春の夜はなんだか怖い? BOOKMARK 7号と『真昼なのに昏い部屋』(江國香織)
さて、今回のBOOKMARKは「眠れない夜へ、ようこそ」。ホラー特集。といっても、ホラーというと四谷怪談くらいしか思いつかなかったので、いったいどんな本が取り上げられるのか想像つかなかったが、ホラー仕立てのミステリーなどおもしろそうな作品がいっぱい紹介されていた。
まずはおなじみシーラッハの『犯罪』。たしかにこの短編集を読んだときの不条理感というか、突き放される感じは強烈だった。いまのところ、私の中では、やはりシーラッハはこの『犯罪』と『罪悪』が一番かも。
『高慢と偏見とゾンビ』は、『高慢と偏見、そして殺人』の読書会に参加したときに、あわせてちょっと読んでみたけれど、換骨奪胎とはまさにこのことかと、ほんと感心するくらいうまいこと原作にゾンビが紛れこんでいて、怖いというより笑えた記憶がある。しかし、向こうの人ってほんとゾンビ好きだな。
- 作者: ジェイン・オースティン,セス・グレアム=スミス,安原和見
- 出版社/メーカー: 二見書房
- 発売日: 2010/01/20
- メディア: ペーパーバック
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あと『ずっとお城で暮らしてる』や『くじ』を以前に読んだシャーリイ・ジャクスンの『丘の屋敷』と『鳥の巣』も紹介されていた。先の二作は、設定が奇抜過ぎるせいか、身に迫って怖いとは思わなかったが、ここの二作は「地味で内気」に生きている大人の女性が主人公のようなので、共感できるかも、、、
ほかもどれも読んでみたい作品ばかりだけど、『バイバイ、サマータイム』はヤングアダルトで、一見ホラーとはまったく思えないので、とくに気になった。内向的な少年ダニエルが、離婚にやさぐれた父親とリゾート地で過ごす休暇中に(楽しくなさそうだ)、不思議な少女と出会い……という話らしい。どうやら、この少女が現実の人間ではないという話のようだけど、「会うたびに、身体の傷が増えている」って、生きた人間でも(というか、生きていたらなおさら)絶対近づいたらあかんやつやから!
ちなみに、最近読んでぞわっとしたのは、江國香織の『真昼なのに昏い部屋』。
まあ、一言でいうと、真面目で貞淑な主婦だった美弥子さんが、近所に住むアメリカ人のジョーンズさんと不倫する話なのですが。正直、ふたりがいつも一緒にいるので、当然ながら近所で噂になっても、「やましいことなんてなにもないのに、どうして?」と無邪気に言う美弥子さんがカマトト女のようで、途中ちょっとイライラしたが、最後の怒涛の展開に溜飲が下がるというか、下がり過ぎてこわかった。奥泉光が解説しているように、「です」「ます」と語る、三人称多元の語り口がいっそう不気味な印象を与える。
しかし、ジョーンズさん、悪い男やなー。私の思う「おまえが一番悪者なんちゃうか」リストには、『ノルウェイの森』のワタナベくんや、アガサ・クリスティーの『春にして君を離れ』の夫などが入っているのですが、ジョーンズさんも見事ランクインしそうだ。そうそう、『春にして君を離れ』も、今回のBOOKMARKに載ってもいいような話ですね。
で、BOOKMARKを置いといたら、うちのBOOKではないMarkが上に乗ってきました、、、