またまた犬と猫 『レイン 雨を抱きしめて』(アン・マーティン 西本かおる訳)『キラーキャットのホラーな一週間』(アン・ファイン 灰島かり訳)
夜、寝るときには、レインはわたしの毛布にもぐりこんでくる。夜中に目がさめると、レインがわたしにのしかかっていて、レインの顔がわたしの首の上にある。
レインの息はドッグフードみたいなにおいがする。
犬猫シリーズにまた新たな一冊が加わった。
レイン: 雨を抱きしめて (Sunnyside Books)
- 作者: アン・M.マーティン,Ann M. Martin,西本かおる
- 出版社/メーカー: 小峰書店
- 発売日: 2016/10/25
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログを見る
この『レイン 雨を抱きしめて』は、11歳の主人公「わたし」のもとに、レインという犬がやってくることからはじまる。
いや、はじまると言っても、物語はそんなにスムーズにはじまらない。「わたし」ことローズは高機能自閉症児であり、特定のものに異常に興味が集中してしまうのだ。
とくに同音異義語と素数に尋常じゃないこだわりを持ち、ルールを守らない人を見るとパニックをおこしてしまう。
小学校の先生からは「特殊な学校」に行くことを薦められ、スクールバスでもヘッドライトやウィンカーをちゃんと灯さない車を見ると叫び声をあげるので、もう乗せてもらえなくなった。
なので、「わたし」はパパの弟であるウェルドンおじさんに送り迎えをしてもらっている。パパは工場で働いているから、時間の都合がつけられないのだ。ママは「わたし」が幼いときにどこかに行ってしまった。
そして、ある雨の夜、パパが犬を連れて帰ってきた。「パパが雨の中で見つけたし、レインって2つも同音異義語がある特別な言葉だから」レインと名付ける。
そう、以前にここでも紹介した『夜中に犬に起こった奇妙な事件』とかなり共通する要素がある。
”夜中犬”もアスペルガーの15歳の「ぼく」が主人公で、やはり素数に執着を持っていた。パパとふたり暮らしというところも共通している。
そして、犬が災難に遭うというところも同じだ。といっても、安心してください(古い!)。串刺しにして殺される”夜中犬”とちがい、レインはハリケーンの日にパパが外に出したせいで、迷子になってしまうのだ。
犬の災難の程度に比例してか、この『レイン』は、”夜中犬”ほどつらいひりひりする話ではなく、このすてきな表紙の絵からイメージできるように、あたたかさがじんわりと心に残る話だった。けれど、この『レイン』も甘い物語ではなく、最後には「わたし」は現実と向きあってつらい選択をして、少し大人に近づく。そして、最後につらい選択をするのは「わたし」だけではない。
それにしても、”夜中犬”にしても『レイン』にしても、当事者である主人公たちが学校生活になじめず、つらい思いをしているのはわかるけれど、親たちのしんどさもよく伝わってきてほんとうに切ない。
子ども以上に親が成長を強いられ、そしてときには挫折してしまう。親だって完璧じゃない。だって、この「わたし」のパパなんて33歳だ。親代わりをするウェルドンおじさんは31歳。嵐のメンバーくらいの歳だ(たぶん)。
でも、この本のウェルドンおじさんのように、必ずしも親でなくとも、先生でも、まったくの他人でも、そして犬でも、子どもを愛して成長を助けることができるのだと思った。
あと、最近もう一冊読んだのは、『キラーキャットのホラーな一週間』。
- 作者: アンファイン,スティーブコックス,Anne Fine,Steve Cox,灰島かり
- 出版社/メーカー: 評論社
- 発売日: 1999/12
- メディア: 単行本
- クリック: 6回
- この商品を含むブログを見る
以前『チューリップ・タッチ』を紹介した、イギリスの人気児童文学作家アン・ファインによる絵本。
けれど、シビアなおそろしさがあった『チューリップ・タッチ』とはちがい、これは楽しく可愛らしい絵本だった。さすが芸風が幅広い。猫のいたずらに悩まされる様子が他人事とは思えない。いや、でもこの猫がめちゃ利口なんで、右往左往させられる人間の家族がほほえましかった。
↓動物病院で暴れて手に負えない。うちの子にも心当たりが…