快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

2016-01-01から1年間の記事一覧

奇想とシビアの現実とのぬきさしならない関係 『元気で大きいアメリカの赤ちゃん』 ジュディ・バドニッツ

ジュディ・バドニッツというと、すごい奇想を描いている作家と思っていたが、この『元気で大きいアメリカの赤ちゃん』を読むと、ただ現実離れした設定を綴っているのではなく、物語の背後にどっしりとシビアな現実が根ざしているのを感じられた。 元気で大き…

台湾文学事情 誠品書店にて

さて、台湾は高雄にも行きました。 (写真に知らない人たちが映っていますが、まあ問題ないでしょう…)龍から入って、虎から出るのですが、出る時には虎の牙を握らないといけない。と、後ろにいた、日本人団体客のガイドの説明を盗み聞いて、あわてて自分も…

台湾で『世にも奇妙なマラソン大会』(高野秀行)を読む

ということで、台湾にやってきました。 ちなみに、ネットで日本のニュースを見ると、少し前まではショーンK一色だったように思いますが、昨日は桂文枝の全裸写真が愛人によって流出させられたと知りました。そして今日は、中村ゆうじが大食いの司会を降りる…

『生き延びるための世界文学』(都甲幸治)、そしてトークイベントに行って

さて、先日の日曜は、東京国際文芸フェスティバルのイベントの一環でamu KYOTOで行われた都甲幸治さんと江南亜美子さんのトークイベントに参加してきました。 今回のお話もまたどこかに収録されるかもしれないので、どこまで詳細を書いていいのかわからない…

恋愛によって成長することは可能なのか? 『キャロル』  パトリシア・ハイスミス

今はただキャロルの声が聞きたかった。それ以外に大事なものなど何もない。キャロル以外に大事なものなんて何もない。なぜ一瞬でもそれを忘れていたのだろう。 さて、今年の課題図書の1冊『キャロル』を読みました。 キャロル 作者: パトリシア・ハイスミス …

翻訳小説という新しい愉しみへの誘い 『翻訳百景』  越前敏弥

もしこの世に翻訳小説がなかったら―― 外国の事物や風習、そこで暮らす人々の気持ちをどれだけ理解することができるだろうか? 文化や考え方の違いを理解したり、あるいは、どんなに環境が変わろうとも、人の気持ちはさほど変わらないことを実感することがで…

『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』 から 『なにもしてない』 まで

そう、先日『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』を取りあげたとき、 What if Prince Charming had never showed up?――もし王子さまがあらわれなかったとしたら? と、『Sex and the City』のキャリーの問いかけを引用したにもかかわらず、ほったらかしの…

「ナチュラル・ウーマン」として生き延びるために――『微熱休暇』 松浦理英子

前回の最後に、食べものが出てくる小説では松浦理英子の『微熱休暇』が一番印象深いかもしれないと書いたら、ありありと思い出されてきたので、あらためて読み返してみました。 ナチュラル・ウーマン (河出文庫) 作者: 松浦理英子 出版社/メーカー: 河出書房…

You are what you eat?? ていねいな暮らしオブセッションから 『頭のよくなる食事習慣』

前回に続いて、『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』ですが、「ていねいな暮らしオブセッション」というところにも共感した。 独居未婚の私がていねいに暮らせないのは、仕事が忙しいからではありません。私の性分が、その暮らしを構築するのにまったく向…

まだまだ頑張りたい女たちへ――『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』 ジェーン・スー

それにしても最近のニュースを見ていると、ゲスな男にも上には上がいるもんだな、とつくづく感じてしまいます。 ちょうどいま、ケーブルTVで「Sex and the City」の再放送をしているけれど、主人公キャリーのこのつぶやきに思わず考えこんでしまう。 What if…

ジェイニーを探して――『彼らの目は神を見ていた』 ゾラ・ニール・ハーストン

年明けからワイドショーネタが盛りあがり続ける今日この頃ですが(それにしても、みなさん同様だと思いますが、K氏が何股かけてるのかということより、自称彼女の姿の方が衝撃的だった。キムタクがやってた安堂ロイドってこのことだったの?と思った。いや…

一言でいうと、老いって哀しいね――『ヴェネツィアに死す』 トーマス・マン

トーマス・マンというとドイツの由緒正しい文豪というイメージで、ゲーテなどと同じカテゴリーに入れていて(年代は全然違うけど)、まったく読んだことがなかったのですが、この『ヴェネツィアに死す』(『ヴェニスに死す』というタイトルが有名ですが)の…

生と死のあいだに忍びこむ闖入者との奇妙な邂逅ーー『夜が来ると』 フィオナ・マクファーレン

オーストラリアの海辺でひとり暮らしをしている75歳のルースが、朝の4時に目を覚ますと、そこにはトラがいた。いや、トラそのものを見たわけではない。けれど、やはりトラはいたのだ。「低くざらついた呼吸音に、威嚇するような小さな鋭い吠え声」がたしかに…

匿名の住民たちが恐怖に陥る、街を描いたサイコ・スリラー――『九尾の猫』 エラリイ・クイーン

前回の『十日間の悲劇』で探偵を辞めると固く決心したエラリーだったが、地元ニューヨークで連続殺人事件が発生する。被害者たちには一見なんの共通項もなく、無差別殺人かとニューヨークの住民たちは震撼する。父親のリチャード警視から捜査に協力するよう…

かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう――『大いなる眠り』 レイモンド・チャンドラー

村上春樹は、以前イスラエルのスピーチで、壁と卵という例をあげていたと思うが、やはり壁である組織に楯突くと、どうしても個人は卵にならざるを得ないのだろうか? たとえ世界的大作家でも、大人気アイドルでも。(ちょっと時事ネタですね) やはり組織は…

自分が三人いればいいのに(本読み用と遊び用と仕事用と)ーー 「BRUTUS」でも小説特集

「BRUTUS」でも小説特集やってるな…と気になりつつ、先日「SPUR」の小説特集を買ったとこだしなーとスルーしてたけど、高野秀行さんがこの特集で“辺境小説”を紹介したとブログに書かれたので、あわててジュンク堂に行ってバックナンバーを買ってきた。 BRUTU…

またもライツヴィルの呪われた家に悲劇が降りかかる  『十日間の不思議』 エラリィ・クイーン

探偵として名を馳せ、作家としても活躍するエラリィ・クイーンは、十年前、ナチスに占領される前のパリで知り合った、旧友のハワードとニューヨークで久々に会い、悩みを打ち明けられる。なんでも、最近記憶がなくなることが続いているのだと言う。記憶がな…

変わるもの、変わらないもの―― 『ラオスにいったい何があるというんですか?』 村上春樹

さて、すっかり正月気分も消し飛んだ今日この頃ですが、年末年始は実家ですることもないので、iPhoneで『ラオスにいったい何があるというんですか?』を読んでいました。 ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 作者: 村上春樹 出版社/メーカー:…

年末年始は 『DENKI GROOVE THE MOVIE?』を見て過ごしました

年も明けたのに、まだ去年の話ですが、29日に仕事納めたあと、電気グルーヴのドキュメンタリー『DENKI GROOVE THE MOVIE?』を見てきました。 感想としては、見たひとみんな思ったことでしょうが、仲いいなーと。大根仁監督がパンフレットで、「真逆の仕事の…