快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

映画

160年前の「女のいない男たち」~ツルゲーネフ『はつ恋』(神西清訳)と『ドライブ・マイ・カー』(村上春樹原作・濱口竜介監督)

さて、今回の書評講座の課題本は、ツルゲーネフ「はつ恋」でした。(青空文庫でもあります) はつ恋(新潮文庫) 作者:ツルゲーネフ 新潮社 Amazon 言わずと知れた文豪ツルゲーネフによる名作。といっても、案の定、読むのは今回がはじめて。きっとタイトル…

女がパンクでなぜ悪い? スリッツ『ヒア・トゥ・ビー・ハード』/ヴィヴ・アルバータイン『Clothes, Clothes, Clothes. Music, Music, Music. Boys, Boys, Boys.』

さて、2019年真っ先にしたことは(1月2日ですが)、女だけのパンクバンド、スリッツのドキュメンタリー映画『ヒア・トゥ・ビー・ハード』の鑑賞でした。 theslits-l7.com スリッツは1976年に結成され、81年に解散したバンドで、もちろん私はリアルタイムでは…

ディケンズとクリスマス 『Merry Christmas! ロンドンに奇跡を起こした男』と『クリスマス・キャロル』(池央耿 訳)

さて、きょうはクリスマス・イヴ。 ここ数年は本気でその存在を忘れてしまいがちなクリスマスですが、実は19世紀においても、すでに廃れつつある行事になりかけていたらしい。 という事実を、先日映画『メリークリスマス ロンドンに奇跡を起こした男』を見て…

『タイニー・ファニチャー』『優雅な読書が最高の復讐である』山崎まどかトークイベント@出町座(2018/09/01)

さて、先週の週末は、映画『タイニー・ファニチャー』の公開と、書評本『優雅な読書が最高の復讐である』の発売を記念した、山崎まどかさんのトークショー@出町座に行ってきました。 優雅な読書が最高の復讐である 山崎まどか書評エッセイ集 作者: 山崎まど…

「強きを助け、弱きをくじく」はギャグになっているのか? 『タクシー運転手 約束は海を越えて』

前回に続き、すっかりアジアづいている今日この頃。寒い日にはサムゲタンが食べたくなり、暑い日には韓国冷麺が食べたくなる自分には、やはりヴィクトリア朝ではなくアジアの方が似合うのでしょう…… というわけで、映画『タクシー運転手 約束は海を越えて』…

お父さんは心配性?? 『殺人者の記憶法』(原作 キム・ヨンハ 著 吉川 凪 翻訳/映画 ウォン・シニョン監督)

俺が最後に人を殺したのはもう二十五年前、いや二十六年前だったか、とにかくその頃だ。それまで俺を突き動かしていた力は、世間の人たちが考えているような殺人衝動や変態性欲などではない。もの足りなさだ。もっと完璧な快感があるはずだという希望。 いや…

陣治役が阿部サダヲってどうだろう?? 『彼女がその名を知らない鳥たち』(沼田まほかる 原作/白石和彌 監督)

年末に原作を読み、どうしても ↑ の疑問がわいてきたので、年明けも公開しているところを探したら、塚口サンサン劇場で期間限定上映をしていたので行ってきました。 塚口サンサン劇場に行くのははじめてでしたが、ミニシアターといっても、十三の第七藝術劇…

大人になるってむずかしい① 映画『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』(大根仁監督)

前にもここで書いた『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』の映画を見に行きました。 tamioboy-kuruwasegirl.jp まあ、話は原作とほとんど同じなのだけど……というか、原作と同じというより、そのまんま題名通りの話。なので、ネタバレ…

空飛ぶ少女のゆくえ――『メアリと魔女の花』(メアリ―・スチュアート著 越前敏弥訳)

ナウシカ、ラピュタ、トトロで自分の中のジブリ映画が止まってしまっているし(紅の豚も魔女の宅急便も見たはずだけど、あまり覚えていない)、『君の名は』など最近のアニメも見ていないため、、ジブリやアニメについて語る資格はないのですが、この『メア…

黒人社会の厳しい現実と甘いラブ・ストーリーの融合 映画『ムーンライト』

アカデミー賞で話題になった映画『ムーンライト』を見てきました。 moonlight-movie.jp トランプ政権への映画界からのアンチテーゼとも評されたように、黒人社会の厳しい現実を描いた映画……と思っていたら、それはたしかにそうなんだけど、それ以上に、まぎ…

女と女は化かしあい? それとも――『荊の城』(サラ・ウォーターズ 中村有希訳)/ 映画『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)

モードは何よりも華奢だった。母ちゃんとは違う。母ちゃんとは全然違う。子供のようだ。まだ少し震えているモードがまばたきすると、睫毛が羽のようにあたしの咽喉をなでる。しばらくすると、震えは止まり、もう一度、睫毛が咽喉をこすって、静かになった。…

40代の自分探し 映画『ヤング・アダルト・ニューヨーク』

さて、『フランシス・ハ』に続いてのバームバック監督作品、ベン・スティラーとナオミ・ワッツ主演と聞いて楽しみにしていた『ヤング・アダルト・ニューヨーク』を見てきました。 ベン・スティラー演じるジョシュは44歳のドキュメンタリー映画監督であるが、…

不条理な男の不合理な殺人 ウディ・アレン最新作『教授のおかしな妄想殺人』

先週の水曜はひさびさに映画館に行き、『教授のおかしな妄想殺人』を見てきました。そう、前に書いたキャロライン・ケプネスの『YOU』でも、文科系男女の必須アイテムとして扱われていた、ウディ・アレン監督の新作映画です。 ちなみに、ここ最近のウディ・…

年末年始は 『DENKI GROOVE THE MOVIE?』を見て過ごしました

年も明けたのに、まだ去年の話ですが、29日に仕事納めたあと、電気グルーヴのドキュメンタリー『DENKI GROOVE THE MOVIE?』を見てきました。 感想としては、見たひとみんな思ったことでしょうが、仲いいなーと。大根仁監督がパンフレットで、「真逆の仕事の…

どうしようもない日常を生きるには 映画「恋人たち」

祝日の23日は水曜だったので、映画「恋人たち」を見てきました。 橋口亮輔監督の作品は、「ぐるりのこと」も気になりつつまだ見ていないので、今回がはじめてです。 ストーリーは、妻を通り魔に殺された男、雅子さまファンで、夫と姑と共に郊外で暮らす主婦…

ストレートに “友情・努力・勝利” を描いた映画 大根仁監督『バクマン。』

さて、話題の『バクマン。』を見てきました。 ご存知の方も多いでしょうが、佐藤健と神木隆之介演じる高校生二人が、プロの漫画家となって、あの「少年ジャンプ」で連載を持ち(ちなみに、この二人はどちらも絵を描く藤子不二雄スタイルではなく、原作と作画…

角田光代原作の『紙の月』を見た

紙の月 DVD スタンダード・エディション 出版社/メーカー: ポニーキャニオン 発売日: 2015/05/20 メディア: DVD この商品を含むブログ (5件) を見る 紙の月 (ハルキ文庫) 作者: 角田光代 出版社/メーカー: 角川春樹事務所 発売日: 2014/09/13 メディア: 文庫…

園子温監督の『ラブ&ピース』の試写会に行きました

試写会に当ったので、園子温監督の『ラブ&ピース』を見に行ってきました。 多くの人と同じく、私も『冷たい熱帯魚』で、はじめて園子温作品を見て衝撃を受け そこから『恋の罪』『地獄でなぜ悪い』や『紀子の食卓』を見たりしているのですが、 今回の作品は…

女たちの戦い、そして連帯を描いた映画 『私の少女』 『サンドラの週末』

昨日は有休をとり、レディースデイだったので、映画を二本見た。 『私の少女』は、韓国の海に面した田舎町の警察所長として派遣されてきた女性が、祖母と父親に虐待されているらしい少女の面倒をみることになり……というストーリーで、その所長を演じるのがぺ…

文科系女子のイタさを直視した『映画系女子がゆく!』 真魚八重子

今週のお題「最近おもしろかった本」ということで、 映画系女子がゆく! 作者: 真魚八重子 出版社/メーカー: 青弓社 発売日: 2014/11/16 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る NHK朝ドラの「まれ」で、大泉洋が甲斐性のないダメ父親の役を…