快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

5/29 大阪翻訳ミステリー読書会(オンライン開催・課題書『死の接吻』)& 6/12 『長い別れ』トークイベント(YouTube配信)のお知らせ

 さて、翻訳ミステリーシンジケートのサイト、および翻訳ミステリー読者賞のサイトでも告知していますが、5月29日にアイラ・レヴィン『死の接吻』(中田耕治訳)を課題書として、大阪翻訳ミステリー読書会をオンラインで開催いたします。

hm-dokushokai.amebaownd.com

 去年お亡くなりになった訳者の中田耕治さんがあとがきで、

一冊の本にはそれなりにその時期のぼく自身の何かがこめられているのだが、『死の接吻』はとくに愛着が深い

と書くこの一冊、各所のオールタイムベストテンでも頻繁に選出されている名作サスペンスです。
「彼」の独白から第一部がはじまり、第二部、第三部へと続く、三部構成になっています。

貧しい育ちの「彼」は戦争から戻ったあと、成功への野心を抱いて大学へ進学する。
大金持ちの娘と懇意になり、このままうまくいけば願いがかなうと思ったそのとき、娘の妊娠が発覚する。

1950年代において、上流階級の娘が結婚前に妊娠するなんて許されない。このままでは、家から追い出されて一文無しになった娘と結婚する羽目になる。
そんなことになれば、一生貧しさから抜け出せない。追いつめられた「彼」は、娘の殺害を決心する……

じゃあ、最初から犯人も動機もわかっているのでは? それなのにミステリーと言えるのか? 息もつかせぬサスペンスというのは嘘・おおげさ・まぎらわしいのでは?

あらすじを聞いただけではそう思うかもしれませんが、作者のたくみな仕掛けによって、ミステリーとして成立しているところが名作たる所以なのです。
二部、三部と語り手が変わることによって、物語は異なる様相を示し、いったいこの先がどうなるのかわからず一気読みすることまちがいなし。

ぜひ読書会で、「彼」の人物造形、その人となりを形成した時代背景、作者がほどこした仕掛け、この小説が名ミステリーである理由……などなどについて語り合いましょう。

ZOOMを使ったオンライン開催ですので、全国各地から参加可能です。
なお、その次は2年ぶりに対面読書会を開催しようと考えておりますので、関西圏以外の方、

ぜひこの機会にうちらの読書会に参加してや~今回逃したら最後やで~

大阪弁で言ってみましたが、メディアで報じられがちな大阪のコテコテなノリではなく(たぶん)、ボケやツッコミも不要なので安心してご参加ください。
お申込みは上記のサイトをご確認いただき、大阪翻訳ミステリー読書会のメールアドレス宛にご連絡ください。

そしてもうひとつお知らせが。

レイモンド・チャンドラーの不朽の名作といえば、そう、“The Long Goodbye”です。

長年にわたり、清水俊二訳の『長いお別れ』が親しまれてきましたが、数年前に村上春樹による新訳『ロング・グッドバイ』が出て、こちらも話題を呼びました。

そして今年、新たな新訳(って完全に頭痛が痛いパターンですが)として『長い別れ』が出版されました。
エンタメ翻訳のトップランナー田口俊樹先生が、まさに“まんをじして”訳した「名手渾身の翻訳」(帯文より)です。

私もいま精読しているところですが、とにかくマーロウの心の機微がストレートに伝わってくる訳だと思います。

「名作だと聞いたから読んでみたけど、いまいちピンとこなかった。

というか、なんでマーロウはあんなにテリーに入れこんでんの??」

という感想を抱いた方、ぜひこちらの訳で再読してみてください。

そこで、この新訳を記念して、来たる6月12日に田口俊樹先生と、担当編集者である東京創元社の井垣真理さんをお迎えして、オンライン読書会を開催することにいたしました。
みんなご存じのYouTube配信ですので、視聴するのになんの手続きもいりません。もちろん無料です。

honyakumystery.jp


私も末席の末席で参加して、「ハードボイルドとはなんぞや」から、「ハードボイルドは男のすなるものなのか」問題や、「マーロウになりたいボーイ/ガールが考察するマーロウの魅力」などについてご意見を伺いたいと思います。

ご興味のある方、ぜひご視聴ください。もちろんアーカイブで視聴いただいても結構ですが、音楽のライブと一緒で、生配信は生で参加するのがいちばん楽しいはず。
チャットにも質問やツッコミを書きこんでいただければ、頑張ってせっせと拾いますので、どうぞよろしくお願いいたします。