『MONKEY vol.13 食の一ダース 考える糧』発売記念 柴田元幸トーク&朗読会@枚方蔦屋書店
10月15日、『MONKEY vol13 食の一ダース 考える糧』発売記念として、枚方の蔦屋書店で行われた、柴田元幸さんのトーク&朗読会に参加しました。
いや、実は枚方は私の地元なのだけど(いまは別のところに住んでいますが)、正直ひらぱー以外な~んにもないのによく来てくれるもんだ…と思いつつ、一瞬実家に寄ってから行って参りました。
まずは、今号のMONKEYの冒頭に掲載されている、リオノーラ・キャリントンの「恋する男」を朗読されました。
ある晩、狭い道を歩いている最中、あたしはメロンを一個盗んだ。
とはじまる掌編で、あとの質疑応答で、「どうして”あたし”、つまり女性の語り手になったのか?」という質問が出ました。
答えとしては、この短い物語では語り手が女という根拠はないが、この短編集全体で女が主人公の話が多いこと、そして作者が女性であることから女の語り手を採用したとのこと。なるほど。
そのあとは、今号のMONKEYについてのトークとなり、柴田さん曰く「食」をテーマにしたものの、ふつうにおいしそうな物語は二編しか集まらなかったと。
たしかに、ブライアン・エヴンソンの短編なんて、
彼女が目ざめると、生肉の雨が野原に降ったあとだった。
なんてはじまる始末。タイトルも「どんな死体でも」と、さすがぶっとんでいる。
けれど、それぞれの物語についている料理の写真がほんとうに綺麗でおいしそうで、いや、実際においしかったらしい。(柴田さんは食べていないそうだけど)
料理の写真をつけるのは、編集会議でスタッフから出たアイデアだったらしく、どんなものになるのやらと思っていたら、期待をはるかに上回るものになったとおっしゃってました。ほんと立ち読みしてでも見てほしい。作られているのは、竹花いち子さんです。
そして、今度こそはおいしそうな話をと、チャールズ・シミックのエッセイ「食べものと幸福について」("On Food and Happiness")を朗読。前の晩の8時から11時までに訳したという、訳したてほやほや。
チャールズ・シミックは、昔『世界は終わらない』を読んだことがあり、おもしろかった記憶がある、、、が、例のごとく内容ははっきり覚えていない。

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おいしい食べものとはとんと縁がないアメリカ人とちがって(アメリカ文学専門の自分が言うのだからまちがいない、と柴田さん)、チャールズ・シミックは、セルビア系移民だけあって、食べものへのこだわりが半端じゃないと。
そのとおり、おいしそうな食べものが次から次へと出てくるエッセイで、聞いていてすっかりおなかが空いてしまった。
セルビアのいんげん豆の煮もの、アドリア海で食べるイカにオリーヴ、ムラサキ貝のリゾット……なかでも、肉のつまったブレクってなんだろう?? と思って、あとで検索したところ、薄い生地と具を重ねて焼いたトルコ発祥のパイらしい。めっちゃおいしそう~~けど、セルビア料理っていったいどこで食べられるのやら。。
で、次号のMONKEYは「絵が大事」とのことで、挿画特集らしい。そういえば、今号のBOOKMARKも「顔が好き!」と装丁特集だったし、"インスタ映え"が求められるこのご時世だけあって?、視覚効果はやはり重要ですね。
そのBOOKMARKでは、柴田さんが訳したポール・オースターの『内面からの報告書』『冬の日誌』が紹介されていました。
「かつての自分の地層に分け入るように丹念に描かれたメモワール」とのことで、 小説ではないのかな? かつての『孤独の発明』みたいな感じだろうか。
『孤独の発明』は、ニューヨーク三部作とのちがいにとまどいながらも、身を削るように親との関係が書かれてあるのに、ひりひりと感動した記憶があるので、読み直さないと。。。

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最後は、さっきも取りあげたブライアン・エヴンソンとジェシー・ボールが共作した、『ヘンリー・キングのさまざまな死』の朗読でした。
タイトルどおり、ありとあらゆるやり方で、ヘンリー・キングが死に至るさまを描いたもの。よくこれだけばかばかしい死に方を思いつくなって感じの、"Uncivilized Books"と銘打ってあるように、不道徳かつ不条理な物語でした。

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質疑応答のとき、「レベッカ・ブラウンとのイベントに行けなくてすごく残念だった」と熱く語っている人がいて、そうそう、私も行きたかった!!と激しく同意したので(心のなかで)、サインを頂くときに、その旨を伝え、次はぜひ関西でもやってほしいと言ってみました。
すると、柴田さんは「あっという間に満席になったので、東京でも行けなかった人がほとんどだったよう」「ここ何年も本を出していないのに、根強いファンがいてうれしいね」と、おっしゃっていました。
レベッカ・ブラウン、まさに「若かった日々」に読んでいたのです。ジェンダーをテーマにした作品にももちろん魅了されたけど、いまは母親の看病の日々を淡々と綴った『家庭の医学』をまた読み直したい気分……実家に帰ったからそう思うのか。

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それにしても、読み直したい本に新しく読みたい本と、どんどんと増える一方。本を読む時間を捻出する方法を、柴田さんに聞くべきだったような気がする(あきれられるかな)。