巨大な金網のフェンスがあった。家と平行に張りめぐらされたフェンスのてっぺんはむこう側にむかって折れていて、目の届くかぎり左右へつづいて…
さて、まさに真夏のピークの8月10日、梅田蔦屋書店で行われた翻訳者村井理子さんと、編集者田中里枝さんのトークイベントに参加しました。 おふたりがタッグを組んだ最初の本、『ダメ女たちの人生を変えた奇跡の料理教室』の著者キャスリーン・フリンが、日…
あまりにひどい話だ。手は怒りで震えていた。でも今となっては、そのサイトを見てよかったと思う。それによって、私ははっきり自覚した。もしも私たち生存者がこのまま沈黙を続けていたら、声を上げ続けるのは嘘つきとわからず屋だけになってしまう。私たち…
さて、プロフィールでもちらりと書いているとおり、ミステリーにとくに詳しいわけでも何でもないのに、僭越ながら大阪翻訳ミステリー読書会の世話人をしているのですが、9月開催の読書会の課題本に『ローズ・アンダーファイア』(エリザベス・ウェイン著 吉…
それにしても『文学効能事典』を読むのは楽しい。 文学効能事典 あなたの悩みに効く小説 作者: エラ・バーサド,スーザン・エルダキン,金原瑞人,石田文子 出版社/メーカー: フィルムアート社 発売日: 2017/06/26 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (1件)…
「われわれの土地について、彼らがおまえに教えることには答えが二つある。本当の答えと、学校の試験に通るための答えだ。本を読んで、両方の答えを学ばなければいけない。本はわたしがあたえる。すばらしい本だぞ」 以前に『男も女もみんなフェミニストでな…
でもそのときはわからなかった――なぜ出席番号は男子から先についているのか。出席番号の一番は男子で、何でも男子から始まり、男子が先なのが当然で自然なことだと思っていた。 遅ればせながら、話題の『82年生まれ、キム・ジヨン』を読みました。 82年生ま…
毎日、だれかのからだで目覚める毎日、ちがう人生を生きる毎日、きみに恋してる 以前、ジョン・グリーンとデイヴィッド・レヴィサンが共作した『ウィル・グレイソン、ウィル・グレイソン』を紹介しましたが、今度はデイヴィッド・レヴィサン単著の『エヴリデ…
先日『元年春之祭』を課題本にして翻訳ミステリー読書会を開催し、そのレポートがこちらのサイトに掲載されました。 元年春之祭 (ハヤカワ・ミステリ) 作者: 陸秋槎,稲村文吾 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2018/09/05 メディア: 新書 この商品を含むブ…
暴動を煽動し、連邦政府職員――ジェイと似たりよったりの若造で、政府にやとわれた情報提供者――を殺害するための共同謀議を企てたとして、検察はジェイを告発した。検察は電話で三分半足らずのジェイとストークリー・カーマイケルとの会話のテープを押さえ、…
前回書いた「はじめての海外文学」の翌日に、出町座で行われたトークショーで、海外文学の魅力とは? という話になり、「遠さ」と「近さ」ではないかという意見が出た。 つまり、海を越えた「遠い」国の物語であるのに、その心情はおどろくほど「近い」とい…
さて、遅くなってしまいましたが「はじめての海外文学」@梅田蔦屋書店のレポの続きです。 田中亜希子さんの次の登壇者は、現在ご自身の訳書『タコの心身問題』が大ヒット中の夏目大さん。 タコの心身問題――頭足類から考える意識の起源 作者: ピーター・ゴド…
さて、先週土曜日は、梅田蔦屋書店で行われたイベント「はじめての海外文学」に行ってきました。 「はじめての海外文学」って何なんそれ? という方もいるかと思いますが、ふだん海外文学になじみのない読者に向けて、翻訳者さんがおすすめの本を紹介すると…
さて、最近読んだ本をさくっと数点紹介したいと思います。 (いや、ここ最近、1つのトピックで長々書いてしまいがちなので、そんなに長く書いたら、もともとその話題に興味あるひと以外誰も読まないぞー!というのは承知しているので、今年は短い紹介記事も…
精神病院で死んだ、モダニストの狂った妻たち。閉じ込められ、保護されて。忘れられ、消し去られ、書き換えられて。ヴィヴィアン・エリオットは自分の分身を書いた。名前はシビュラ。彼女の夫の詩『荒地』は、甕のなかに閉じ込められた彼女の声で始まる。そ…
さて、きょうはクリスマス・イヴ。 ここ数年は本気でその存在を忘れてしまいがちなクリスマスですが、実は19世紀においても、すでに廃れつつある行事になりかけていたらしい。 という事実を、先日映画『メリークリスマス ロンドンに奇跡を起こした男』を見て…
ナディアは、ISISによって連れ去られ、フェイスブック上に開設された市場で、ときにはたったの20ドル程度で売買された数千人のヤズィディ教徒のひとりだった。ナディアの母親は、80人の高齢女性たちとともに処刑され、目印ひとつない墓穴に埋められた。彼女…
『アメリカ死にかけ物語』発売記念として行われた、リン・ディンさんと岸政彦さんのトークライブに行ってきました。 前作の『血液と石鹸』を読んだきっかけは、柴田元幸さんが訳しているからという単純なものだったけれど、ベトナムからアメリカに移民したバ…
先週の日曜、スタンダードブックストア心斎橋で行われた、翻訳家の岸本佐知子さんと作家の津村記久子さんのトークショーに参加してきました。 おもな内容は、ミランダ・ジュライの新作『最初の悪い男』にまつわるもので、まだ読んでいないため(この日に買い…
彼は生涯で百人を優に超える女と寝たに違いないが、何人かとは一回寝ただけで、大多数の女の名前は忘れてしまった。彼は自分がほかの男より強い性的衝動を持っているのかどうか、大方の男より、それを満足させるのにもっと成功しただけなのかどうかはわから…
『アラスカを追いかけて』『さよならを待つふたりのために』などでおなじみの人気作家、ジョン・グリーンと、目下『エヴリデイ』が話題のデイヴィッド・レヴィサンが共作した『ウィル・グレイソン、ウィル・グレイソン』、当然読み逃すわけにはいきません。 …
歯を磨いたり洗い物をするときなどは、スマホでよくラジオを聞くのだけど、NHKラジオの「仕事学のすすめ」という番組に、前回の『コンビニ人間』の村田沙耶香が出ていたので聞いてみた。 すると、パーソナリティーから、「この小説に出てくる白羽さんは、遅…