快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

ブッカー賞について私の知っている、ニ、三の事柄

 さて、今年度のブッカー賞が発表されました。アメリカ人作家ポール・ビーティーの『The Sellout』 で、初のアメリカ人作家が受賞とのことで話題になりました。まあ、少し前まではイギリス・アイルランド作家のみが対象だったようなのですが。(しかし、クッツェーマーガレット・アトウッドはイギリス作家に入るの?よくわからない。かつての大英帝国圏内ならいいのだろうか)

www.afpbb.com

 いや、世界文学について詳しいわけでもなんでもないのですが、ブッカー賞受賞作は、私が読んだ数少ないものでも、カズオ・イシグロ日の名残り』、J・M・クッツェー『恥辱』、ジュリアン・バーンズ『終わりの感覚』……と、どれも決して難解でなくおもしろく読めて、けれど余韻を残すといったハズレなしの名作揃いというイメージがあるので、今年の作品もどんなのか楽しみです。


 で、先日東京に行ったとき、紀伊國屋新宿南店(洋書専門)フロアで、ブッカー賞についての公式ガイドブックがフリーペーパーとして置いてあったので、一冊もらってきた。で、読んでみると、小ネタ満載でなかなか興味深かった。


 1986年のキングズリー・エイミスはミソジニストとして有名だったので(そうなの?)、5人の審査員中4人が女性だというのに受賞に決まったときは、世間をおどろかせたらしい。しかもこの年の対抗馬は、フェミニズム文学の代表のように言われるマーガレット・アトウッドの『侍女の物語』なのに。ちなみにキングズリー・エイミスはこの賞金で、新しいカーテンを買うと語ったようだ。

 賞金をなにに使うかというのは、定番の質問らしく、1998年に『アムステルダム』で受賞したイアン・マキューアンは、バスの運賃や床のリノリウムなどではなく、まったく役に立たないもの "somotheing perfectly useless"に使うと語っている。結局なにに使ったのだろうか。アムステルダム』は、読んだときにはなかなかおもしろかったという記憶はあるのだが、いまとなっては詳細がすっかり頭から抜け落ちているので、再読します……
 2003年のD・B・C・ピエールは、三大陸で十年にわたって友人たちから金を借りてトンズラしているので、小切手はそのまま友人たちのもとに送られるとのこと。しかし、このD・B・C・ピエールってはじめて知りましたが、都甲幸治さんが翻訳してるし、かなりおもしろそうですね。 

アムステルダム (新潮文庫)

アムステルダム (新潮文庫)

 

 

ヴァーノン・ゴッド・リトル―死をめぐる21世紀の喜劇

ヴァーノン・ゴッド・リトル―死をめぐる21世紀の喜劇

 

  あと、1992年にマイケル・オンダーチェの『イギリス人の患者』とバリー・アンズワーズの『Sacred Hunger』のW受賞となったときは、かなり炎上したらしく、以降、絶対に!!一作に決めるというルールができたらしい。べつに二作受賞があってもいいように思うが。
 あと、25周年である1993年と、40周年である2008年には、ブッカー賞のなかのブッカー賞を選んでいるが、どちらもサルマン・ラシュディの『真夜中の子供たち』である。えらくブッカー賞に愛されているようだ。


 ブッカー賞にはインターナショナル部門もあって、英語以外の言葉で書かれて英訳された小説が対象で、今年は韓国の女性作家韓江(ハン・ガン)の『菜食主義者』が選ばれたのがすごい。しかもノーベル賞作家オルハン・パムクなどをおさえて。パク・ミンギュの『カステラ』など、韓国小説もいま注目されているので、これも翻訳を出してほしい。

japanese.joins.com


 で、上で述べた冊子には韓江のみならず、翻訳者デボラ・スミスも紹介されており、それによると、彼女は21歳まで外国語ができなかったが、英文学を修めたあと翻訳者になろうと思いたって、英語への翻訳者が少ない韓国に行くことを決意したらしい。そしていまは、アジアとアフリカの小説の翻訳のための出版社も設立したとか。行動力にただただ感心。


 そして、紀伊國屋新宿南店で、せっかくだからなにか読もうと思って、今年のショートリストに選ばれていたOttessa Moshfegh(そもそもなんて読むのだ?? オッテサ?)の『Eileen』を買ってみた。 

Eileen: A Novel

Eileen: A Novel

 

  少年刑務所での仕事とアルコール依存症父親の面倒に明け暮れる24歳の女性の物語というので、なんだかおもしろそうに思えた。読んだらまた感想書かないと……でも読むべき本が大量に積まれているのでいつになることやら。。