快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

カート・ヴォネガット(・ジュニア)

「中立・客観的」って可能なのか?『情報生産者になる』(上野千鶴子)から『大学教授のように小説を読む方法』『パームサンデー』まで

すべての問いはわたし自身の問いであり、わたしの問いはあなたの問いではないからです。そして人間には、他人の問いを解くことはついにはできないからです。 なんとなく上野千鶴子の『情報生産者になる』を手に取り――なんとなく、というのは、私は研究者でも…

未来を思い出す――『あなたの人生の物語』(テッド・チャン著 浅倉久志ほか訳)そして『スローターハウス5』

あなたを授かるあの晩、あの夜にまつわるお話は、してあげたいのはやまやまなんだけど、それにふさわしいのはあなたが自分の子を持つ用意ができたときでしょうし、わたしたちはその機会は持たずじまいになるの。 最近、訃報や病気のニュースが多く、生と死に…

灼熱の8月6日に読むべき1冊 『猫のゆりかご』(カート・ヴォネガット・ジュニア 著 伊藤典夫 訳)(with 村上RADIO)

今よりずっと若かったころ、わたしは『世界が終末をむかえた日』と題されることになる本の資料を集めはじめた。それは、事実に基づいた本になるはずだった。 それは、日本の広島に最初の原子爆弾が投下された日、アメリカの重要人物たちがどんなことをしてい…

救いのない人生で見出したものとは? 『タイタンの妖女』(カート・ヴォネガット・ジュニア 著 浅倉久志 訳)

かつてウィンストン・ナイルズ・ラムフォードは、火星から二日の距離にある、星図に出ていない、ある時間等曲率漏斗(クロノ・シンクラスティック・インファンディブラム)のまっただなかへ、自家用宇宙船で飛び込んでしまったのである。彼と行をともにした…

再び、いまヴォネガットが生きていたら…… 『現代作家ガイド カート・ヴォネガット』(伊藤典夫・巽孝之ほか)

あらゆることが政治化されてしまった今日では、例えばオリンピックを廃止しようというのならそれで結構。別に残念だとも思いませんよ。どの道、オリンピックはばかばかしいくらいに政治的で、国家主義的なものですし。みっともない。 やっぱりあのひとの言っ…

AND SO IT GOES――  『人生なんて、そんなものさ カート・ヴォネガットの生涯』(チャールズ・J・シールズ 金原瑞人ほか訳)

カート・ヴォネガットの伝記『人生なんて、そんなものさ カート・ヴォネガットの生涯』を読んだ。 人生なんて、そんなものさ―カート・ヴォネガットの生涯 作者: チャールズ・J.シールズ,Charles J. Shields,金原瑞人,桑原洋子,野沢佳織 出版社/メーカー: 柏…

いま、ヴォネガットが生きていたらー 『国のない男』 (カート・ヴォネガット 金原瑞人訳)

いま、この時代に、ヴォネガットが生きていたらなんと言うだろう? というのは、日本だけでなく、きっとアメリカでも多くの人が感じていることでしょうが、ちょうど『国のない男』を読み返していて、あらためてそう思った。 国のない男 作者: カートヴォネガ…

人生に影響を与えた一冊 『ローズウォーターさん、あなたに神のお恵みを』 カート・ヴォネガット・ジュニア

「ぼくは、この見捨てられたアメリカ人たちを愛していきたい――たとえ彼らが、役立たずで、なんの魅力もなくてもね、それがぼくの芸術ってわけさ」“I’m going to love these discarded Americans, even though they’re useless and unattractive. That is goi…