快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

サラ・ウォーターズ

わたしはわたし、ぼくはぼく(BOOKMARK 10号より) 『夜愁』(サラ・ウォーターズ 著 中村有希 訳) 

映画というと、2017年最大に度肝を抜かれたのは『お嬢さん』だった。ヴィクトリア朝を舞台にしたサラ・ウォーターズの原作『荊の城』を、日本占領下の韓国の話に作りかえただけでもじゅうぶんインパクトがあるのに、まさに文字通り「一糸まとわぬ」女子たち…

女と女は化かしあい? それとも――『荊の城』(サラ・ウォーターズ 中村有希訳)/ 映画『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)

モードは何よりも華奢だった。母ちゃんとは違う。母ちゃんとは全然違う。子供のようだ。まだ少し震えているモードがまばたきすると、睫毛が羽のようにあたしの咽喉をなでる。しばらくすると、震えは止まり、もう一度、睫毛が咽喉をこすって、静かになった。…