なぜか親子の話から、ダン・ブラウン『ロスト・シンボル』『天使と悪魔』『ORIGIN』(『オリジン』?)にまで思いを馳せた
『母がしんどい』『呪詛抜きダイエット』などを描いている、田房永子さんによる清水アキラ親子についての考察がおもしろかった。(リンク先のLove Piece Clubは18禁サイトかと思うので、念のためご注意を)
「小学生みたい、それか昭和の犬」って、まさにそのとおりだ。
それにしても、『マルコヴィッチの穴』のあのポスターが、マルコヴィッチではなくぜんぶ清水アキラになったなら、、、嫌すぎる。田房さんは
親子の絆 とかを大切に思う価値観の人にとっては、嫌なコラムだと思う。(ていうかそういう人にとっては私の書くもの全部嫌だと思うけど…笑)
とツイートしていたが、ほんといわゆる"親子(もしくは家族)の絆の大切さ"みたいな、安直な常套句は滅んでほしいものです。
ところで、私があの「保釈しません!」という会見で思い出したのは、少しネタバレになるのかもしれないけれど、ダン・ブラウンの『ロスト・シンボル』だった。
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読まれた方にはおわかりかと思いますが、一芸に秀でた親を持つのも、なかなかつらいものなのかもしれない。(ピーター・ソロモンと清水アキラを一緒にするなと言われそうだが)
考えたら、ラングドン教授シリーズの第一作『天使と悪魔』も、
セルン(欧州原子核研究機構)や、キリスト教のコンクラーベや、現代に蘇った秘密結社イルミナティ……などなど、「なにがなんやら」とすっかり頭が混乱したかと思いきや、
殺人者(ハサシン)に何度襲われても、密室に閉じこめられても、挙句の果ては空を飛ぶヘリコプターから飛び降りても絶対死なないラングドン教授に度肝をぬかれたりと、
尋常でないくらい濃密なストーリーが展開されるなか、最初から最後まで貫かれるテーマは、親子とはどういうものなのか? ということだった。
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ヒロインであるヴィットリアと殺されたヴェトラの関係からは、血がつながっていなくても"親子の絆"が成立することもあるのだと示され、後半で明かされるコーラーの親は、いまならば"毒親"と言えるのではないかと考えさせられる。
そして、カメルレンゴの「奇跡的」な "親子の絆"……(それにしても、映画版のカメルレンゴ役を演じていたのが、ユアン・マクレガーでおどろいた。結論としては、トレイン・スポッティングの方が似合っていると思った)
それにしても、この『天使と悪魔』はシリーズ第一作だけあって、そのあとの作品で何度も取りあげられるテーマがすべて詰めこまれている。科学と宗教の対立、狂信的な秘密結社、美術品に隠された暗号、、、そして、10月に出た新作『ORIGIN』(最近の傾向だと、『オリジン』という邦題になるのだろうか)も、まさに科学と宗教をめぐる物語だった。
『ORIGIN』は、ビルバオのグッゲンハイム美術館からはじまる。
この美術館のことはまったく知らなかったのだけど、花や野草で埋めつくされた超大型犬パピーや、鉄でできた巨大グモのママンといった、現代美術の斬新すぎるオブジェが次から次へと出てきて、ものすごーく行きたくなった。日本でいうと、金沢の21世紀美術館みたいな感じだろうか。日本人作家中谷芙二子による『霧の彫刻』も見てみたい。
ここで、ラングドン教授のかつての教え子であり、すっかり時代の寵児となった天才的頭脳の持ち主カーシュが、生命誕生の秘密を解明しようとしたそのとき、事件が勃発する。
しかも、今回のヒロイン(いっそ寅さん風に"マドンナ"というほうがふさわしい気もする)はスペイン皇太子の婚約者なので、スペイン王室をも巻きこんだ大捜索劇へと発展する。
例のごとく、追われる身となったラングドン教授とヒロインが真相を推理するのだが、今回はなんと、カーシュが創った人工知能ウィンストンがラングドン教授の相棒となる。
ウィンストンを呼び出して助言を求めるラングドン教授が、どうしても「ドラえも~ん」と助けを求めるのび太に思えて仕方がなかった。ちょうどしずかちゃん(ヒロイン)もいるし。
また、これまでの作品と同様に、名所旧跡の案内もぬかりない。カサ・ミラって、ほんとうに住んでる人がいるのだとはじめて知りました。そして、スペインなので当然(?)サグラダ・ファミリアでクライマックスを迎える。さっきのビルバオとあわせて旅行に行きたい度がMAXになることはまちがいなし。スペイン王室への無礼もこれでチャラになるはず……
というわけで、今作は、AIにしても「生命のひみつ」にしてもそんなに難解ではなく、また、宗教的でもスピリチュアル的でもないため、先の『天使と悪魔』などに比べると、「なにがなんやら」度は低いと思うので、
これまで苦手だった、実は『ダ・ヴィンチ・コード』も挫折したなんていう方も、また手に取ってみてはいいのではないでしょうか。
といっても、いまはまだ翻訳は出ていませんが、来年の春には出るらしいので、しばしお待ちを。