翻訳本
アンダーズは結婚の申し込みでもするように、熱っぽくマリーナの手を取った。「いいかい、子どもを生む時期をいくらでも好きなだけ先送りできるんだよ。踏ん切りがつくまで、納得できるまで迷っていられるんだよ。四十五歳くらいが限界じゃないか、なんて思…
「祖父が枕もとではじめて読んでくれた本は『少年キム』だ」シドはその本を知っているようなので、説明はしなかった。「そのあとはコンラッドとか、グレアム・グリーンとか、サマセット・モームとか」「『アシェンデン』ね」「そう、十二歳の誕生日には、ル…
カート・ヴォネガットの伝記『人生なんて、そんなものさ カート・ヴォネガットの生涯』を読んだ。 人生なんて、そんなものさ―カート・ヴォネガットの生涯 作者: チャールズ・J.シールズ,Charles J. Shields,金原瑞人,桑原洋子,野沢佳織 出版社/メーカー: 柏…
さて、ブコウスキー・シリーズ、今度は代表作と言っていい『詩人と女たち』を読みました。 詩人と女たち (河出文庫) 作者: チャールズブコウスキー,Charles Bukowski,中川五郎 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 1996/10 メディア: 文庫 クリック: 21回…
BOOKMARKで紹介されていたときから気になっていた、『夜中に犬に起こった奇妙な事件』が、読書会の課題本になったので読んでみた。BOOKMARKが創刊号で「これがお勧め、いま最強の17冊」として紹介していただけに、すごくおもしろく、また、あらゆる面から考…
そういえば、柴田元幸さんというと、いまさらですが、5月22日の朗読会についてもメモしておこう。 翻訳百景のイベントで東京に行った際、次の日に東京大学でスティーヴン・ミルハウザーと柴田さんの朗読会があったので行ってきました。 東大に入るのはまった…
「さて、このいわゆるセリーヌとかいう奴について、お聞かせいただきましょう。本屋がどうとか、おっしゃってましたよね」「ええ、レッドの店に入りびたって、立ち読みしたり……フォークナーとかカーソン・マッカラーズとかのことを問い合わせたりしてるのよ…
親父が毎晩家に帰ってきてから、おふくろを相手にえんえんと仕事の話をし続けたことを思い出した。親父が玄関のドアを開けると同時にいきなり仕事の話は始まり、夕食の最中だろうがなんだろうが、八時に親父が寝室から「電気を消せ」と叫ぶまで続いた。親父…
やっぱり試してしまいました、Kindle Unlimited。 読み放題ってどういうこと?? どれだけ読んでも980円ってどういう仕組み?? これまでのKindle無料本と同じく、いくらタダでも特段に興味ない本が多数をしめているのだろうか……と思いつつ、探してみると、…
いま、この時代に、ヴォネガットが生きていたらなんと言うだろう? というのは、日本だけでなく、きっとアメリカでも多くの人が感じていることでしょうが、ちょうど『国のない男』を読み返していて、あらためてそう思った。 国のない男 作者: カートヴォネガ…
先週の水曜、午後休とったので、映画『ブルックリン』でも見に行こうかなーと思い、10分前くらいにTOHOシネマズ梅田に行ったら、なんともう完売していた。きっと原作を先に読めってことなのかな… ブルックリン (エクス・リブリス) 作者: コルムトビーン,栩木…
今週のお題「わたしの本棚」ということなのでーー 転入生の女の子は深く息を吸いこむと、通路を歩きはじめた。だれもそっちを見ようとしない。パークも見ないようにしたけど、だめだ、列車事故が月蝕かって感じ。目が引付られる。 転入生は、まさにこういう…
100日前――「もう何回も聞かれてウンザリかもしれないけど、でもどうしてアラスカなの?」……「あたしの七歳の時の誕生日プレゼントが、自分で名前を決めていいってことだったわけ。なかなかステキな話でしょ? だからあたしは本当にカッコいいって思える名前…
「だが聞け」コールは言った。「口を開く前にな。わたしが言うことをしっかり頭に入れろ。だれの言いなりにもならないというきみのご託だが、あれはもう終わりだ。これからは新しい考え方をしてもらう。わたしと契約すれば、この先の二十年、きみはここにい…
「ねえ、あたしと友だちにならない?」 あたしは、なんてバカなことを言ったのだろう。 チューリップ・タッチ 作者: アンファイン,Anne Fine,灰島かり 出版社/メーカー: 評論社 発売日: 2004/11 メディア: 単行本 クリック: 2回 この商品を含むブログ (11件)…
十六歳でがんで死ぬより最悪なことはこの世でたったひとつ。がんで死ぬ子どもを持つことだ。 相次ぐ有名人のがん闘病が大きなニュースになり、もし自分や、自分の身近な人が病気になったら……と、だれでも考えてみたりするかと思いますが、この『さよならを待…
さて、先日の『翻訳百景~ファンタジーを徹底的に語ろう~』に引き続き、デイヴィッド・アーモンドの『肩胛骨は翼のなごり』と『火を喰う者たち』を読んでファンタジーとはなんぞや問題について、またまた考えてみました。 肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫…
さて、少し間が空いてしまいましたが、先週末の続き。 神奈川近代文学館での、いとうせいこうと奥泉光の文芸漫談のあとは、一路東京へ。 翻訳者の越前敏弥先生主催の『翻訳百景~ファンタジーを徹底的に語ろう~』@表参道に行ってきました。 金原瑞人さん、…
まずぜんぜん関係ない話なのですが、 いまほぼ日で、イトイヤノという、糸井重里&矢野顕子コンビで作った曲の特集をしていて、「ほんと、このコンビの曲って名曲ぞろいやな~」と、あらためてしみじみ思って、ひさしぶりに「Super Folk Song」を聞こうと思…
でもなんだかんだ言いつつ、チェックするわけです。村上春樹印のものは。 NOVEL 11, BOOK 18 - ノヴェル・イレブン、ブック・エイティーン 作者: ダーグ・ソールスター,村上 春樹 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2015/04/09 メディア: 単行本 この…
先日『テス』を読んだときに、作者の思想、立ち位置と作品の価値の問題について、うっすら考えましたが、昔からずっとその問題がつきまとっているのが、このコンラッド『闇の奥』ではないでしょうか。 闇の奥 (光文社古典新訳文庫) 作者: ジョゼフコンラッド…
さて週末は、前にもここで紹介した『キャロル』の読書会に行ってきました。 訳者の柿沼瑛子先生をはじめ『キャロル』の映画を5回以上見たという方も何人かいらっしゃって、みなさんの愛と熱意があふれる会になりました。 柿沼先生はゲストとして参加してくれ…
前回のハイスミス『見知らぬ乗客』のところで、「ミソジニー」という表現を使ったので、念のため、「ミソジニー」という言葉をGoogle検索してみると、『バクマン。』が取りざたされていておどろいた。 映画はおもしろく見たけれど、原作はかなり偏っているの…
少し前に書いたとおり、ハイスミスの『キャロル』を読み、恋をすることでたくましい大人の女性になる主人公の姿に感銘を受け、こんなことが成り立つのは、社会通念から解放された同性同士の恋愛であることも関係しているのだろうか、と考えた。 そしてもうす…
ニューヨークのブルックリンに住み、ロウワー・イーストサイドの書店で働くジョーのもとに、作家志望の女子学生ベックが、スポルディング・グレイとポーラ・フォックスの本を買いにやって来る。ベックこと「きみ」は、ポーラ・フォックスについてこう語る。 …
さて、アリスというと、どのアリスを思い浮かべるでしょうか? やはり、このオリジナルのものがもっとも有名でしょうか? 不思議の国のアリス (角川文庫) 作者: ルイス・キャロル,河合祥一郎 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング) 発売日:…
ジュディ・バドニッツというと、すごい奇想を描いている作家と思っていたが、この『元気で大きいアメリカの赤ちゃん』を読むと、ただ現実離れした設定を綴っているのではなく、物語の背後にどっしりとシビアな現実が根ざしているのを感じられた。 元気で大き…
今はただキャロルの声が聞きたかった。それ以外に大事なものなど何もない。キャロル以外に大事なものなんて何もない。なぜ一瞬でもそれを忘れていたのだろう。 さて、今年の課題図書の1冊『キャロル』を読みました。 キャロル 作者: パトリシア・ハイスミス …
年明けからワイドショーネタが盛りあがり続ける今日この頃ですが(それにしても、みなさん同様だと思いますが、K氏が何股かけてるのかということより、自称彼女の姿の方が衝撃的だった。キムタクがやってた安堂ロイドってこのことだったの?と思った。いや…
トーマス・マンというとドイツの由緒正しい文豪というイメージで、ゲーテなどと同じカテゴリーに入れていて(年代は全然違うけど)、まったく読んだことがなかったのですが、この『ヴェネツィアに死す』(『ヴェニスに死す』というタイトルが有名ですが)の…