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快適読書生活  

「ぼくたちは何だかすべて忘れてしまうね」――なので日記代わりの本の記録を書いてみることにしました

女が強くなるとき――『ナオミとカナコ』(奥田英朗)

「あなたの親は、とうして離婚しないのですか?」朱美が不思議そうに聞く。「さあ……」直美は首を傾げつつ、「たぶん、母に一人で生きて行く自信がないからだと思います」と答えた。「日本の女の人、みんなやさし過ぎるのことですね。前にも言いましたが、上…

人生も半ばを過ぎて――『いつか春の日のどっかの町へ』(『FOK46』改題)大槻ケンヂ

高野秀行さんがツイッターでオススメしていたので、私もひさびさに大槻ケンヂことオーケンのエッセイを読んでみた。 いつか春の日のどっかの町へ (角川文庫) 作者: 大槻ケンヂ 出版社/メーカー: KADOKAWA / 角川書店 発売日: 2017/02/25 メディア: Kindle版 …

春の夜はなんだか怖い? BOOKMARK 7号と『真昼なのに昏い部屋』(江國香織)

さて、今回のBOOKMARKは「眠れない夜へ、ようこそ」。ホラー特集。といっても、ホラーというと四谷怪談くらいしか思いつかなかったので、いったいどんな本が取り上げられるのか想像つかなかったが、ホラー仕立てのミステリーなどおもしろそうな作品がいっぱ…

神は雑多に宿る――『村上春樹 雑文集』

アマゾンで『騎士団長殺し』を検索したら、いま超話題の『夫の……が入らない』が出てきておどろいた。いや、『騎士団長殺し』を買っている人は、その商品も「ご覧になっている」そうです。 で、ひさしぶりに『雑文集』を読み返してみた。 村上春樹 雑文集 (新…

圧倒的な孤独を描いた短編集 『レキシントンの幽霊』(村上春樹)

さっきロンハー見てたら、ジャルジャルの福徳の部屋にブタの貯金箱が置いてあって、前回の『コドモノセカイ』のエドガル・ケレットの作品を思い出してしまった。 いや、それはともかく、村上春樹の新作『騎士団長殺し』って、最初は冗談かと思った。虚構新聞…

あたらしい年にむけて―― 『女子をこじらせて』(雨宮まみ)

2016年、一番おどろいたことと言えば、雨宮まみさんの訃報だった。 『女子をこじらせて』が単行本で出て、話題になっていたときにさっそく読んでみて、同世代のせいか、ロッキン・オン社の出版物を(真剣に…)読んでいたとか、通ってきたものが共通していて…

あたらしい年に向けて、あたらしい働きかた――『わたしらしく働く!』 (服部みれい)

さて、なんだかんだしているうちに、すっかり年末。『シン・ゴジラ』も『君の名は。』も『この世界の片隅に』も、そして、”逃げ恥”の最終回も録画しているものの、まだ見ておらず、2016年の人気作にまったくついていけませんが、とりあえず今年印象に残った…

結婚にまつわる洞察が綴られる――現代の『高慢と偏見』? 橋本治 『結婚』

橋本治の『結婚』は、28歳の主人公倫子が、同僚の27歳の花蓮に「卵子劣化」の話を切り出すところからはじまる。 結婚 作者: 橋本治 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2014/07/04 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (7件) を見る いや、ここ最近政府があ…

虫料理か…『SWITCHインタビュー達人達 枝元なほみ×高野秀行』~『異国トーキョー漂流記』

週末に東京に行き、そして帰ってきて、録画しておいたNHK『SWITCHインタビュー達人達 枝元なほみ×高野秀行』を見た。すると、時折高野さんのエッセイにも登場するおなじみのミャンマー料理店からはじまり、「しまった!東京で行けばよかった!」と…

「ほんとうのこと」が知りたいだけなのだ 辺境中毒!(高野秀行)

さて、前回紹介した内澤旬子さんといえば、高野秀行さんの『辺境中毒!』で対談しています。 辺境中毒! (集英社文庫) 作者: 高野秀行 出版社/メーカー: 集英社 発売日: 2011/10/20 メディア: 文庫 クリック: 5回 この商品を含むブログ (7件) を見る その対談…

捨て暮らし、そして離島への移住へ 『捨てる女』 『漂うままに島に着き』(内澤旬子)

こんなごみごみしたところで、せかせか暮らすのは止めて、田舎にでも行ってゆっくりしたいな……とふと考える瞬間がある。 いや、まあ誰にでもあると思うのですが、私の場合は、車の運転もできないし、体力も自信がないし、とにかく虫が部屋のなかに入ってくる…

恋愛→セックス→出産のグロテスクさ 『殺人出産』(村田沙耶香)

「私たちの世代がまだ子供のころ、私たちは間違った世界の中で暮らしていましたよね。殺人は悪とされていた。殺意を持つことすら、狂気のように、ヒステリックに扱われていた。昔の私は、自分のことを責めてばかりいました。何度命を絶とうとしたか知れませ…

愛について真面目に考える時間 『あとは死ぬだけ』 (中村うさぎ)

前回『結婚失格』について書いたあと、検索してみたところ、この『結婚失格』発売記念イベントで、町山智浩が枡野浩一に行った公開説教がレポされているエントリを見つけた。 d.hatena.ne.jp 町山さんの一言一言、まさにその通り!とひれ伏したくなるが、と…

成長するってことーー 『結婚失格』(枡野浩一) そしてサニーデイ・サービス『DANCE TO YOU』

私もすこしは大人になったのかなと、あらためて『結婚失格』を読んで感じた。 結婚失格 (講談社文庫) 作者: 枡野浩一 出版社/メーカー: 講談社 発売日: 2010/07/15 メディア: 文庫 購入: 23人 クリック: 767回 この商品を含むブログ (33件) を見る というの…

『暮らしの手帖』最新号、そして『断片的なものの社会学』(岸政彦)

なんだかんだ言いながら、「とと姉ちゃん」を見ているので、創刊号の復刊版が付録についた、今月号の『暮らしの手帖』も買ってしまった。 暮しの手帖 4世紀83号 出版社/メーカー: 暮しの手帖社 発売日: 2016/07/25 メディア: 雑誌 この商品を含むブログを見る…

愛がつまった罐詰のような一冊 『孤独な夜のココア』 田辺聖子

あの恋は、私の心の中では、愛の罐詰にされていた。しかし、それは、空気の罐詰といっしょで、あけてみても、何も見えず、何の音もしないものかもしれなかった。ただ何かが詰っている。そしてそれは罐詰になっている、ということしか、わからないのだった。 …

もしかして、この国は沈没しつつある? 『ニッポン沈没』 斎藤美奈子

今月号の筑摩書房のPR誌『ちくま』を読んでいると、斎藤美奈子の「世の中ラボ」が参院選を取りあげていて、 安倍政治はもうたくさん。私も野党側に勝ってほしいと切に願っている。なんだけど、ほんとに勝てるかとなると「今度もダメなんちゃう?」という疑念…

いとうせいこう&奥泉光 文芸漫談ー夏目漱石『坑夫』

いままでの人生でもはじめてかと思うくらい、濃密な週末を過ごしました。まず、土曜は羽田空港を降りて、そのまま横浜に直行。ではなく(お昼食べたけど)神奈川近代文学館で、いとうせいこうと奥泉光の文芸漫談を聞いてきました。テーマは夏目漱石の『坑夫…

本の波にひきずりこまれていくー 『読んで、訳して、語り合う。 都甲幸治対談集』など

さて、前から(勝手に)考えている『多崎つくる』問題ですが、都甲幸治さんの対談集『読んで、訳して、語り合う』では、フランス文学者であり、村上春樹の研究本も出している芳川泰久(以下、すべて敬称略)との対談で、シロとクロという女はもとから存在せ…

オトコとオンナの宿題はいつまでたっても山積みのまま? 『降ります―さよならオンナの宿題』 中村和恵

『あさが来た』も、終わってしまいました。けどやはり、最終的には夫婦愛が強調されることを思うと、『カーネーション』はやはり異色作だったんだなと感じる。それにしても、大森美香さんの脚本は『きみはペット』もそうだったけど、働く女性を見守る男を描…

『生き延びるための世界文学』(都甲幸治)、そしてトークイベントに行って

さて、先日の日曜は、東京国際文芸フェスティバルのイベントの一環でamu KYOTOで行われた都甲幸治さんと江南亜美子さんのトークイベントに参加してきました。 今回のお話もまたどこかに収録されるかもしれないので、どこまで詳細を書いていいのかわからない…

翻訳小説という新しい愉しみへの誘い 『翻訳百景』  越前敏弥

もしこの世に翻訳小説がなかったら―― 外国の事物や風習、そこで暮らす人々の気持ちをどれだけ理解することができるだろうか? 文化や考え方の違いを理解したり、あるいは、どんなに環境が変わろうとも、人の気持ちはさほど変わらないことを実感することがで…

『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』 から 『なにもしてない』 まで

そう、先日『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』を取りあげたとき、 What if Prince Charming had never showed up?――もし王子さまがあらわれなかったとしたら? と、『Sex and the City』のキャリーの問いかけを引用したにもかかわらず、ほったらかしの…

「ナチュラル・ウーマン」として生き延びるために――『微熱休暇』 松浦理英子

前回の最後に、食べものが出てくる小説では松浦理英子の『微熱休暇』が一番印象深いかもしれないと書いたら、ありありと思い出されてきたので、あらためて読み返してみました。 ナチュラル・ウーマン (河出文庫) 作者: 松浦理英子 出版社/メーカー: 河出書房…

You are what you eat?? ていねいな暮らしオブセッションから 『頭のよくなる食事習慣』

前回に続いて、『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』ですが、「ていねいな暮らしオブセッション」というところにも共感した。 独居未婚の私がていねいに暮らせないのは、仕事が忙しいからではありません。私の性分が、その暮らしを構築するのにまったく向…

まだまだ頑張りたい女たちへ――『貴様いつまで女子でいるつもりだ問題』 ジェーン・スー

それにしても最近のニュースを見ていると、ゲスな男にも上には上がいるもんだな、とつくづく感じてしまいます。 ちょうどいま、ケーブルTVで「Sex and the City」の再放送をしているけれど、主人公キャリーのこのつぶやきに思わず考えこんでしまう。 What if…

変わるもの、変わらないもの―― 『ラオスにいったい何があるというんですか?』 村上春樹

さて、すっかり正月気分も消し飛んだ今日この頃ですが、年末年始は実家ですることもないので、iPhoneで『ラオスにいったい何があるというんですか?』を読んでいました。 ラオスにいったい何があるというんですか? 紀行文集 作者: 村上春樹 出版社/メーカー:…

鴨居玲展「踊り候え」、そして鴨居羊子『女は下着でつくられる』

さて、23日は↓で書いた「恋人たち」を見たあと、梅田から伊丹市立美術館に行き、鴨居玲展「踊り候え」を見てきました。 もともとは、下着デザイナーとしてチュニックを創業した鴨居羊子の『女は下着でつくられる』 女は下着でつくられる (鴨居羊子コレクショ…

辺境とはなにも世界の僻地にかぎらない 『腰痛探検家』など 高野秀行

前回、『恋するソマリア』について書いたけれど、高野さんの本の魅力をまだ伝えきれていないような気がする。 いや、『恋するソマリア』の概要は紹介したつもりだが、高野さんのモットーである、「誰も行かないところへ行き、誰もやらないことをやり、それを…

せつない片思いのゆくえ 『恋するソマリア』 高野秀行

ソマリアって、みなさん、どんなイメージを持っているでしょうか? 内戦が絶えない国? 海賊がうようよしている国? というか、そもそもどこにあるのかわからない? たしかに、私もアフリカの国だとは知っていても、正確な位置については、エジプトと南アフ…

完璧に清潔で安全で心優しきセカイへの戦い 『ハーモニー』 伊藤 計劃

そう、ミアハの言うとおりだ。だからこそ、わたしたちは死ななければならない、と感じていた。命が大事にされすぎているから。互いに互いを思いやりすぎているから。 ハーモニー (ハヤカワ文庫JA) 作者: 伊藤計劃 出版社/メーカー: 早川書房 発売日: 2010/12…

勝手に犯人推理 『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』 村上春樹

下記からは、『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』の内容にふみこんでいるので、“ネタバレ” が嫌なひとはお気をつけください。 色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2013/04/12 メディア: …

『女のいない男たち』 村上春樹 (おまけの感想)

前回の追加というか、『女のいない男たち』を読んで思った、よしなしごとをメモしておきます。まず、この本には村上作品には珍しくまえがきがあり、 長編小説にせよ短編小説集にせよ、自分の作品にまえがきやあとがきをつけるのがあまり好きではなく(偉そう…

男と女は永遠の回り道? 『女のいない男たち』 村上春樹

女のいない男たちになるのはとても簡単なことだ。一人の女性を深く愛し、それから彼女がどこかに去ってしまえばいいのだ。 女のいない男たち 作者: 村上春樹 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2014/04/18 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (104件) …

『身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論』 鈴木 涼美

身体を売ったらサヨウナラ 夜のオネエサンの愛と幸福論 (幻冬舎単行本) 作者: 鈴木涼美 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2014/12/12 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (5件) を見る ちょうど気になっていたら、キンドルの月替わりセールで安くなっ…

人間の感情は一括りにはできないし、他人との関係も一筋縄でいかない――『奇貨』 松浦理英子

なにやら、雑誌elleのオンラインサイトで、二村ヒトシさんが、映画『マッドマックス 怒りのデスロード』で、フュリオサとイモータン・ジョーがかつて恋愛関係にあった説を書いて炎上しているようだ。 たしかに、設定としては、フュリオサはさらわれて、ジョ…

『私のなかの彼女』 角田光代

私のなかの彼女 作者: 角田光代 出版社/メーカー: 新潮社 発売日: 2013/11/29 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (14件) を見る 田舎から上京して、都内で大学生活を送っていた本田和歌は、世の中のバブル景気とは無縁のふつうの生活を送っていたが、恋…

『快適生活研究』 金井美恵子

快適生活研究 (朝日文庫) 作者: 金井美恵子 出版社/メーカー: 朝日新聞出版 発売日: 2010/04/07 メディア: 文庫 クリック: 19回 この商品を含むブログ (15件) を見る 先日『お勝手太平記』を読んだら、やはりこちらの『快適生活研究』を読み返したくなった。…

『毒婦たち 東電OLと木嶋佳苗のあいだ』 上野千鶴子×信田さよ子×北原みのり

毒婦たち: 東電OLと木嶋佳苗のあいだ 作者: 上野千鶴子,信田さよ子,北原みのり 出版社/メーカー: 河出書房新社 発売日: 2013/10/25 メディア: 単行本(ソフトカバー) この商品を含むブログ (6件) を見る 最近、平山亜佐子さんが毎日サイトで更新している、…

『持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない』 pha

持たない幸福論 働きたくない、家族を作らない、お金に縛られない (幻冬舎単行本) 作者: pha 出版社/メーカー: 幻冬舎 発売日: 2015/05/26 メディア: Kindle版 この商品を含むブログ (4件) を見る 前回に続いて、What Should I Do with My Life? と考えて…

文科系女子のイタさを直視した『映画系女子がゆく!』 真魚八重子

今週のお題「最近おもしろかった本」ということで、 映画系女子がゆく! 作者: 真魚八重子 出版社/メーカー: 青弓社 発売日: 2014/11/16 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (5件) を見る NHK朝ドラの「まれ」で、大泉洋が甲斐性のないダメ父親の役を…

『お勝手太平記』 金井美恵子

お勝手太平記 作者: 金井美恵子 出版社/メーカー: 文藝春秋 発売日: 2014/09/30 メディア: 単行本 この商品を含むブログ (18件) を見る 目白四部作から続く連作シリーズの最新刊。 今作は最初から最後まで、『快適生活研究』で強烈な印象を残した、60代女子…