快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

なぜか女子大生とコラボレートしている 『ケチャップ・シンドローム』 アナベル・ピッチャー

 前々回紹介した、BOOKMARK、第二号の本と映画特集(映画化された本)のラインナップを見ると、『ぼくと1ルピーの神様』(『スラムドッグ・ミリオネア』)や、『トレインスポッティング』『悪童日記』『ザ・ロード』など、めちゃめちゃ豪華な作品が特集されるようで楽しみ。

 ところで私は、前の二作品については映画は見たものの、本では読んでおらず、後の二作品についてはその逆なのだけれど、『悪童日記』の映画って、いったいどんな感じになってるのだろうか。 というか、『悪童日記』読んだのは、高校生くらいのときだったような気がするので、正直、話ももうおぼろげですが……再読しないと。 

 BOOKMARKの次号の詳細については、第一号にも寄稿されている翻訳家の越前先生のサイトで知ったのですが、そのサイトのツイートで、以前紹介した『Ketchup Clouds』が邦訳されたというのを知り、

dokusho-note.hatenablog.com


 しかも昭和女子大とのコラボレート作品で、解説のかわりに女子大生の座談会が掲載されているとのことで、なんじゃそりゃ???と思って、買ってしまった。(まさに思うつぼなのかもしれんが) 

ケチャップ・シンドローム (ハヤカワ・ミステリ文庫 マ 13-1 my perfume)

ケチャップ・シンドローム (ハヤカワ・ミステリ文庫 マ 13-1 my perfume)

 

  で、さっそく座談会を読んでみたところ、やはり謎でした……いや、べつに座談会の内容が謎ではないのだけれど、意図がよくわからないというか。。ただ、私がこの小説を最初に読んだときは、感想でも書いたように「けんかをやめて~♪」が頭に浮かんだが、女子大生はだれも言及してなくて、世代の差を感じた。
    女子大生の感想より、翻訳家の吉澤さんがあとがきで書かれていた、「イギリスのティーンエージャーが開放的で大人っぽいことに驚いた」の方に激しく同意でした。


  邦訳版をざっと読んでみた感想としては、手紙形式だからか、全編「です・ます調」なのが、ちょっとくどいかなとも思った。死刑囚ハリスに呼びかけながら、近況報告をする手紙の冒頭のところは、語りかけるような「です・ます調」でいいと思うけれど、事件の顛末を語るところは、「~した」で終わるミステリー口調(そんなにミステリーじゃないけど)にしてもいいように感じた。

 でも、それは私が、翻訳小説や翻訳ミステリーの文体に慣れているからそう思うのであって、ふだんそういった本を読まない若い人たちは、この方が読みやすいのかな?
 あと、もとのタイトルは『ケチャップ色の雲』なのが、『ケチャップ・シンドローム』に変わっているけれど、なんで“シンドローム”になったのかも気になった。

 しかし、あらためて読んでも、妹のドットはたいへんかわいらしく、ほほえましい気持ちになった。最後のママの告白にも通じるものがあるが、このミステリーのテーマは「罪悪感」、「罪悪感を抱えて生きること」なんだろう。けどまあ、この主人公は、テーマどおり、すぐに「自分を許し」て、さっさと新しい彼氏とか作りそうな気もする。

 結局、どういった経緯で、女子大生と小説レーベルをコラボレートしたのかは謎なままでしたが、第二弾以降、どういう小説が発表されるのか、今後も注目していきたいと思いました。