子どもにとっても、おとなにとっても、”ふつう”じゃないワンダーなブックガイド『外国の本っておもしろい!』
自由にのびのびと文章を書きたい、そう思ったことのある人は多いのではないでしょうか?
思ったことや感じたことを、素直に綴りたい。あるいは、そんな文章を読んで、自分の心にも素直な感動をよみがえらせたい、と。
この『外国の本っておもしろい!』を読んだとき、まさにそういう思いがわきおこってくるのを感じました。
外国の本っておもしろい! ~子どもの作文から生まれた翻訳書ガイドブック~
- 作者: 読書探偵作文コンクール事務局,越前敏弥,宮坂宏美,ないとうふみこ,武富博子,田中亜希子,井上・ヒサト,越前敏弥宮坂宏美ないとうふみこ武富博子田中亜希子
- 出版社/メーカー: サウザンブックス社
- 発売日: 2017/08/21
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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この本は、「読書探偵作文コンクール」で入賞した、小学生の子どもたちの作文を集めた本であり、「読書探偵作文コンクール」が従来の読書感想文コンクールとどうちがうのかというと、
①対象となる本は翻訳書に限る
②「感想文」である必要はなく、本から発想した二次創作でもいいし、作者への手紙やストーリーの要約のみでもよい、という点です。
なので、『赤毛のアン』の世界から短歌をよんだり、『マジック・ツリーハウス』全巻の要約をまとめたり、『ファーブル昆虫記』を読んで、「虫のきらいなお友だちへ」手紙を書いたりと、形式にとらわれない作文がおさめられています。(ちなみに私も「虫のきらいなお友だち」だが、正直、『ファーブル昆虫記』を読んでも好きになれる気はしない……)
「読書感想文」というと、最近もメルカリで売りに出されていることが話題になっていたように、書くのが憂鬱だったという人も少なくないと思いますが、これなら「お父さんとお母さんにもっと感謝しようと思いました」みたいな感想を無理やりひねり出す必要もないですね。
そして、この本でなんといっても一番おどろかされたのが、子どもたちの文章のレベルの高さ。
小学一年生が『あおいめのこねこ』を読んで、「ほんについてかんがえたことが、三つあります」と列挙して感想を綴っていたり、小学四年生がホーキング博士の本を読んで、太陽系を「宇宙の星新聞」にまとめたり、それぞれの惑星を動物や花にたとえたり。
小学六年生ともなれば、『トムは真夜中の庭で』と『秘密の花園』に出てくる庭を対比して考察したり、アガサ・クリスティーについて、「アガサの描く人物には”リアリティー”がある。誰しも人の心に潜む闇、言いかえれば人間らしさを小説の中の人物に置きかえて実に巧みに表現し、共感させる」と論じたりと、度肝ぬかれました。
もちろん、この本は「読書探偵作文コンクール」にこれから応募しようという読書好きの子どもや、子どもにどんな本を読まそうか悩んでいる親が読むのにもってこいなのですが、とくに子どもと縁のないおとな(私)にとっても、『赤毛のアン』など自分もかつて読んだ本についての作文でなつかしい気分になったり、あるいは、これから読んでみたい本が見つかったりと、読書ガイドとしてもじゅうぶんに使えるものとなっています。
作文の題材の本だけではなく、審査員の翻訳者たちによるおすすめ本を紹介するコーナーもあり、前から気になっていた『理系の子』や、絵本『リンドバーグ』がおもしろかったので、続編も読もうと思っていた『アームストロング』(それにしても、このネズミどこまで行くねん!と思うが)などが取りあげられています。
理系の子 高校生科学オリンピックの青春 (文春文庫 S 15-1)
- 作者: ジュディ・ダットン,横山啓明
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2014/10/10
- メディア: 文庫
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それにしても、どうして子どもたちの作文にこれほど感心させられるのか考えたところ、やはり「本が好き!」という純粋な思いがあふれているからだと感じました。
小学五年生が『不思議の国のアリス』を読んで、アリスの世界の奇想天外さに魅了され、「”ふつう”はいらないワンダーランド」という作文を書いているけれど、本を読むことは、子どもたちにとって、そしておとなにとっても、”ふつう”の世界から解放されるワンダーランドなのだな、と。
学校などで、子どもはいつも、”ふつう”であること、ひとと一緒であることを要求されているのではないかと思うけれど、本を読むことで、そういう同調圧力から解放されて、世の中にはまだまだ自分の知らない世界があるということを実感してもらえたらいいな。