快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

ハズレなしの「いま最強の」翻訳本が紹介されています BOOKMARK

  先日ようやく、BOOKMARKを手に入れることができました。

   BOOKMARKとは、ヤングアダルトの翻訳の第一人者である金原瑞人さんが、翻訳・書評家である三辺律子さんとともに個人で創刊した、ぜひ読んでもらいたい翻訳本を紹介している小冊子です。 こちらが公式ページ。

金原瑞人オフィシャルホームページ BOOKMARK

 オザワミカさんのイラストもめちゃかわいらしい。(自己紹介欄を見たところ、江口寿史の画集『KING OF POP』のパッケージデザインのお手伝いもされてるとか)


 公式ページの配布場所を見てもおわかりのように、関西は置いている書店少ないな~と残念に思っていたのですが、なんとかおこぼれにあずかり、次号からは紀伊國屋グランフロントでも配布予定と聞いて一安心しました。

 そもそも、ヤングアダルトってなに? っていうと、私も正式な定義を知っているわけではないですが、おもに中高生を読者ターゲットにした本であり、思春期から二十歳前後の頃を描いた小説が多いと認識していれば、だいたい問題ないかと思います。(もうそんな人はいないかと思いますが、アダルトという響きに惑わされないように)

 日本なら、かつてのコバルト文庫、いまならラノベが近いのかもしれないが、アメリカのヤングアダルトは、日本のそれらよりもっと幅広く支持されていて、山崎まどか長谷川町蔵のお二人の共著『ヤングアダルトUSA』によると、大人にもかなりのファンがいるとのこと。
 この本によると、ヤングアダルトの起点は、サリンジャーの『ライ麦畑でつかまえて』と、ジュディ・ブルームの『神さま、わたしマーガレットです』があげられていて、ジュディ・ブルームは読んでいないけれど、サリンジャーの方は納得できる。あ、日本なら、森見登美彦の『夜は短し歩けよ乙女』とか恩田陸の『夜のピクニック』とかも、ヤングアダルトの人気作と言えるかもしれないですね。

 で、このBOOKMARKには、「いま最強の17冊」が、訳者のコメントとともに紹介されている。なんといっても、ヤングアダルトの目利きの人たちが選んでコメントをつけているのだから、どれも外れなしであることはまちがいないので、ぜんぶ読みつくしてしまいたくなる。そして、先に書いたように、もともとは中高生がターゲットの本が多いため、非常に読みやすく、翻訳本に慣れていない人でも、すらすら読み終えることができるので、翻訳本を読みはじめたいという人に、ほんとうにおすすめできます。
 
 私がまえに読んだことがある、スティーヴ・ハミルトン(越前敏弥訳)の『解錠師』と、フランシスコ・X・ストーク(千葉茂樹訳)の『マルセロ・イン・ザ・リアルワールド』は、どちらも主人公の少年は口がきけなかったり、あるいは発達障害だったりと、トラウマやハンディキャップを背負っており、それゆえにしばしば辛い思いをしたり、痛い目に遭いながらも成長していく物語であり、単純で前向きな主人公とか、熱血や根性の要素が強い「青春小説」が苦手な人にこそ読んでほしい青春小説だ。 

解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

解錠師 (ハヤカワ・ミステリ文庫)

 

  

マルセロ・イン・ザ・リアルワールド (STAMP BOOKS)

マルセロ・イン・ザ・リアルワールド (STAMP BOOKS)

 

  あと、「生活保護で暮らす、無責任で身勝手な、情緒不安定で全身タトゥーだらけの未婚の母と、父親の違う二人の娘の物語」という『タトゥーママ』もおもしろそうで、ぜひ読みたくなった。アリス・マンローの翻訳で有名な小竹由美子さんが翻訳しているのも興味深い。
 
 また、おもしろいという評判は以前から聞いているものの、日系人を主人公にした、人種差別や貧困とのたたかいを扱った物語と聞いて、ちょっと重そうだな……と敬遠していた『きらきら』(シンシア・カドハタ 代田亜香子訳)もやはり必読本だな、とあらためて思いました。
 
 ほかには、自分の部屋にアフリカの難民一家が押し寄せてきて、それだけでも正直大迷惑なのに、しかもワケありの一家のようで、もしかして本当の家族ではないのでは?という疑念すら抱くサスペンス『闇のダイヤモンド』(キャロライン・B・クーニー 武富博子訳)もかなり読んでみたくなった。


 そして現在は、第二号「本に感動、映画に感激」も着々と準備されているようで、タイトルから考えると、映画化された本の特集なのかな? またまた楽しみです。