快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』 から 『なにもしてない』 まで

 そう、先日『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』を取りあげたとき、

What if Prince Charming had never showed up?
――もし王子さまがあらわれなかったとしたら? 

 と、『Sex and the City』のキャリーの問いかけを引用したにもかかわらず、ほったらかしのままでした。


 なのでとりいそぎ答えを書くと、「王子さまはあらわれません」以上。


 いや、こう書くと身も蓋もないですが、存在しないのだから仕方がない。王子さまはいないし、『ちかえもん』に出てくる “あほぼん” すら世の中にはいません。単なる “あほ” や “ぼん” はいるかもしれんけど。(それにしても『ちかえもん』面白い。最初ネットで絶賛されはじめたときは、サブカル好きとか松尾スズキさんファンの贔屓目も多いのかと疑っていたけれど、録画していたのを見出すと、こりゃ誰が見ても(サブカルファンでなくても)面白いと感心した。 “あほぼん” を演じる小池徹平くんもいい感じ。WaTが解散しても安泰ですね。って、そもそもWaTの解散がダメージなのかどうかも謎ですが)


 で、王子さまがあらわれないなら、どうしたらいいかというと、この『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』の「三十路の心得十箇条」でも書かれているように

その七、愛されるよりも愛すべしマジで
三十過ぎたら恋愛でも仕事でも、相手から先に心を開いて貰えることがどんどん少なくなっていきます。(略)私は自分から開いていく癖(クセでいいんですよクセで)をつけるようにしました。まだまだ完璧とは言えないけれども、でもやるんだよ。恋愛でも仕事でも友情でも、自分から愛を表現していく方がよいかと存じます。その方が、結果的に楽です。

 

 というのは、完璧に正しいと思う。たしか湯山玲子の『四十路越え!』でも、「『すべでは自分から』という心意気」が必要だと書いてあった。 

四十路越え!  (角川文庫)

四十路越え! (角川文庫)

 

 いや、自分発信で動いて、うまくいくかどうかはまったく私もわからないけれど(特に恋愛においては)、黙っていても伝わらないし、思っていることを他人が勝手に察してくれるなんてことは絶対にあり得ないので、ならばダメもとでも、言いたいことはとりあえず言ったほうがトクだと思う。

 まあでも、ジェーン・スーさんにしても湯山さんにしても、複数の仕事をバリバリこなし、交友関係も広そうなコミュニケーションの達人であるのにはまちがいない。

 そう、前から思っていたが、このジャンルの草分けといえる酒井順子の『負け犬の遠吠え』にしても、上野千鶴子の『おひとりさまの老後』にしても、そしてこの『貴様いつまで…』にしても、東京で裕福にひとり暮らしできる収入を手にし、同じようなライフスタイルの友人に囲まれ、結婚はしていなくとも恋愛相手には不足しない「おひとりさま」のことが描かれているけれど、こういう「おひとりさま」ってどれくらい存在するのだろうか? 「おひとりさま」、つまり未婚者の中では少数だと思っているのだが、違うのだろうか。

 実際の「おひとりさま」は、地方で非正規雇用などで働き、当然ひとり暮らしする収入もなく、歳を取るとともに友人も減り、まして恋人なんているわけもなく……という方が多数派なのではないかと思うけれど、これもメディアの幻想なのだろうか? まあ、現実は私みたいな中間層が一番多いのかもしれないが、そんな私の感覚でも、これらの本のライフスタイルには、Sex and The Cityと同じくらい夢物語的に感じる箇所もある。


 そう考えると、若い頃に読んだ笙野頼子の「なにもしてない」を思い出したりもする。 

なにもしてない (講談社文庫)

なにもしてない (講談社文庫)

 

  私小説風の体裁をとるこの小説の主人公は、毎日ひたすらに家にひきこもり(売れるかどうかわからない)小説を書くだけで、世間的には完全に「なにもしてない」存在である。「なにもしてない」身分なので、実家とも断絶する。そんな日々のなかでは、手が湿疹で腫れ上がるということも啓示的な大事件のように思えてくる――という小説で、ほんとうに「なにもしてない」物語なのに、まったく退屈することなく読み通した。就職や結婚といった世間体はもちろん、恋愛や女であることもすべて捨て去ったような主人公の姿に憧れすら感じた。


 いまの若い女子は、「活躍」とか「きらきら」とは無縁に生きる女のロールモデルのようなものを見つけられるのだろうか?  と少し心配に思ったりもする。いや、まあロールモデルなんてあってもなくても、結局は自分の人生しか生きられないので、女たちはたくましくサバイバルしていくのでしょう。