『Ketchup Clouds』 Annabel Pitcher
- 作者: Annabel Pitcher
- 出版社/メーカー: Indigo (an Imprint of Orion Children's)
- 発売日: 2013/07/01
- メディア: ペーパーバック
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イギリスのバースに住む15歳の ”Zoe” は、頭も良く、二人の妹の面倒をみるしっかり者の長女であるが、だれにも言えない秘密があった。夜になると、こっそりベッドから抜け出して、妻を殺した罪で死刑囚となったハリスに手紙を綴るのだった。「わたしもひとを殺したの」と……
それにしても、向こうの15歳って、ほんと大人だなーとあらためて思った。
ホームパーティーに行って、こっそりお酒を飲んで、そしてアバンチュールにいたるって、私もじゅうぶん大人ですが、そんな経験一回もありません。(もちろん今後もないでしょう) いや、この主人公の ”Zoe” は、スポーツが得意で成績はイマイチのようだけど、今時の言葉でいうと「スクールカースト」のトップに位置するらしいマックスのホームパーティーに呼ばれ、お酒の勢いもあってマックスと仲良くなり、そのまま付き合うことになってしまうが、一方、そのパーティーで出会った、マックスの兄であるアーロンにも魅かれ……と、まさに ♪けんかをやめて~的な展開になっていくのでした。で、冒頭の手紙につながるのですが、
(ネタバレになるかもしれませんけど)
物語の最初からあおられているほど、凄惨な事件が起きるわけではありません。ミステリーなのかと思って読んだのですが、やはりヤングアダルトのお話でした。なので、物足りなく思う人もいるでしょうけど、安心して中高生や陰惨な話が苦手な人にも勧めることができます。
実は、この本で一番おもしろかったのは、けんかをやめての恋愛沙汰より、サイドストーリーである家族のパートでした。父方の祖父が脳梗塞で倒れ、しかし母は祖父とわだかまりがあるようで見舞いに行きたがらないので、弁護士の父が病院に通っているうちに事務所をリストラされてしまうが、母は耳が聞こえない一番下の妹ドットの面倒をみることで手一杯だと主張して仕事に出ようともせず、父と母の仲はどんどん険悪になっていくのですが、最後まで読むと、家族の秘密が明かされ、不可解、あるいは過剰に思えた母親の行動も納得できます。これが一番ミステリーぽい要素でした。障碍のある登場人物を出すのは難しいと思うのですが、この妹ドットは、無邪気でありながら、あり得ないような天使ちゃんでもなく、うまく描かれていてこの物語に彩りをあたえていると感じました。