快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

2016-01-01から1年間の記事一覧

Kindle Unlimitedでさっそく読んでみた本 文学ムック『たべるのがおそい』

やっぱり試してしまいました、Kindle Unlimited。 読み放題ってどういうこと?? どれだけ読んでも980円ってどういう仕組み?? これまでのKindle無料本と同じく、いくらタダでも特段に興味ない本が多数をしめているのだろうか……と思いつつ、探してみると、…

いま、ヴォネガットが生きていたらー 『国のない男』 (カート・ヴォネガット 金原瑞人訳)

いま、この時代に、ヴォネガットが生きていたらなんと言うだろう? というのは、日本だけでなく、きっとアメリカでも多くの人が感じていることでしょうが、ちょうど『国のない男』を読み返していて、あらためてそう思った。 国のない男 作者: カートヴォネガ…

40代の自分探し 映画『ヤング・アダルト・ニューヨーク』

さて、『フランシス・ハ』に続いてのバームバック監督作品、ベン・スティラーとナオミ・ワッツ主演と聞いて楽しみにしていた『ヤング・アダルト・ニューヨーク』を見てきました。 ベン・スティラー演じるジョシュは44歳のドキュメンタリー映画監督であるが、…

『暮らしの手帖』最新号、そして『断片的なものの社会学』(岸政彦)

なんだかんだ言いながら、「とと姉ちゃん」を見ているので、創刊号の復刊版が付録についた、今月号の『暮らしの手帖』も買ってしまった。 暮しの手帖 4世紀83号 出版社/メーカー: 暮しの手帖社 発売日: 2016/07/25 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る…

愛がつまった罐詰のような一冊 『孤独な夜のココア』 田辺聖子

あの恋は、私の心の中では、愛の罐詰にされていた。しかし、それは、空気の罐詰といっしょで、あけてみても、何も見えず、何の音もしないものかもしれなかった。ただ何かが詰っている。そしてそれは罐詰になっている、ということしか、わからないのだった。 …

王子様なんてぜんぜん必要ないシンデレラ 『靴を売るシンデレラ』(ジョーン・バウアー著 灰島かり訳) 

先週の水曜、午後休とったので、映画『ブルックリン』でも見に行こうかなーと思い、10分前くらいにTOHOシネマズ梅田に行ったら、なんともう完売していた。きっと原作を先に読めってことなのかな… ブルックリン (エクス・リブリス) 作者: コルムトビーン,栩木…

もしかして、この国は沈没しつつある? 『ニッポン沈没』 斎藤美奈子

今月号の筑摩書房のPR誌『ちくま』を読んでいると、斎藤美奈子の「世の中ラボ」が参院選を取りあげていて、 安倍政治はもうたくさん。私も野党側に勝ってほしいと切に願っている。なんだけど、ほんとに勝てるかとなると「今度もダメなんちゃう?」という疑念…

ぶかっこうな女の子のぶかっこうな恋愛 『エレナーとパーク』(レインボー・ローウェル著・三辺律子訳)

今週のお題「わたしの本棚」ということなのでーー 転入生の女の子は深く息を吸いこむと、通路を歩きはじめた。だれもそっちを見ようとしない。パークも見ないようにしたけど、だめだ、列車事故が月蝕かって感じ。目が引付られる。 転入生は、まさにこういう…

いったいどうしたらこの苦しみのラビリンスから抜け出せるのか? 『アラスカを追いかけて』(ジョン・グリーン著 伊達淳訳)

100日前――「もう何回も聞かれてウンザリかもしれないけど、でもどうしてアラスカなの?」……「あたしの七歳の時の誕生日プレゼントが、自分で名前を決めていいってことだったわけ。なかなかステキな話でしょ? だからあたしは本当にカッコいいって思える名前…

『解錠師』とはまた違う世界を切り開いた スティーヴ・ハミルトン『ニック・メイソンの第二の人生』 (越前敏弥訳)

「だが聞け」コールは言った。「口を開く前にな。わたしが言うことをしっかり頭に入れろ。だれの言いなりにもならないというきみのご託だが、あれはもう終わりだ。これからは新しい考え方をしてもらう。わたしと契約すれば、この先の二十年、きみはここにい…

「BOOKMARK」第4号 「えっ、英語圏の本が1冊もない!?」 無事入手しました

今日は5時半くらいに出られたので、「BOOKMARK」第4号をもらいに、まずはグランフロントの紀伊國屋に行きました。しかし、海外文学売場にもレジ付近にも見当たらないので、店員さんに聞いてみると、「ちょうど最後の一冊がなくなったところ」と。なんと。こ…

ケッシテうそをつかないって?? 「毒島ゆり子のせきらら日記」第5話を見ました 

先日最終回を迎えたこのドラマ、話題になっていたので気になっていましたが、関西では数週遅れで放送しているので録画してみました。 前田敦子演じる「恋愛体質」の主人公、毒島ゆり子は、父親の浮気かなんかがトラウマになって、傷つかないよう常に二股をか…

邪悪な子供その1 『チューリップ・タッチ』 (アン・ファイン 灰島かり訳)

「ねえ、あたしと友だちにならない?」 あたしは、なんてバカなことを言ったのだろう。 チューリップ・タッチ 作者: アンファイン,Anne Fine,灰島かり 出版社/メーカー: 評論社 発売日: 2004/11 メディア: 単行本 クリック: 2回 この商品を含むブログ (11件)…

不条理な男の不合理な殺人 ウディ・アレン最新作『教授のおかしな妄想殺人』

先週の水曜はひさびさに映画館に行き、『教授のおかしな妄想殺人』を見てきました。そう、前に書いたキャロライン・ケプネスの『YOU』でも、文科系男女の必須アイテムとして扱われていた、ウディ・アレン監督の新作映画です。 ちなみに、ここ最近のウディ・…

私たちに与えられた短い無限の時間 『さよならを待つふたりのために』 ジョン・グリーン (金原瑞人・竹内茜訳)

十六歳でがんで死ぬより最悪なことはこの世でたったひとつ。がんで死ぬ子どもを持つことだ。 相次ぐ有名人のがん闘病が大きなニュースになり、もし自分や、自分の身近な人が病気になったら……と、だれでも考えてみたりするかと思いますが、この『さよならを待…

ファンタジーと現実の境界線って? デイヴィッド・アーモンド『肩胛骨は翼のなごり』(山田順子訳) 『火を喰うものたち』(金原瑞人訳)

さて、先日の『翻訳百景~ファンタジーを徹底的に語ろう~』に引き続き、デイヴィッド・アーモンドの『肩胛骨は翼のなごり』と『火を喰う者たち』を読んでファンタジーとはなんぞや問題について、またまた考えてみました。 肩胛骨は翼のなごり (創元推理文庫…

ソウル書店めぐり〜絵本カフェ「ピノキオ」、「ハローインディブックス」

さて、台湾、東京に引き続き、今度は韓国に行ってきました。仕事でお世話になっている韓国の方から、「今度ぜひ遊びに来てください」と言われたので、真に受けて、職場の人たちと図々しく押しかけたのでした。 で、先日Dotplaceの記事「アジア本屋紀行」を見…

あなたにとってのファンタジーとは? 『翻訳百景』イベント~『ウィーツィ・バット』(フランチェスカ・リア・ブロック 金原瑞人・小川美紀訳)

さて、少し間が空いてしまいましたが、先週末の続き。 神奈川近代文学館での、いとうせいこうと奥泉光の文芸漫談のあとは、一路東京へ。 翻訳者の越前敏弥先生主催の『翻訳百景~ファンタジーを徹底的に語ろう~』@表参道に行ってきました。 金原瑞人さん、…

いとうせいこう&奥泉光 文芸漫談ー夏目漱石『坑夫』

いままでの人生でもはじめてかと思うくらい、濃密な週末を過ごしました。まず、土曜は羽田空港を降りて、そのまま横浜に直行。ではなく(お昼食べたけど)神奈川近代文学館で、いとうせいこうと奥泉光の文芸漫談を聞いてきました。テーマは夏目漱石の『坑夫…

馬と悪女と去勢ーー『悪女は自殺しない』 ネレ・ノイハウス 酒寄進一訳

またまた別の話題からはじめますが、なんと、前にここで書いた『奥田民生になりたいボーイと出会う男すべて狂わせるガール』が、妻夫木聡&水原希子で映画化されるとのこと。 natalie.mu 監督はなんとというか、やはりというか、大根仁さん。ほかのキャスト…

エドワード・ゴーリーの優雅な秘密展ーー『おぞましい二人』 柴田元幸訳

まずぜんぜん関係ない話なのですが、 いまほぼ日で、イトイヤノという、糸井重里&矢野顕子コンビで作った曲の特集をしていて、「ほんと、このコンビの曲って名曲ぞろいやな~」と、あらためてしみじみ思って、ひさしぶりに「Super Folk Song」を聞こうと思…

ノルウェイの不思議で豊饒な文学の森ーー『Novel 11, Book 18』  ダーグ・ソールスター 村上春樹訳

でもなんだかんだ言いつつ、チェックするわけです。村上春樹印のものは。 NOVEL 11, BOOK 18 - ノヴェル・イレブン、ブック・エイティーン 作者: ダーグ・ソールスター,村上 春樹 出版社/メーカー: 中央公論新社 発売日: 2015/04/09 メディア: 単行本 この…

本の波にひきずりこまれていくー 『読んで、訳して、語り合う。 都甲幸治対談集』など

さて、前から(勝手に)考えている『多崎つくる』問題ですが、都甲幸治さんの対談集『読んで、訳して、語り合う』では、フランス文学者であり、村上春樹の研究本も出している芳川泰久(以下、すべて敬称略)との対談で、シロとクロという女はもとから存在せ…

闇はどこにでもある 『闇の奥』 ジョゼフ・コンラッド

先日『テス』を読んだときに、作者の思想、立ち位置と作品の価値の問題について、うっすら考えましたが、昔からずっとその問題がつきまとっているのが、このコンラッド『闇の奥』ではないでしょうか。 闇の奥 (光文社古典新訳文庫) 作者: ジョゼフコンラッド…

サバービアで生きる女たち――『キャロル』(パトリシア・ハイスミス)@読書会に行ってきました 

さて週末は、前にもここで紹介した『キャロル』の読書会に行ってきました。 訳者の柿沼瑛子先生をはじめ『キャロル』の映画を5回以上見たという方も何人かいらっしゃって、みなさんの愛と熱意があふれる会になりました。 柿沼先生はゲストとして参加してくれ…

「もう遅いねや」 ーー 『テス』 『萎えた腕』 トマス・ハーディ

前回のハイスミス『見知らぬ乗客』のところで、「ミソジニー」という表現を使ったので、念のため、「ミソジニー」という言葉をGoogle検索してみると、『バクマン。』が取りざたされていておどろいた。 映画はおもしろく見たけれど、原作はかなり偏っているの…

ハイスミス印の執着・狂気・破滅に陥る主人公たち 『見知らぬ乗客』 パトリシア・ハイスミス

少し前に書いたとおり、ハイスミスの『キャロル』を読み、恋をすることでたくましい大人の女性になる主人公の姿に感銘を受け、こんなことが成り立つのは、社会通念から解放された同性同士の恋愛であることも関係しているのだろうか、と考えた。 そしてもうす…

この恐怖を他人事に思えますか? 『YOU』  キャロライン・ケプネス

ニューヨークのブルックリンに住み、ロウワー・イーストサイドの書店で働くジョーのもとに、作家志望の女子学生ベックが、スポルディング・グレイとポーラ・フォックスの本を買いにやって来る。ベックこと「きみ」は、ポーラ・フォックスについてこう語る。 …

オトコとオンナの宿題はいつまでたっても山積みのまま? 『降ります―さよならオンナの宿題』 中村和恵

『あさが来た』も、終わってしまいました。けどやはり、最終的には夫婦愛が強調されることを思うと、『カーネーション』はやはり異色作だったんだなと感じる。それにしても、大森美香さんの脚本は『きみはペット』もそうだったけど、働く女性を見守る男を描…

ワンダーでひとりぼっちのアリスとキャロル 『不思議の国のアリス』 ルイス・キャロル

さて、アリスというと、どのアリスを思い浮かべるでしょうか? やはり、このオリジナルのものがもっとも有名でしょうか? 不思議の国のアリス (角川文庫) 作者: ルイス・キャロル,河合祥一郎 出版社/メーカー: 角川書店(角川グループパブリッシング) 発売日:…