快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

海外文学で世界一周できるかな? 『SPUR』 2016年1月号

 今月号のSPUR買いました。UAムラジュンの子供、村上虹郎くん、もう18歳か……って、いや、ぱっと開いて目についたのはそれですが、もちろん「海外文学で、世界一周」の企画を読みたくて買いました。 

コンパクト版SPUR2016年1月号 (SPUR増刊)

コンパクト版SPUR2016年1月号 (SPUR増刊)

 

   見てみると、アメリカはスティーヴ・エリクソン『きみを夢みて』が取りあげられ、ペルーはノーベル文学賞作家マリオ・バルガス=リョサ『悪い娘の悪戯』だったりと、なかなかコアなラインナップ。
 このなかで、読みやすい(つまり、私でも読んでいる)ものをあげると、オーストラリアのケイト・モートン『秘密』や、韓国のパク・ミョンギュの『カステラ』でしょうか。
 ケイト・モートンの世界観は、うまく言うのが難しいですが、個人的には、ヘテロセクシャルな価値観や家族大好きっぽい感じが強く感じられて、好きかどうかと言われると微妙なのですが、ページターナーであることはまちがいない。
 
 第一回日本翻訳大賞を受賞した『カステラ』は、初期の村上春樹の短編を思わせる文体で、現実から少しだけ遊離したような世界を描きながら(この点も初期の村上春樹の短編っぽい)、現在の韓国の閉塞感(日本にも通じると思うが)をよく反映していて、なかなかおもしろい短編集でした。 

カステラ

カステラ

 

  あと、アフリカでは、何回かここで取りあげた、C・N・アディーチェの『アメリカにいる、きみ』が紹介されています。またトルコでは、オルハン・パムク『無垢の博物館』が紹介され、「偏執が純愛に変わる異色の恋愛小説」と書かれています。たしかに、純愛なのかどうかはなんとも言えないが、異常なまでの偏執的な愛――執着というべきか――を描いており、愛のために主人公が身を滅ぼす悲(喜)劇ぶりにおいては、ナボコフの『カメラ・オブスクーラ』といい勝負だと思います。どちらも大好きな小説です。しかし、パムクはなんとほんとうにこの「博物館」を作ったらしく、ぜひとも一度行ってみたい。 

無垢の博物館 上

無垢の博物館 上

 

   あと、担当編集者が推薦するページでは、カフカからカズオ・イシグロミランダ・ジュライとじゅうぶん人気な定番作品が紹介されていますが、ジェニファー・イーガンの『ならずものがやってくる』も、個人的におすすめしたい作品です。登場人物がつながっている、最近よくある連作短編集なのですが、時間の経過がなかなかぶっ飛んでいて、読んでいて楽しい作品でした。ポップカルチャーの使い方もうまく、音楽が好きな人にもおすすめ。今年文庫になったとのこと。 

ならずものがやってくる (ハヤカワepi文庫)

ならずものがやってくる (ハヤカワepi文庫)

 

  そして締めには、前回に続き沼野先生がまたまた(って、このブログの中だけの話ですが)登場して世界文学について語っています。しかし、おすすめが『カラマーゾフの兄弟』に『百年の孤独』と、(私のような)初心者にはかなり厳しいラインナップだ。


 まあ、世界文学というとなんだか難しそうな気もしますが、とにかく楽しけりゃいいのだ、という思いを強くする今日この頃。なる早でとっとと会社から帰って、せっせと読む時間を捻出するべく頑張ります。。。