快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

旅する犬の物語② ビビリ犬マドのタイ旅行記『旅はワン連れ』(片野ゆか)

 さて、前回から気を取り直すために(?)、続けて読んだ犬本は、片野ゆか『旅はワン連れ』。 

旅はワン連れ

旅はワン連れ

 

 タイトルのとおり、ワンコを連れて旅行する話なのですが、国内をちょろっと一泊とか二泊旅行するのではなく、タイの南はチャーン島、そしてチェンマイからさらに北まで、犬連れで二か月近く旅行するのだから、人間も犬もかなりの覚悟と準備が必要になる。

 どうしてそんな旅を決行したのかというと、愛犬マドはかなりのビビリ犬で、保健所から引き取られて一年半経つというのに、散歩中に出会うものはもちろん、取材で家を留守にしがちな”お父さん”さえ、ときには恐がってしまう始末なので、今度もっと「楽しい犬生」を送るために、”お父さん”も一緒に旅行に行って外の世界に慣れよう!というために。

 しかし、もちろん検疫など出入国の手続きもめちゃめちゃ面倒だし、いくらおおらかな国タイといっても、犬が泊まれる宿はすごく限られている。犬連れの移動も、国際線の飛行機は乗れても、タイの国内線は不可。高速バスも不可なので、おそろしく時間のかかる国鉄に乗らないといけない(しかも、駅に停まった合間にトイレもさせないといけない)。

 でも、それでも、犬と一緒に旅行、うらやましい!!と思った。愛犬をスリング(だっこ紐)に入れて、バンコクの屋台でごはんを食べ、チャーン島では一緒にシーカヤックをして、チェンマイではサンデーマーケットに行き、スコータイでは散歩がてらに遺跡を探訪し……。私もタイは大好きで、バンコク、アユタヤ、チェンマイなど回ったけれど、愛するペットと一緒なら何倍楽しかったことだろう。けど、猫はやはり一緒に旅行には行けないしな。。。

 また、持っていったグッズもいろいろ紹介されていて、トイレシーツ、犬用シャンプー、フィラリア予防薬などは当然として、おからパウダーとイチモウダジンが気になった。おからパウダーは便秘予防になるらしい。うちの猫にも食べさせてみようかな。あと、イチモウダジンというのは、カーペットなどにくっついた抜け毛をきれいに掃除できるらしい。アマゾンでも安いし、よさそう。毎日猫の毛だらけのベッドで寝て、猫の毛だらけの服で会社に行っている私ですが。 

  それにしても、犬を連れての長期外国旅行って、だれにでもできるものなのだろうか? 
 いや、できないかもしれない。というのも、作者片野さんが犬を専門とするノンフィクションライターであるのにくわえ、なんといっても、”お父さん”である夫は、辺境ライターでおなじみ、高野秀行さんなのだから。

 ミャンマーの麻薬地帯やアマゾン、中東からアフリカのソマリまで行きつくしている(唯一インドは入国禁止なので、残念ながら行きつくせないようだが)高野さんだけあって、タイは以前住んでいたため(チェンマイ大学で日本語講師をされていたのだ)タイ語も話せるし、犬を連れて旅行するくらい余裕のはず。だからか、犬を抱いてゴーゴーバーのお姉ちゃんと映った写真も、かなりの笑顔っぷりだった。

 と思って読んでいたら、なんと旅行中、その”お父さん”がダウンしたのだった。そう、おなじみの(高野ファンにとっては)腰痛で。高野さんの腰痛については、以前ここでも名著『腰痛探検家』を紹介したけれど(いや、単に腰痛を克服しただけではなく、腰痛から人間の心理の機微、そして人生の真理まで洞察した名著なのです)、ほんとまめに走ったり泳いだりしないとすぐに悪化するようだ。 

腰痛探検家 (集英社文庫)

腰痛探検家 (集英社文庫)

 

  でもほんと、”群れ”(家族三人)で旅する様子を読んでいると、理想の夫婦だなーとつくづく感じる。ふだんは、「理想の夫婦」なんて言葉を聞くと、そんなんあるわけない、絶対嘘やろって思ってしまうのだが。

 犬との幸せな日々が長く続くように、、、と思っていたら、いまさっき、講談社のPR誌『本』の町田康の「スピンク日記」を読むと、なんとスピンクが亡くなったとのこと。別れが来るからこそ、一緒にいる日々が尊い、というのはよくよくわかっているのですが、でもやっぱり別れのつらさに慣れることはできそうにない。。。 

スピンク日記 (講談社文庫)

スピンク日記 (講談社文庫)