エドワード・ゴーリーの優雅な秘密展ーー『おぞましい二人』 柴田元幸訳
まずぜんぜん関係ない話なのですが、
いまほぼ日で、イトイヤノという、糸井重里&矢野顕子コンビで作った曲の特集をしていて、「ほんと、このコンビの曲って名曲ぞろいやな~」と、あらためてしみじみ思って、ひさしぶりに「Super Folk Song」を聞こうと思ってクリックしたら、糸井さんが歌ってるヴァージョンでおどろいた。(でもよく聞いたら、結構お上手です)
この対談での矢野さん曰く、「言葉に力があるから、メロディーが一筋で出てくる」とのこと。たしかに、メロディーと歌詞がひとつになってすっと耳に入ってくる曲ばかり。ちなみに、このなかで私が一番好きなのは、佐野元春の歌声もなんか新鮮な「自転車でおいで」です。
で、木曜日、午後休をとって行ってきました。
こないだの鴨居玲展に続き、またもや伊丹まで「エドワード・ゴーリーの優雅な秘密展」へ。ほんとうは柴田元幸さんの講演のときに行きたかったけれど、なんかばたばたしていて、展覧会の終了間近になってしまった。(でも講演会のチケット、あっという間になくなったとか)終了間近だからか、平日なのに結構混んでいました。
でも正直、『不幸な子供』とか『華々しき鼻血』とかいままでも読んでいるので、あらためて感銘を受けることもそんなにないかな…と、うっすら思っていたのですが、実際に原画を見ると、やはり夢中になって見入ってしまった。
なにより、原画の大きさも絵本サイズか、それより小さいくらいで、そこに細い線でみっちり描きこんでいるのに感動した。こんなに小さいところに一本一本刻んで……と、たしか以前も同じような感想を抱いたことがある、と思い返したら、ナンシー関のハンコ展を見たときにもこう思ったのでした。
それまでは『不幸な子供』のような、ちょっとおどろおどろしい、陰惨とも言えるイメージが強かったけれど、絵本だけでなく、本の装画やポスターやさまざまな仕事を見てみると、とぼけた表情の動物たちの絵などもたくさんあって、新たな一面を見ることができて楽しかった。
猫大好きだっただけに、猫の絵なんてめちゃめちゃかわいらしいし、あと、バレエも好きだったらしく、バレエの1番から5番までの足のポーズのポスターも素敵だった。
(実は、小さいころバレエを習っていたので、足のポーズなど懐かしかった)
『うろんな客』の「うろん」も、あの大喰らいっぷりが、藤子不二雄マンガで唯一の役立たずキャラ、Qちゃんのようで愛らしい。
しかし、こんな愛らしい絵がいっぱいあるなか、あらためて購入したのは『おぞましい二人』ですが…
- 作者: エドワード・ゴーリー,柴田元幸
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2004/12/21
- メディア: 単行本
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「もう何年も本の中で子供たちを殺してきた」と自ら言うエドワード・ゴーリーが、現実に起きたある悲惨な事件によって心底動揺させられた。その陰惨な出来事が、頭から離れなかった。事件を理解しようとして、ゴーリーは資料を読みあさった。そして、それを物語にせずにはいられなかった。その結果、自作のうちで「どうしても書かずにいられなかった」のはこの本だけだ、と本人も述べている本が出来上がった。
それがこの『おぞましい二人』である。
と、訳者あとがきにあるように、この本は、「ムーアズ殺人事件」という、子供を何人も殺した夫婦による現実の事件をモデルにしている。
救いのない人生を送ってきた二人が出会い、「たがいに似た者同士であることを一目で悟」り、人生ではじめて心が通じあう相手を見つける。まさに運命の相手だ。
しかし、その二人だけの世界で、二人が着手した共同作業は、子供をさらって殺すことだった。
On Sundays they took long walks together, and Harold would bring one of his books.
日曜日には一緒に遠くまで散歩に出かけ、ハロルドは盗んだ本を携えてくるのだった。
ほんとうにおぞましい話だ。原題は Loathsome Coupleで、Loathsomeは、忌まわしい、胸が悪くなる、いやでたまらないという意味である。
いやでたまらないのに、事件を聞いたゴーリー同様に、頭から離れなくなる。
「コーンフレークと糖蜜、カブのサンドイッチ、合成グレープソーダ」はどんな味だったんだろう?