快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

フェミニズム

国際女性デーに 女性の連帯から何かがはじまる――『99%のためのフェミニズム宣言』(ナンシー・フレイザーほか(著), 菊地夏野(解説), 惠愛由 (翻訳))

前回に続き、800字書評(正確には、批評講座だけど)ですが、今回のお題は本ではなく、森喜朗氏の例の発言について評論するというものでした。 正直なところ、例の発言とそれをめぐる報道については、「またこの人か……」と思った程度で、それほど注目してな…

立派な実験動物として生きるために 『韓国フェミニズム作品集 ヒョンナムオッパへ』(チョ・ナムジュほか著 斎藤真理子訳)

『韓国フェミニズム作品集 ヒョンナムオッパへ』を読みました。 タイトルからもわかるように、「フェミニズム」をテーマに韓国の女性作家七人が書き下ろした短編集……というコピーから思い浮かぶ枠をはるかに超えて、リアリズム小説からノワールやSFまで多…

「不逞」に戦い続けること 『何が私をこうさせたか』(金子文子著)『三つ編み』(レティシア・コロンバニ 著 齋藤可津子訳)

文体については、あくまでも単純に、率直に、そして、しゃちこ張らせぬようなるべく砕いて欲しい。ある特殊な場合を除く外は、余り美しい詩的な文句を用いたり、あくどい技巧を弄したり廻り遠い形容詞を冠せたりすることを、出来るだけ避けて欲しい。 前回の…

まるでリトマス試験紙のように、自分を振り返る―『82年生まれ、キム・ジヨン』(チョ・ナムジュ 著 斎藤真理子 訳)

でもそのときはわからなかった――なぜ出席番号は男子から先についているのか。出席番号の一番は男子で、何でも男子から始まり、男子が先なのが当然で自然なことだと思っていた。 遅ればせながら、話題の『82年生まれ、キム・ジヨン』を読みました。 82年生ま…

Freedom or Death?? ジャネット・ウィンターソン『Courage Calls to Courage Everywhere』

前々回に紹介した、BUSINESS INSIDER JAPAN編集長の浜田敬子さんによる『働く女子と罪悪感』トークイベントで印象に残ったのは、ジェンダーに関する話題が一番炎上するという話だった。憲法改正問題や中国・韓国との関係よりも、男女差別の話題がとにかく激…

来たるべき新世界へ――女と女の物語~百合(かもしれない)ブックガイド

先日『元年春之祭』を課題本にして翻訳ミステリー読書会を開催し、そのレポートがこちらのサイトに掲載されました。 元年春之祭 (ハヤカワ・ミステリ) 作者: 陸秋槎,稲村文吾 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2018/09/05 メディア: 新書 この商品を含むブ…

女が自らを救うために――『ヒロインズ』(ケイト・ザンブレノ著 西山敦子訳)

精神病院で死んだ、モダニストの狂った妻たち。閉じ込められ、保護されて。忘れられ、消し去られ、書き換えられて。ヴィヴィアン・エリオットは自分の分身を書いた。名前はシビュラ。彼女の夫の詩『荒地』は、甕のなかに閉じ込められた彼女の声で始まる。そ…

マイノリティであるということ――10/31 トークイベント(ゲスト:松浦理英子)「現代文学を語る、近畿大学で語る」

10月31日、作家の松浦理英子がゲストで参加したイベント「現代文学を語る、近畿大学で語る」に行ってきました。 平日の昼間だったけれど、これまで『ナチュラル・ウーマン』や『裏ヴァージョン』などの作品を幾度も読み返したことを思うと、そりゃ午後休取る…

欲望から目をそらさず対峙した一冊 『愛と欲望の雑談』(雨宮まみ、岸政彦)

このひとがいま生きていたなら、どう言っただろう? と、ふとした瞬間に考えさせられるひとたちがいる。 前回取りあげたヴォネガットや、最近またベスト本が出るらしいナンシー関など。 そして、雨宮まみもたしかにそのひとりだなと、岸政彦との対談本『愛と…

どうして女が自分を肯定することは、こんなにむずかしいのだろう? 「BUTTER」(柚木麻子)

どうして私たちは木嶋佳苗に注目してしまうのだろう? 木嶋佳苗をめぐる事件は、まるでプリズムのようにさまざまな角度から語ることができる。援助交際、性の売買、婚活、女の容姿、「家庭的」な女、父と娘、母と娘、地方と東京、セレブ志向…… 柚木麻子の『B…

もしかして、この国は沈没しつつある? 『ニッポン沈没』 斎藤美奈子

今月号の筑摩書房のPR誌『ちくま』を読んでいると、斎藤美奈子の「世の中ラボ」が参院選を取りあげていて、 安倍政治はもうたくさん。私も野党側に勝ってほしいと切に願っている。なんだけど、ほんとに勝てるかとなると「今度もダメなんちゃう?」という疑念…

オトコとオンナの宿題はいつまでたっても山積みのまま? 『降ります―さよならオンナの宿題』 中村和恵

『あさが来た』も、終わってしまいました。けどやはり、最終的には夫婦愛が強調されることを思うと、『カーネーション』はやはり異色作だったんだなと感じる。それにしても、大森美香さんの脚本は『きみはペット』もそうだったけど、働く女性を見守る男を描…

まだまだ頑張りたい女たちへ――『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』 ジェーン・スー

それにしても最近のニュースを見ていると、ゲスな男にも上には上がいるもんだな、とつくづく感じてしまいます。 ちょうどいま、ケーブルTVで「Sex and the City」の再放送をしているけれど、主人公キャリーのこのつぶやきに思わず考えこんでしまう。 What if…

ジェイニーを探して――『彼らの目は神を見ていた』 ゾラ・ニール・ハーストン

年明けからワイドショーネタが盛りあがり続ける今日この頃ですが(それにしても、みなさん同様だと思いますが、K氏が何股かけてるのかということより、自称彼女の姿の方が衝撃的だった。キムタクがやってた安堂ロイドってこのことだったの?と思った。いや…

わたしは幸せなフェミニスト 『We should All Be Feminists 』 Chimamanda Ngozi Adichie (チママンダ・ンゴズィ・アディーチェ)

「まれ」は、最初の数回でちゃんと見る気を失ってしまったのですが、「あさが来た」は、今のところおもしろく見ています。 なんといっても、柄本佑演じるヘビ男の曲者感が気になる。キツいおかあちゃんの尻にしかれた、ただのネクラ(死語ですが)なボンボン…

暴力から人間は立ち直ることができるのか? Roxane Gay 『An Untamed State』

An Untamed State 作者: Roxane Gay 出版社/メーカー: Grove Press, Black Cat 発売日: 2014/05/06 メディア: ペーパーバック この商品を含むブログを見る 前回のミネット・ウォルターズ『悪魔の羽根』は、拉致体験から女性が立ち直る様子が描かれていたが、…

女の幸せって?? 『無頼化した女たち』 水無田気流

無頼化した女たち 作者: 水無田気流 出版社/メーカー: 亜紀書房 発売日: 2014/02/22 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (4件) を見る NHKなどに出演している論客、水無田気流の『無頼化した女たち』を読んだ。 女性の生き方や働き方…

『毒婦たち 東電OLと木嶋佳苗のあいだ』 上野千鶴子×信田さよ子×北原みのり

毒婦たち: 東電OLと木嶋佳苗のあいだ 作者: 上野千鶴子,信田さよ子,北原みのり 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2013/10/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (6件) を見る 最近、平山亜佐子さんが毎日サイトで更新している、…