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快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

女と女は化かしあい? それとも――『荊の城』(サラ・ウォーターズ 中村有希訳)/ 映画『お嬢さん』(パク・チャヌク監督)

モードは何よりも華奢だった。母ちゃんとは違う。母ちゃんとは全然違う。子供のようだ。まだ少し震えているモードがまばたきすると、睫毛が羽のようにあたしの咽喉をなでる。しばらくすると、震えは止まり、もう一度、睫毛が咽喉をこすって、静かになった。…

”真実をそっくり語れ、だが斜めから語れ” 『誰でもない彼の秘密』(マイケラ・マッコール 小林浩子訳)

わたしはだれでもない人! あなたはだれ?あなたもだれでもない人なの? I’m Nobody! Who are you? という、エミリー・ディキンソンの詩のなかでもっとも有名なこのフレーズからはじまるこの物語。 誰でもない彼の秘密 作者: マイケラ・マッコール 出版社/メ…

国家を股にかけない落ちこぼれスパイの奮闘記 『窓際のスパイ』 (ミック・ヘロン 田村義進訳)

「祖父が枕もとではじめて読んでくれた本は『少年キム』だ」シドはその本を知っているようなので、説明はしなかった。「そのあとはコンラッドとか、グレアム・グリーンとか、サマセット・モームとか」「『アシェンデン』ね」「そう、十二歳の誕生日には、ル…

『解錠師』とはまた違う世界を切り開いた スティーヴ・ハミルトン『ニック・メイソンの第二の人生』 (越前敏弥訳)

「だが聞け」コールは言った。「口を開く前にな。わたしが言うことをしっかり頭に入れろ。だれの言いなりにもならないというきみのご託だが、あれはもう終わりだ。これからは新しい考え方をしてもらう。わたしと契約すれば、この先の二十年、きみはここにい…

ハイスミス印の執着・狂気・破滅に陥る主人公たち 『見知らぬ乗客』 パトリシア・ハイスミス

少し前に書いたとおり、ハイスミスの『キャロル』を読み、恋をすることでたくましい大人の女性になる主人公の姿に感銘を受け、こんなことが成り立つのは、社会通念から解放された同性同士の恋愛であることも関係しているのだろうか、と考えた。 そしてもうす…

この恐怖を他人事に思えますか? 『YOU』  キャロライン・ケプネス

ニューヨークのブルックリンに住み、ロウワー・イーストサイドの書店で働くジョーのもとに、作家志望の女子学生ベックが、スポルディング・グレイとポーラ・フォックスの本を買いにやって来る。ベックこと「きみ」は、ポーラ・フォックスについてこう語る。 …

匿名の住民たちが恐怖に陥る、街を描いたサイコ・スリラー――『九尾の猫』 エラリイ・クイーン

前回の『十日間の悲劇』で探偵を辞めると固く決心したエラリーだったが、地元ニューヨークで連続殺人事件が発生する。被害者たちには一見なんの共通項もなく、無差別殺人かとニューヨークの住民たちは震撼する。父親のリチャード警視から捜査に協力するよう…

かっこいいことはなんてかっこ悪いんだろう――『大いなる眠り』 レイモンド・チャンドラー

村上春樹は、以前イスラエルのスピーチで、壁と卵という例をあげていたと思うが、やはり壁である組織に楯突くと、どうしても個人は卵にならざるを得ないのだろうか? たとえ世界的大作家でも、大人気アイドルでも。(ちょっと時事ネタですね) やはり組織は…

またもライツヴィルの呪われた家に悲劇が降りかかる  『十日間の不思議』 エラリィ・クイーン

探偵として名を馳せ、作家としても活躍するエラリィ・クイーンは、十年前、ナチスに占領される前のパリで知り合った、旧友のハワードとニューヨークで久々に会い、悩みを打ち明けられる。なんでも、最近記憶がなくなることが続いているのだと言う。記憶がな…

奇面組のような変人揃いのクラブを舞台にした悲喜劇 『ミランダ殺し』 マーガレット・ミラー

それにしても、こんな奇妙キテレツな有閑倶楽部があったもんだと、このマーガレット・ミラーの『ミランダ殺し』を読んで思った。 ミランダ殺し (創元推理文庫) 作者: マーガレットミラー,Margaret Millar,柿沼瑛子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 1992…

ほんとうの「悪」とは、「罪」とは何なのか 『深い疵』 ネレ・ノイハウス

先日の『ゲルマニア』でも書きましたが、ドイツミステリの世界に耽溺すべく、前から話題になっていた、ノイハウスの『深い疵』も読みました。 深い疵 (創元推理文庫) 作者: ネレ・ノイハウス,酒寄進一 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2012/06/21 メデ…

ナチスドイツ下の社会を克明に描いたミステリー 『ゲルマニア』 ハラルト・ギルバース

この『ゲルマニア』は、1944年のドイツを舞台にしており――そう、戦争末期のナチスドイツ時代を描いている。 ゲルマニア (集英社文庫) 作者: ハラルトギルバース,Harald Gilbers,酒寄進一 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2015/06/25 メディア: 文庫 この商…

『ゴーン・ガール』の裏(表?)バージョンか 『サンドリーヌ裁判』 トマス・H・クック

トマス・H・クックの本は、『緋色の記憶』などを数点読んだだけで、とくに詳しいわけではないけれど、どの本も読者を最後まであきさせず手堅く読ませる印象が強い。 だいたいどれも、現在の話と過去の回想が交互に語られ、過去に起こった事件の真相があきら…

女子パワーみなぎるぶっ飛んだブックガイド 『読み出したら止まらない! 女子ミステリー マストリード100』 大矢 博子

読み出したら止まらない! 女子ミステリー マストリード100 (日経文芸文庫) 作者: 大矢博子 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社 発売日: 2015/08/08 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (3件) を見る 少し前に出た、杉江松恋さんによる『読み出したら止…

だれにも愛されなかった男の顛末 『心地よい眺め』 ルース・レンデル

心地よい眺め (ハヤカワ・ポケット・ミステリ) 作者: ルースレンデル,茅律子 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2003/08/07 メディア: 新書 クリック: 7回 この商品を含むブログ (5件) を見る だれにも関心を持ってもらえない環境で育った青年テディは、人…

ミネット・ウォルターズが再びシスターフッドを描いた 『悪魔の羽根』

悪魔の羽根 (創元推理文庫) 作者: ミネット・ウォルターズ,成川裕子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2015/05/29 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (6件) を見る お待たせしました、ミネット・ウォルターズの邦訳最新刊『悪魔の羽根』です。 いや、…

Cool Breezeな心優しき探偵、ドン・ウィンズロウ 『ストリート・キッズ』

ストリート・キッズ (創元推理文庫) 作者: ドンウィンズロウ,Don Winslow,東江一紀 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 1993/11 メディア: 文庫 購入: 9人 クリック: 184回 この商品を含むブログ (83件) を見る 前に紹介した『ストーナー』の翻訳者である…

女の幸せって?? その2 『悪意の糸』 マーガレット・ミラー

悪意の糸 (創元推理文庫) 作者: マーガレット・ミラー,宮脇裕子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2014/08/29 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (9件) を見る 前回、「女の幸せ」という観念が、どんどん女性を不幸にしていることについて書いたけれ…

『暗い鏡の中に』 ヘレン・マクロイ

暗い鏡の中に (創元推理文庫) 作者: ヘレン・マクロイ,駒月雅子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2011/06/21 メディア: 文庫 購入: 2人 クリック: 21回 この商品を含むブログ (42件) を見る 私はまったくミステリーに詳しいわけではないので、ミステリ…

『カクテル・ウェイトレス』 ジェームズ・M.ケイン

カクテル・ウェイトレス (新潮文庫) 作者: ジェームズ・M.ケイン,James M. Cain,田口俊樹 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2014/08/28 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (8件) を見る ちなみに、翻訳ミステリー大賞読者賞は、ミュリエル・スパークの『…

『その女アレックス』 ピエール・ルメートル

その女アレックス (文春文庫) 作者: ピエールルメートル,橘明美 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2014/09/02 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (87件) を見る あまりに売れすぎたせいか、翻訳ミステリー大賞・読者賞は逃したものの、去年から今年にか…

『破壊者』 ミネット・ウォルターズ

破壊者 (創元推理文庫) 作者: ミネット・ウォルターズ,成川裕子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2011/12/21 メディア: 文庫 購入: 1人 クリック: 26回 この商品を含むブログ (28件) を見る ウォルターズの旧作の中で、唯一未読だったこちらも読みまし…

『老検死官シリ先生がゆく』 コリン・コッタリル

老検死官シリ先生がゆく (ヴィレッジブックス) 作者: コリンコッタリル,雨沢泰 出版社/メーカー: ヴィレッジブックス 発売日: 2008/08/20 メディア: 文庫 クリック: 5回 この商品を含むブログ (16件) を見る 1976年のラオスを舞台に、72歳になったので医者を…

『災厄の町』 エラリイ・クイーン

災厄の町〔新訳版〕 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: エラリイ・クイーン,越前敏弥 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2014/12/05 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (5件) を見る ハヤカワ文庫から出たエラリイ・クイーン(角川ではエラリーという表記…

マット・ヘイグ『今日から地球人』

今日から地球人 (ハヤカワ・ミステリ文庫) 作者: マットヘイグ,Matt Haig,鈴木恵 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2014/11/21 メディア: 新書 この商品を含むブログ (6件) を見る はるかかなたの遠い宇宙の星から、地球に派遣された高度な知的生命体であ…

ミネット・ウォルターズ『養鶏場の殺人/火口箱』

養鶏場の殺人/火口箱 (創元推理文庫) 作者: ミネット・ウォルターズ,成川裕子 出版社/メーカー: 東京創元社 発売日: 2014/03/12 メディア: 文庫 この商品を含むブログ (13件) を見る ジャンル:翻訳ミステリー 形態:キンドル版もあり 現代英国ミステリーの…