「ともだちがいない!」 『MONKEY vol. 11』(柴田元幸ほか)
盛りあがってますね。小沢健二くんの『流動体について』。
私ももちろんMステ見ました。去年のツアーは行き損ねたので、はじめて現在進行形の曲を聞いたのですが、ほんといい曲でよかった。いまのルックスについては、春風亭昇太とか泉麻人とかネットでいろいろ言われていますが、なんかこう、年相応の自然体でいいんじゃないでしょうか。
さて、小沢くんの先生でもある柴田元幸さんの(つなげてみた)『MONKEY』買いました。
- 作者: 柴田元幸,チャールズ・ブコウスキー,村上春樹,村田沙耶香,伊藤比呂美,谷川俊太郎,くどうなおこ,松本大洋
- 出版社/メーカー: スイッチパブリッシング
- 発売日: 2017/02/15
- メディア: 雑誌
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今号の特集は「ともだちがいない!」。おもしろそうだなと思ったら、やはり充実の号でした。
最初の谷川俊太郎の書き下ろしの詩からして、さすがだな~と感じる。息するように詩が出てくるのでしょうか。
友だち?欲しいけどめんどくさい
なんか気を遣わなきゃいけないでしょ
ときどきプレゼントも考えなきゃいけないし
手は仰向けになった猫のお腹を撫でている
という「石」という詩が一番気に入りました。ところで詩というと、つい最近まで、最果タヒと最上もががごっちゃになっていたのは、私だけだろうか?
あと、「よくあるたぐいのアダルト・ブックストア」を舞台にした、チャールズ・ブコウスキーの『アダルト・ブックストア店員の一日』もブコウスキーの世界らしく読みごたえがあったが、ブコウスキーの詩もよかった。好きな作家だったらしい、カーソン・マッカラーズについて書いたものなど。やはり詩人なんだな。
今回二編の短編が収録されたエミリー・ミッチェルは、「奇想系」の作家と言えるのだろうが、これまで紹介されてきた奇想系の作家よりは、設定のリアリズム度が高く(この二編を読んだ限りでは)、奇想系の作家をあまり読まない人にとっても、とっつきやすいのではないかと思う。村田紗耶香がエミリー・ミッチェルについて語っていたが、たしかに、せちがらい現実を非現実を織り交ぜて描くさまが似ているのかもしれない。
とくにおもしろかったのは、パジェット・パウエルの『ジョプリンとディケンズ』で、タイトルのとおり、九歳のジャニス・ジョプリンとチャーリー・ディケンズがクラスメートという設定の物語。
「他人の上に乗る夢想にふける」「普通の女の子じゃない」ジャニスと、どえらい美文調で話す、同じく普通じゃないブキミなチャーリー。チャーリーは九歳にしてこんな風に話すのだ。
「容赦なき11月の天候。水がこの地上から引き始めて未だ間もない時代であるかの様に街路には泥は満ち、象の如き蜥蜴といった趣でメガロザウルスがホルボーン・ヒルをとぼとぼ進んでゆくのを見掛けても不思議はあるまい――」
そしてこのクラスの教師ミズ・ターナーは「生物学への夢に挫折した、ひっそり一人でいるのを好む女性」であり、中学校の運動部のコーチからのアプローチに困っている。そしてジャニスとチャーリーがどんなふうに交流を深めるのかというと、、、ほかの作品も読んでみたくなった。
しかしなんといってもおどろいたのは、今号のインタビューテーマは「あの時はあぶなかったなあ」なんですが、柴田さんは英語の本を読むときは声に出して読むことが多いとのこと。
ふむふむ。やはり音読って大事なんだな。私もやってみよう。うん? 京浜東北線で音読していたらって、電車のなかでも音読しているってこと?? 京浜東北線でコンラッドを音読しているとは! 柴田先生でもそれくらい常に英語の勉強しているなら、私なんてお風呂入ってるときも、ゴハン食べているときも音読したって、とうてい追いつかない。
でも、チンケな私は電車のなかは無理だ、、、1メートルばかり離れて立っている奥さんの気持ちはよくわかる。
いや、少々(かなり)おどろきましたが、この号、ほかにも村上春樹のスピーチやアンデルセンの翻訳、岸本佐知子さんのエッセイもおもしろかったし、かなりお買い得の号でした。