快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

『星の王子さま』(『ちいさな王子』)の故郷から、「世界は愛を求めてる」まで

 テレビの話が続きますが、土曜日にNHKの「SONGS」で、ユーミンサン=テグジュペリの故郷であるリヨンを訪れるというのをやっていて、ちょうど『星の王子さま』をあらためて読んでいたので見てみました。

 ところで、『星の王子さま』については、長年にわたり内藤濯の名訳で親しまれていたが、版権が切れたのにともない、倉橋由美子池澤夏樹、河野万里子、野崎歓……といったそうそうたる面々が新訳を出した、という情報はぼんやりと知っていたが、調べてみると、管啓次郎訳・西原理恵子絵のものがあったり、はては辛酸なめ子が訳も絵も担当しているものがあったりと、かなりの入り乱れぶりでおどろいた。

 西原理恵子の描く王子さまはこんな感じですが、 

  たしかに「こんな星の王子さまは見たことがない」のは事実。管啓次郎さんはエイミー・ベンダーの翻訳もよかったので、どんな星の王子さまになっているのか読んでみたい。

 さっき、「あらためて」読んでいると書いたけれど、“大人=汚れた心の持ち主、子供=ピュアな心の持主”といった子供礼賛主義(?)には、子供の頃から違和感を感じていたので、いかにもピュアな子供向きといった話は苦手なのですが、今回読んだ野崎歓訳のものは、あとがきで訳者が「おとぎ話調、童話調は採用しない」ときっぱりと書き、(なので、タイトルの『星の王子さま』ではなく、原文通りの『ちいさな王子』である)、「この作品は、結局は従来のおとぎ話調と一線を画したところに成り立っている」と言っているように、大人向けの淡々とした語り口だったので、非常に読みやすかった。 

ちいさな王子 光文社古典新訳文庫

ちいさな王子 光文社古典新訳文庫

 

  実際この本は、もちろん子供でも楽しめるけれど、すべて子供に理解できるわけではないと思う。とくに、王子さまとバラとのこじれた関係について

ちいさな王子は、本気で花のことが好きだったのに、たちまち相手を疑うようになってしまった。なんでもない言葉を真にうけたりして、とてもふしあわせになってしまったんだ。 

「ぼく、逃げ出したりしちゃいけなかったんだよ!……でもぼくはまだちいさすぎて、どうやってお花を愛したらいいかわからなかったんだ」 

  このあたりなんかは、子供にはわからないのではないでしょうか。私も王子さまの気持ちは理解できるけれど、「どうやってお花を愛したらいいか」はいまだにわかりません。

 そして、最後のところでは、やはり無性に悲しくなる。辛酸なめ子のものを読んでみても、やはり切ない気持ちになった。


 ところで、番組の話に戻ると、ユーミンはリヨンの次には、長崎の奈留島を訪れていたのですが、荒井由実の「瞳を閉じて」が奈留島のために作られた曲だとはじめて知った。

霧が晴れたら 小高い丘に立とう
名もない島が 見えるかもしれない
小さな子供にたずねられたら
海の碧さをもう一度伝えるために 

  その前のリヨンの光景と重なって、五島の美しい島と海を、星の王子さまのような子供と眺めているような歌に聞こえてきました。


 で、テレビの話を続けると、月曜には「カバーズ」で野宮真貴が出ていて、ユーミンの「中央フリーウェイ」をカバーしていたけれど、野宮さんの話によると、「中央フリーウェイ」はもともとムッシュかまやつのために作ったらしいとのことで仰天した。
 ムッシュが「♪街の灯が~やがて輝きだす~」と歌う姿……まあ、想像できなくはないけど、かなりイメージ変わりますね。

 けど、野宮さんの歌は、ユーミン松田聖子などのカバーも良かったけど、バート・バカラックの曲 “What The World Needs Now Is Love” に、小西康陽の訳詞を載せたものが一番素敵だった。小西さんの詞を歌う野宮さんの声には、やはりまだ特別な魔法がかかっているように感じました……って、かなり話が転がってしまいましたが。