さて、タイトルのとおり、これからは note に読書記録をつけていこうと思いますので、これまでこのブログを読んでくれていたみなさま(感謝)、たまたま検索で流れついたみなさま、これからはnoteの方を見ていただければ有難いです。 note.com いまのところ…
8月の書評講座の課題書は、『田辺聖子 十八歳の日の記録』でした。 田辺聖子 十八歳の日の記録 (文春e-book) 作者:田辺 聖子 文藝春秋 Amazon 言うまでもなく、日記とは通常誰にも見せないという前提で書くものであり、この『十八歳の日の記録』も作者の死…
ちょうど数か月前の書評講座の課題書が、木村紅美『あなたに安全な人』だった。コロナが全国に広まりつつあった2020年を舞台とし、まだコロナ患者がほとんど発生していない地方の町で、正体のわからない病気に対するぼんやりとした不安、隣の誰かがウイルス…
先月の書評講座の課題は、芥川賞候補にもなった話題作、年森瑛『N/A』でした。 N/A (文春e-book) 作者:年森 瑛 文藝春秋 Amazon まずシンプルな感想として……おもしろかった! 帯や評判から想像する、こういう話なのかな? というラベリングをことごとく否定…
さて、先月の書評講座の課題は、永井みみ『ミシンと金魚』でした。 ミシンと金魚 (集英社文芸単行本) 作者:永井みみ 集英社 Amazon 去年すばる文学賞を受賞したこの小説は、認知症の老人によるひとり語りという形式が大きな話題となった。作者が実際に介護ヘ…
先月の書評講座の課題は、中島京子『やさしい猫』でした。 やさしい猫 作者:中島京子 中央公論新社 Amazon ここ数年、社会問題となっている入管制度を取りあげた小説です。スリランカ国籍のウィシュマさんが名古屋の入管で亡くなった事件も、記憶に新しいの…
さて、翻訳ミステリーシンジケートのサイト、および翻訳ミステリー読者賞のサイトでも告知していますが、5月29日にアイラ・レヴィン『死の接吻』(中田耕治訳)を課題書として、大阪翻訳ミステリー読書会をオンラインで開催いたします。 hm-dokushokai.ameba…
さて前回、翻訳ミステリー読者賞の発表会を告知しましたが、無事終了いたしました。ホリー・ジャクソン『自由研究には向かない殺人』(服部京子訳 創元推理文庫)が2021年の翻訳ミステリー読者賞に輝きました!!!こちらのサイトに、2021年度のランキングを…
さて、私は翻訳ミステリー大阪読書会の世話人をしているのですが、2021年度翻訳ミステリー読者賞の発表イベントが開催されます。 ◎2022年4月16日(土)21時~ YouTubeから生配信(1時間半程度)こちらのリンクです:https://youtu.be/4jPrbG6909A 全国各地の…
この不穏な状況を予期したように、先月の書評講座(1000字)の課題書は、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ『戦争は女の顔をしていない』(三浦みどり訳)でした。 戦争は女の顔をしていない (岩波現代文庫) 作者:スヴェトラーナ アレクシエーヴィチ 岩波書…
猫や犬たちが感じている痛みや苦しみが自分にも伝わったらいいのに――猫や犬などの動物とともに暮らしている人なら、誰でもそう願ったことがあるのではないでしょうか?動物はとても我慢強く、「痛い」や「苦しい」となかなか言わないので、人間が気づいたと…
前回は翻訳アンソロジー『楽しい夜』(岸本佐知子編訳)から、アリッサ・ナッティングのショートショート「アリの巣」「亡骸スモーカー」などを紹介しました。モンスターをテーマにした短編が16編収められた『モンスターズ: 現代アメリカ傑作短篇集』(古屋…
先月、ローレンス・ブロック『短編回廊』(田口俊樹他訳)で読書会を行いました。翻訳ミステリー大賞シンジケートのサイトにレポートがアップされています。 honyakumystery.jp そこで、ここでは読書会レポートでは書ききれなかった、『恋しくて』(村上春樹…
今月の書評講座の課題書は、直木賞候補にもなった話題作、『同志少女よ、敵を撃て』でした。 同志少女よ、敵を撃て 作者:逢坂 冬馬 早川書房 Amazon 激化する独ソ戦を舞台としたこの物語は、主人公セラフィマの村に突然ドイツ兵があらわれる場面からはじまる…
先月の書評講座の課題書は、水村美苗『母の遺産:新聞小説』でした。 母の遺産 新聞小説(上) (中公文庫) 作者:水村美苗 中央公論新社 Amazon ママ、いったいいつになったら死んでくれるの? と、ドキっとする言葉がコピーとなっているこの小説では、亡くな…
2022年になりました。あけましておめでとうございます。正月といっても、ふだんと何も変わりはしないけれど……と思いつつ、去年から積読していた、デヴィッド・フォスター・ウォレス『これは水です』をふと手に取ったところ、年末年始でぼんやりしていた目が…
先月の書評講座の課題書は、柳美里『JR上野駅公園口』でした。 JR上野駅公園口 (河出文庫) 作者:柳美里 河出書房新社 Amazon 全米図書賞を受賞した話題作です。私の提出した書評は以下のとおりです。 (ここから)---------------------------------------…
先月、はじめての共訳書『算数の実験大図鑑』が新星出版社より出版されました。 折り紙や輪ゴム、アイスの棒といった身近な物を使って、楽しく実験しながら、足し算引き算からフィボナッチ数列まで学べる一冊です。ひとつひとつの工程がていねいに説明されて…
もしも忘れているのなら、思い出させてあげましょう。私はあなたの妻です。わかっています。かつてのあなたはそのことに喜びを見出していたはずなのに、いまになってとつぜん煩わしくなったのですね。 という不穏な言葉で、ドメニコ・スタルノーネ『靴ひも』…
800字書評講座の今月の課題書は、『塩を食う女たち』でした。 塩を食う女たち――聞書・北米の黒人女性 (岩波現代文庫) 作者:藤本 和子 岩波書店 Amazon 1982年に出版されたこの本には、リチャード・ブローティガンなどの翻訳で知られる藤本和子が、黒人女性ひ…
さて、今回の書評講座の課題本は、ツルゲーネフ「はつ恋」でした。(青空文庫でもあります) はつ恋(新潮文庫) 作者:ツルゲーネフ 新潮社 Amazon 言わずと知れた文豪ツルゲーネフによる名作。といっても、案の定、読むのは今回がはじめて。きっとタイトル…
さて、今回の800字書評講座の課題は、ベストセラーとなって世間を席巻した、ブレイディみかこ『ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー』だった。 ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー(新潮文庫) 作者:ブレイディみかこ 新潮社 Amazon これも…
マット・ヘイグの『Midnight Library』を読みました。発売されてから一年近く経っているのに、いまもなお、The New York Times誌のベストセラーに入り続ける人気作です。 The Midnight Library: The No.1 Sunday Times bestseller and worldwide phenomenon …
給食というと、何を思い出すでしょうか? 年配の人ならば、悪評高い脱脂粉乳がまっさきに頭に浮かぶかもしれません。若い人ならば、郷土色豊かなごはん食かもしれません。給食の時間が楽しみだった人、あるいは苦手だった人、どちらにせよ、給食は個人的な思…
間が空いてしまいましたが、先月は人生初の入院&手術を受ける羽目になりました。その顛末は、こちらの note.com に書いてあります。 さて、800字書評の先月の課題書は、澤田瞳子『火定』でした。 奈良の都に天然痘が広がるさまを描いたパンデミック小説です…
さて、今回の800字書評の課題は、斎藤幸平『人新生の資本主義』だった。 2020年に発売されたこの本は、6万部を超えるベストセラーとなり、新書大賞も受賞したのでご存じの方も多いと思う。 人新世の「資本論」 (集英社新書) 作者:斎藤幸平 集英社 Amazon し…
有吉佐和子『非色』を読みました。 非色 (河出文庫) 作者:有吉佐和子 発売日: 2021/02/19 メディア: Kindle版 1964年に発表されたこの小説は、黒人差別を扱っていることが問題視され、絶版になっていたらしい。しかし、Black lives matter運動の盛りあがりに…
先月の800字書評の課題本は、酒見賢一『後宮小説』でした。 後宮小説(新潮文庫) 作者:酒見 賢一 発売日: 2014/08/01 メディア: Kindle版 『後宮小説』は、1989年に日本ファンタジーノベル大賞第一回受賞作品に選ばれて大きな話題となり、のちに『雲のよう…
デイヴィッド・ベニオフの短編集『99999』(ナインズ)を読みました。 デイヴィッド・ベニオフは、第二次世界大戦時のロシアで生きのびようとする青年たちを描いた『卵をめぐる祖父の戦争』で高く評価され、さらに小説のみならず、『ゲーム・オブ・スロ…
さて、800字書評講座の今月の課題書は、梁英聖『レイシズムとは何か』でした。 レイシズムとは何か (ちくま新書) 作者:梁英聖 発売日: 2020/11/20 メディア: Kindle版 『レイシズムとは何か』では、まず冒頭の章で「レイシズム」の歴史を振り返り、近代以前…